エピソード 鈴木一
第50話
・side: 鈴木一
カメラの前に立ち、少し緊張しながらも心を落ち着けて撮影を始める。
リビングの一室を撮影場所にしているので、クゥも足元で丸まって見守ってくれていた。
「こんにちは、皆さん。ハジメの部屋にようこそ。今日は、私のおすすめコーディネートをご紹介します」
笑顔で挨拶しながら、何度目かの動画であるため、今日は服装の説明をしていく。
「まずはこちらのジャケットです。高品質なウール素材で作られていて、肌触りが非常に良いです。シンプルなデザインですが、カットが綺麗なのでスタイルを引き立ててくれます」
ジャケットをカメラに向かって見せながら、丁寧に説明する。
「次に、このシャツは上質なコットンで作られており、通気性が抜群です。カジュアルにもフォーマルにも合わせやすい一着です。そして、このパンツはスリムフィットで脚長効果があり、どんな体型にもフィットします」
パンツをカメラに見せつつ、シューズにも言及する。
「最後に、こちらのレザーシューズですが、イタリア製の本革を使用しており、履き心地が抜群です。デザインもクラシックで、どんなコーディネートにも合わせやすいです」
貞操逆転世界は男性が少ないために、男性の服が少なく一着一着が高いのだ。
女性が、オーダーメイドで購入することが多いので、こうして男性モデルとして紹介することに需要があったりする。
♢
私は愛棒を解放することにした。
服装の紹介している際には、チンコの痛みを感じない。
そう、私は自らを解放することを決めた。
撮影を終えた後、私はスマホカメラの録画を止めて、編集をしてくれる花井杏樹さんにスマホを渡します。
「よろしくお願いします」
「はい、動画を撮影を始めてから凄い勢いでアクセス数が伸びていますね!」
アンジュさんは若いだけあって、スマホやパソコンを使って編集することに詳しいのです。
二人で話をした先にアドバイスをもらったことで、今は専属で編集を手伝ってもらっています。
「アンジュさん、本当に助かります」
「ふふ、意外でした。ハジメさんが機械音痴なんて。それに、こうして一緒にいられて得した気分です。お部屋にお邪魔して一緒に作業するのは楽しいです」
パソコンの画面を見ながら、編集した動画を再生してくれる。
アンジュさんが編集してくれた動画は、私のたどたどしい説明を上手く整えてくれています。
「すごくいい感じですね、ハジメさん。本当に新人とは思えないほど落ち着いています」
彼女は微笑みながら、私の動画を褒めてくれました。
「ありがとうございます。これもアンジュさんのサポートのおかげです」
「こちらこそ、お手伝いさせていただいて嬉しいです。でも、ハジメさん、これを本格的な仕事としてやるつもりですか?」
彼女の質問に私は少し考えてから頷きました。
「そうですね。ユナさんに頼りすぎず、自分自身の力で稼ぎを持ちたいと思ったのです」
女性に対して、確かに好意を持てる前世の記憶を持っている。
それと同じく、女性に養われているだけと言う環境がどうにも、落ち着かない。
頼り甲斐や経済力なんて言葉は、男性には求められないのはわかっています。
ですが、いくらお金持ちでも女性に養われているだけの存在でいたいと思えないのです。
「ありがたいことに、男性が動画を配信すると、アクセスしてくれる方が多くいて、私のようなオジさんでも需要があってよかったです」
始めた当初は、三十歳オーバーのおじさんなど相手にされないかもしれないと思いました。
ですが、年齢とハジメと言う名前だけを告げて、自己紹介動画を投稿したその日に一万件もアクセスをいただきました。
「それに、アンジュさんのおかげで動画編集もできて助かっています」
「私は鈴木さんと一緒にいられて嬉しいですよ。それにバイト代もいただいていますから」
スーパーのバイトを休んで来てもらっている日もあるので、正式なスタッフとして、バイト代をお渡ししています。
バイト代と言っても、収益の半分でまだまだ雀の涙程どではあるのですが。
「今後は具体的にどういう形でお手伝いすればいいですか?」
「動画の編集がメインですが、女性が好むファッションのアドバイスなど、色々とお願いしたいことがたくさんありますよ。それに、この活動を本格的に仕事として進めるためには、アンジュさんの力が必要なんです」
「そんなに言ってもらえるなんて、嬉しいです」
「それと今日のバイト代です」
今は収益化はできていないので、スーパーの時給に合わせてバイト代をお渡ししています。
「えっ?! ハジメさん、これはちょっと多すぎませんか?」
「これまでの感謝の気持ちを少々多めに入れています。ですが、これからの継続してお願いするという意味も込めています。ぜひ受け取ってください。それと今後は収益の半分をアンジュさんの取り分にしてもらおうと思います」
「えっ!?」
「裏方として、動画の制作をしてくれているので、当たり前です」
彼女は一瞬戸惑ったようでしたが、私の真剣な眼差しを見て、やがて受け取ってくれました。
「わかりました。でも、こんなに高額な報酬をいただくなんて…」
「アンジュさんの助けがなければ、初めての投稿もできませんでした。だから、正式に編集担当として雇いたいんです。どうか引き受けてください」
アンジュさんはしばらく考えた後、微笑みながら頷きました。
「わかりました。これからもよろしくお願いします、ハジメさん」
「こちらこそ、よろしくお願いします、アンジュさん」
こうして、アンジュさんを正式なスタッフとして迎えることができました。
彼女のサポートを受けながら、これからの活動に向けて一歩ずつ進んでいく決意を新たにしました。
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