第10話 彼女の家族

ひとまず分岐点までは話を進めようと思います。

どちらのルートに行くにしても、コラボ配信やプライベートなどでメインヒロインはしっかり絡むので御安心を。

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「夜凪さん、大丈夫?」

「ありがとう、柊君。ごめんなさい、付き添って貰って……」

掲示板が騒ぎになる少し前。

都香沙と蓮司はダンジョンから出て、すぐ近くにある探索者支援施設へとやって来ていた。

対ダンジョン政策の1つ、探索者のダンジョン調査を都市単位、国家単位で行う為の支援団体、及びその施設。

名を、『ミネルヴァ』という。

基本的には素材買取り、装備の販売と制作、ダンジョンやモンスターから取れた素材の解析など、施設の用途は多岐にわたる。

そしてそこには当然、傷を負った探索者の治療を行う部門も存在する。

「こんくらいなんて事ないよ。むしろ謝るのは俺の方だ。ダンジョンから出る事ばっかりで、リビングアーマーの素材、持ってくるの忘れちゃったし……」

「そんなの、私が不甲斐ないせいで、柊君のせいじゃないわ!」

「夜凪さん……ありがとう、この埋め合わせは必ずするよ。」

そう言って優しく微笑む蓮司。

瞬間、都香沙の頬が熱を帯びる。

(何、今の笑顔、何今の笑顔!!めちゃくちゃカッコい、いや、可愛い、え!?嘘でしょ!?こんなかっこいいのにあんな強いの!?神の奇跡じゃないの!!)

一瞬で脳が沸騰し知能が低下する都香沙。

しかしこれも無理からぬことかもしれない。

命の危機を片思いの相手が駆けつけて救ってくれたのだ。しかも、奇跡のような偶然も重なっている。都香沙でなくとも、運命を感じざるを得ない。

(しかも、ちょっとSっぽい一面もあるのかしら……?あんな優しい顔して、私の事イジメようとしたりされたら……プライドをへし折られて、魂を屈服させられて、柊君を見るだけで身体が疼くくらいに躾られたら……)

都香沙は妄想する。

組み伏せられ、犬のように蓮司に屈服し発情する自分を。

(……天国ね。)

「夜凪さん?」

「ひゃい!」

彼方へ旅立ちそうな意識を蓮司の声が引き戻した。

「大丈夫?ボーッとしてたけど……」

「大丈夫よ!全然平気!元気が湧いて来てるわ今!」

「き、傷だらけなのに……!?」

ズタボロなのにいきいきとする都香沙に驚く蓮司。

応急処置こそ済ませているが、いかんせん包帯だらけだ。見た目はとても痛々しい。

「夜凪さん、もうすぐ治癒士がくるから、大人しくにしなきゃ駄目だよ、それに無理しなくてもいいよ。」

「柊君……?」

「心配かけないように、明るく振舞ってくれてるんだろ?でも、少なくとも今は、そんな事する必要ないよ。俺の前では、無理なんてしなくていい。」

カッコつけ過ぎかな、と照れ臭そうに笑う蓮司。

しかし都香沙はそれどころでは無かった。

(……だめだ、早くこの人に抱いてもらおう。)

頭のネジが全て抜け落ちていた。

もはや本能のみで動く獣になりかけていたが、それを押し留める声が治療室に入って来た。

「夜凪さん、失礼しますよー。」

『ミネルヴァ』の女性職員だ。医者のような白衣を着ている。

「夜凪さん、大丈夫ですか?顔が赤いようですが……」

「ぜ、全然大丈夫です!元気いっぱいです!」

「傷だらけですが……」

動揺してるようだが、明らかに元気な都香沙を見て困惑する職員。

しかし、直後に気を取り直して、都香沙に言う。

「今、御家族が迎えに来てくださいましたよ。もうすぐ治癒士も来ますから、もう少しお待ちくださいね。」

そう言うと、職員は廊下にでて、誰かと会話する。そして直後に。

「おねぇちゃァァァァ!!」

凄まじい勢いで、少し小さな人影が飛び込んで来た。

「琴音、大きい声出しちゃ痛ァァァァ!?」

小さな人影は都香沙の制止も聞かずに突撃すると、都香沙に抱きつく。

当然全身がまだ傷だらけの都香沙は乙女にあるまじき絶叫と共に痛みに悶えていた。

「こ、琴音……お姉ちゃん今傷だらけあだだだた!?」

「うわぁぁぁぁん、お姉ちゃん無事でよかったよぉぉぉ!!」

琴音、と呼ばれた少女は余程心配だったのか、都香沙の声も聞かずに強く抱きしめる。

続けて、メガネをかけた穏やかそうな男性もまた泣きながら飛び込んで来た。

「うぉぉぉ、都香沙ぁぁ!無事で良かった……」

「お父さんまで抱きついてきたら私ビーム撃つから。」

「うわぁぁぁぁ、元気だけど冷たい!!」

抱きつこうとしてきたメガネの男性に対し、痛みで脂汗をかきながら冷たく威圧する都香沙。

メガネの男性は膝から崩れ落ちる。

「2人とも、静かになさい!他の利用者の方もいらっしゃるのよ!」

最後に入ってきたのはショートカットで少し目付きの鋭い女性だった。

「でも……お母さん……」

「静かになさい……?」

「は、はい……」

穏やかに微笑みながらも尋常ではない圧力を放つ女性。

「琴音も、一旦離れなさい。傷が開いちゃうわ。」

「はぁ〜い……」

しぶしぶ、といった様子で離れる少女。

「全く、2人とも都香沙が心配なのは分かるけど、少しは落ち着きなさい!まして、娘の恩人を放ったらかしなんて、失礼でしょ!」

女性が目を向けると、そこには、ポカンと口を開けたまま固まっている蓮司の姿があるのだった。


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お母さんは、冷たい訳では無いので御安心を。

アンケート、まだまだお待ちしています。


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