ダンジョンダイバー!バズってる彼女とバズりたい彼

@nnmihuri

第1話 道場での語らい

はじめまして、nnmihuriと言います、どうかよろしくお願いいたします。

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「蓮司、話がある。」

日が落ち、日課の稽古を終えた後、柊蓮司(ひいらぎれんじ)は父親である柊 虎雄(ひいらぎとらお)にそう言われ、道場で向かい合って居た。

「どうしたの父さん、そんな改まって?」

稽古で手を抜いたつもりは無い。体の不調も無ければ惚けて太刀筋が鈍って訳でもないと思っている。現に虎雄も深刻そうな表情ではあるが、怒気を孕んだ様子もない。

「あぁ、いや、道場の今後についてだ。」

「道場の……?」

はて、と蓮司は首を傾げる。

家は確かに歴史の浅い剣術道場だ。

しかし、別段赤字経営という訳でもないし、道場以外の収入もある。

「今後って、別にお金がない訳じゃ無いんだろ?門下生だっていない訳じゃないんだし……」

「いや、確かに経営は問題無い。だが門下生に問題が無いとは、素直には言えんのだ……」

「……暴力沙汰とかを起こした奴が居るって事?」

「いや、幸いにもうちの門下生は皆しっかりしているからな。事件の類は聞かないよ。」

だとすれば尚更疑問だった。大きな事件も起きていないのなら、何故ここまで深刻な顔をしているのか。

「問題なのはな、門下生の平均年齢だ。」

「……どういう事?」

「家は10年前の騒動以降に出来た、異能鍛錬も行える道場だ。ここで鍛え、その腕をダンジョン探索に活かす。皆、その為にここに通ってくれているのは分かるだろ?」

「勿論。俺もダンジョン探索には行ってるしね。」

10年前、世界中で起きた地震により『ソレ』は現れた。

ダンジョン。おとぎ話、空想、神話。

そんな中でしか語られないような怪物が蔓延る領域。洞窟のようだったり、遺跡のようだったりと形こそ様々だが、それにより人々の営みは大きく変わった。

ダンジョン内で取れる鉱石や薬品、素材は文明や医学を次のステージへと進め、人類はそれによる恩恵を受けた。

そして同時期に現れたのが、異能者。

様々な、或いは単一の魔法や超能力に似た異能を振るう者や、或いは人間の限界を超えた身体能力を発現させる者、そしてその両方を兼ね備える者まで現れた。

全ての人間がそうでは無いが、少なくない割合で異能者は現れる。

蓮司とその両親もまた、異能に目覚めた者達だ。

そして異能者達はダンジョンに潜り、内部で得た素材や武器で生計を立てたりしている。

「あぁ、だが、ある程度の生計が立てられるようになると、皆道場よりもダンジョンに潜る時間の方が多くなる。必然、道場の門下生も減ってくる訳だ。まして、家の門下生の平均年齢は20代そこそこ、学生ともなれば1人2人だ。それもじきに友達と簡単なダンジョンに潜り始めれば道場に来る事も減るだろう。」

「……つまり、長い目で見るとウチの道場に未来は無い……って事?ちょっと大袈裟じゃない?」

「そうでも無いんだ……の異能鍛錬も行える道場は、近年増加の傾向にある。異能者の数が増えているし、ダンジョンも年々増えている。他所に門下生を取られることもあるやもしれん。」

そう語る虎雄の表情はどこか疲れを感じさせた。

蓮司が知らないだけで、そういった苦労は思ったより多いのかもしれない。

「……話は分かったよ」

「おお、分かってくれたか!なら​──」

「うん、俺──」




「もっとダンジョン探索して、道場の宣伝するよ!」


「道場の為にバズってくれ!蓮司!」




「「……ん?」」


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