第52話

 ・side鈴木一 


 アンジュさんが報酬を受け取ってくれた後、私たちは次の動画の企画について話し合うためにソファに戻りました。


 私は彼女の真剣な表情を見て、内心ほっとしました。


 スーパーのバイトや大学もあるので、正直断られることも考えていました。


「次の動画はどんなテーマにしましょうか?」

「そうですね…季節ごとに変わるファッションとか、どうですか?」

「それはいいですね。季節に合ったコーディネートは視聴者にも喜ばれそうです」


 私たちは次の動画の内容について話し合いを進める。

 アンジュさんの意見は的確で、彼女との共同作業がとても楽しいと感じる。

 

「それから、視聴者のリクエストにも応えられるようにしたいですね。例えば、ビジネスカジュアルとか、デートに使えるコーディネートとか」

「いいですね。それに、視聴者参加型の企画も面白そうです」


 私たちの会話が盛り上がる中、ふと私は彼女の目を見つめる。


「アンジュさん、本当にありがとうございます。君のおかげでここまで来られました」


 彼女の頬が少し赤くなるのを見て、照れている姿を可愛いと思いました。


「ハジメさん…そんな風に言われると、ちょっと照れちゃいますよ。でも、私もハジメさんと一緒にお仕事ができて嬉しいです」


 その言葉に、私の胸が弾みます。


「ねぇ、アンジュさん」


 私が彼女に近づくと、彼女の熱が上がったように感じます。

 彼女の目が大きく見開かれ、息を飲む音が聞こえた。


「はぃ……」

「ここは私の部屋です。緊張しますか?」

「もちろんです! だけど、仕事で」


 私はアンジュさんの手をそっと重ねました。


「君がいてくれることが、僕にとってどれだけ心強いか…本当にありがとうございます」


 彼女の手が少し震えているのが伝わってきました。


 私は彼女の手を軽く引いて、ソファに腰を下ろすように促した。


「実は、君に相談したいことがあるんです」


 アンジュさんは驚いた様子で私を見つめた。


「何ですか?」


 私は彼女の目をじっと見つめます。

 彼女の頬が再び赤くなり、目が潤んだように見えた。


「ハジメさん…」


 アンジュさんがそっと目を閉じました。


 私は彼女の頬にそっと手を添えます。

 その瞬間にチャイムがなりました。


 目を開くアンジュさんと互いに頬が熱くなるのを感じます。


「誰でしょうか?」

「多分、ユナさんです。家に来るのは彼女だけなので」

「ふふ、そうですか」


 アンジュさんとの雰囲気に、ユナさんがやってきて、笑ってしまいます。


「お邪魔します。あら? 花井さん」

「お邪魔しています。白鳥さん」

「オジ様、今日はお二人で何をしているのですか?」

「実は動画撮影を手伝ってもらっていたんです」

「動画撮影?」

「はい。最近は、自宅で過ごす時間が長くて、時間を有効に使おうと思ったんです」

「そうですか」


 事情を説明し始めると、ユナさんは楽しそうな表情になりました。


「つまり、オジ様は自分自身をもっと成長させるために、アンジュさんと一緒にプロジェクトを進めているということですね?」

「はい、そうです。ユナさんに言わなかったのは、驚かせたかったからです」


 ユナさんは少し考え込み、やがて小さく頷きました。


「わかりました。でも、次からは私にもちゃんと相談してください。私もオジ様に協力したいんです!」

「ありがとうございます」


 ユナさんは微笑み、アンジュさんにも優しい目を向けました。


「アンジュさん、これからもオジ様をよろしくお願いしますね」


 アンジュさんは驚きつつも、深く頭を下げました。


「はい、もちろんです」


 アンジュさんのことも話ができて、ユナさんにも理解を得られました。

 

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