第13話 刀の秘密と明日に向けて

活動ノート、更新しました。良ければご覧ください。

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「この刀、どこで手に入れたのです!?」

「ええと……」

蓮司は装備部門の職員に詰め寄られていた。

怒気、というよりは興奮によって鼻息が荒い。

(この女柊君に近すぎないかしら……!?なんなの?なんなの!?こうなったら私もゼロ距離まで、いいえ、一体化するくらい近づいてやるわ!)

「夜凪さん、助けて……」

「任せて!合体よ!」

「ロボでも持ってんの……!?」

と、蓮司が困った様子を見せた事て、職員も正気に戻り、慌てて距離を取る。

「し、失礼しました。まさかの品物が出てきたので、驚いてしまいました……改めて。結論から申し上げますとこの刀を魔装に組み込む事は不可能です。」

「!?」

「なっ、どういう事!?」

まさかの言葉に衝撃を受ける蓮司と、詰め寄る都香沙に職員は落ち着いて下さい、と声をかける。

正直どの口で言ってるのかと思った二人だが、話が進まないので職員に続きを促す。

「さっき、まさかの品物って言ってたけど、その刀は一体何なのかしら?」

「この刀は、その……」

ゴクリ、と唾を飲む職員。

そして意を決したように口を開く。

「ダンジョン内で生成された魔装です。」

「へ?」

「……!?!?な、なんですって!?」

告げられた言葉に都香沙は驚愕する。

反面、蓮司はあまり分かってないのか、ポカンとした顔をしていた。

「えと、それってつまりどういう事なんです……?あまり分かってなくて……」

「ダンジョン内で生成された魔装というのは世界でも今まで三つしか確認されてないんです。」

職員は指を三本立てながら続ける。

「一つは原初の魔装、全ての人工魔装の原型となった『原典オリジン』日本で最初に見つかったダンジョンから発見されたものですね。

二つ目は『輝煌剣キャリバー』イギリス王室に突然飛来した魔装と言われています。

最後は『流星ミーティア』最も多くの命を救ったとされる、アメリカの探索者が持っている魔装ですね。」

そして、と職員が言葉を区切る。

「これが史上四つ目となるダンジョン内で発見された魔装……ですね。この刀、銘はなんと?」

「『紅月こうづき』です。祖母がそう呼んでました。」

蓮司は思い出すように語る。

「八年くらい前だったかな……俺の祖母がどっかから持って来たってのは聞いたんですが、詳しい話は聞いてないんですよね……結局聞かずに祖母は亡くなってしまいましたし……」

「不躾な質問に答えていただき、ありがとうございます。」

「あぁ、気にしないでください。老衰で満足そうに逝ったので、そこまで悲しくはありません。109年も生きましたし、祖母も満足でしょう。」

「す、凄まじいですね……あぁ、いえそれで本題なのですが、この刀は魔装であるが故に、魔装に組み込む事は出来ないんです。」

「そうなんですか?」

「はい。異なる異能者同士の魔装を一時的に融合させる『異合アルマ』という技術は確かに存在します。両者合意の上で、いくつか条件を満たす必要はありますが……ですが、例えどんな形態でも、魔装同士を永久的に融合させる事は不可能なんです。おそらく、整えられた素材同士が必要以上の結合を拒んでいると思うのですが……」

詳しくはまだ解明されていないんです、と言って、職員は深く頭を下げた。

どうあれ、仕組みが解明されていない物に文句を付けても仕方ない、と蓮司はひとまず魔装を買うのは諦め、帰路につこうとした時だった。

「あ、柊様、お手数ですが連絡先を教えて頂いても宜しいでしょうか?」

「え?」

「逆ナンですって……!?」

「逆、え、違います!紅月の件で本社から鑑定士を呼ばなくてはいけないので、その都合のいい日を後ほど連絡させて頂ければ……」

「あ〜なるほど……んじゃ、はい、どうぞ。」

そう言って蓮司は手渡す。

自身の刀、紅月を。

「ありがとうございま…あふぁぁぁ!?」

「ちょ、柊君!?」

「世界規模で貴重な物ならちゃんとしたところでしっかり見て貰った方がいいだろうし、だったら渡しとこうかなって。後で返してもらえるんですよね?」

「勿論です!こんなの、持ち逃げしたら世界中から命狙われますよ!」

「良かった。なら、鑑定よろしくお願いします。あと、代わりの刀ってありますか?ダンジョン潜るのに武器が無いのはキツくて」

「直ぐに最高級の物を用意します!20分程お待ちを!」

そう言って職員は駆け足でどこかへと走り去ってしまった。

「なんか、思ったよりすごいことになっちゃったな……」

「えぇ……びっくりね……」

「あ、そうだ。」

と蓮司は都香砂に向き直る。

「夜凪さん、今日って何時まで大丈夫?」

「!?」

夜凪都香沙、オーバーヒート。

全く他意の無い質問なのだが、都香沙の脳内は一撃で茹で上がる。

(……え?夜まで居れるか聞いてる?今日泊まりOK?みたいな質問?は?結婚するが?)

「あんまり遅くならないようにはするけど、分からないから、聞いておきたくて。」

(分からない……分からない!?嘘でしょ?止まらなくなっちゃうかもってこと!?)

言葉を重ねる度に誤解と妄想が加速する。

「夜凪さん、どうかな?」

「そうね……今週は三連休だし、明後日までなら……」

「二泊もする予定なの……!?」

「帰らなくてもいいわ。私はもうそのつもり」

「喧嘩でもしたの!?」

「いいえ、みんな幸せな筈よ……」

「宗教の話……!?」

とうとう危機感を覚えた蓮司は冷や汗をかきながら本題に入る。

「ほら、さっき言ってた通り三連休でしょ?だったら、明日とか出来たら配信したいんだけどやり方とか教えて欲しいなって……」

「ああ、なるほど!」

顔を赤くしながら、頷く都香沙。

(あ、危ない!ふしだらな女だと思われるところだったわ!いや、男子的にはその方がいいのかしら……?)

と、思案したが頭を振り、雑念を何とか振り払う。

「わかったわ。明日の初配信に向けて、機材の使い方を教えてあげる!」

「ありがとう!助かるよ夜凪さん!おれ慣れない機材だと緊張がほぐれるまでひと月くらいかかるんだけど、頑張るから!」

「難儀な性質ね……」

流石の都香沙も蓮司(というよりその家系?)の性質に口元が引き攣るが、なんとか堪える。

こうして、蓮司の初配信の準備は着々と進んで行くのであった。



『おい、よなぎちゃんの投稿見たか!?』

『あぁ、これ例の彼だよな!?』

『うひょー、待ってました!』



『明日、例の彼が初配信するわ。こちらのURLをチェックしてね!』


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お待たせしました、次回、初配信です。

いよいよバトルが書ける……!

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