第46話 会議は踊る?

「という事で来週から行われる祭りは近衛騎士団を中心に警備に当たります。各々の配置、役割は皆さんの手元の資料にありますので確認してください。」


 王城の会議室。この場には私達の他に各部隊から代表者が集まっていた。特殊作戦室からはカンネが来ていた。私達の方は見向きもしない。相変わらず腹立つなあ。

 この会議はミットフィルさんが仕切っていた。どれどれ?私達は何をするんだ?

 

 ▪️情報部ミシマ分室ラブリーエンジェルス遊撃班、必要と思われる行動をとる事。

 

 うん?これは自由にやれ!という事かな?


「ミットフィル!私達は好きにして良いという事かな?」


 会議室がざわざわした。


「あれがユーリだ。」

「おまえら、ユーリの顔を覚えておけ!後々、役に立つぞ。」

「極級騎士か…恐ろしい…」


 ユーリが場を一睨みすると会議室は静かになった。


「はい、ミシマ分室には自由に行動いただき、情報をこちらにいただきたいのです。ミシマ分室の魔法士と影の力も我々は頼りにしていますので!後ほど通信機の波長を合わせさせていただきたい。」


 ユーリは大きく頷いた。そして。


「わかった、ミットフィル。ラブリーエンジェルスはミットフィルの指揮下に入ろう。後で詳細を詰めさせてもらう。」


 ユーリの返答にミットフィルさんを見る会議参加者の態度が変わる。


 ざわざわざわざわ


「ユーリがミットフィルの指揮下に入るとは!」

「サーラ隊長が不在と聞いて不安だったが、あの副長!やるではないか!」

「ユーリが従うとは!驚いた!!」


 再びユーリが会議室を一睨みした。会議室が静かになる。


「他に何か質問がある方は?」


 補佐に付いていたミューさんが参加者に問いかけた。


「無ければこれで解散…」

「待ってもらおう。」


 挙手をして発言したのはカンネだった。


「開国100周年の大事な記念行事だ。体制は万全でなければならない。なのにどういう事なのだ?」


 その言動にはミットフィルさんを蔑む響きがあった。


「そのために王立軍の部署の壁を超えて皆さんに協力をお願いしている。」


 ミットフィルさんの返答にカンネはいやらしい笑みを浮かべた。


「そういう事ではない。サーラ隊長の代わりが貴殿に務まるのか?と聞いている!」


 カンネ!本当に嫌なやつだ!


「私は今回の任務にあたり、サーラ隊長から全任されている。私を侮辱することはサーラ隊長、ひいては親衛隊を侮辱する事になるが如何か?」


 ミットフィルさんは静かに、だが言に圧を込めて答えた。


「は!笑わせる。誰に全任されていようが関係無い!私は貴殿に実力を示してもらいたいのだ。

 でなければ全面的な協力はできない!サーラ隊長もこんな若造に指揮を任すとはな!朦朧したのではないか?」


 カンネは取り巻き達と一緒に下卑た笑い声を上げた。

 この野郎!!好き勝手言って!!一言言ってやろうと思った時、ユーリが立ち上がった。


「カンネ。私はミットフィルを認めている。サーラの見る目は正しいと思う。状況判断能力、統率力、戦闘力。どれをとっても充分な力がある。

 だから私はミットフィルの指揮下に入った。私の推挙じゃミットフィルの実力を測るのに不足か?」


 ぶるぶるぶる。隣のユーリから発する圧力に私の身体が震えた。な、何て威圧感だ!カンネを見ると額から大粒の汗を吹き出して震えていた。


「い、いえ。充分です。」


 カンネは絞り出すように言うとぐったりと椅子へ沈み込んだ。


「それではこれで閉会します。」


 ミューさんが会議の終了を告げたが、しばらくの間、動ける者はいなかった。

 



 

「ユーリさん、先程はありがとうございました。」


 あの後、ミットフィルさんがやってきてユーリに頭を下げた。


「いや、私も大人気なかった。サーラを馬鹿にされて頭に来た…こちらこそ、悪かった。」


 ユーリはペコッとミットフィルさんに頭を下げた。


「あ、でもこの事はサーラには内緒にしてね。あいつ、つけあがるから…」


 ミットフィルさんは苦笑しながら答えた。


「いえ。ありがとうございます。ユーリさんとサーラ隊長が特別な関係である事は承知してますので。」


 ミットフィルさんは神妙な表情をしていた。だがすぐにその後、


「時にユーリさん。」


 ミットフィルさんはイタズラっぽく笑いながら言った。


「ユーリさん、僕の事を認めてくれていたんですね!ナルミさんとの交際も認めてくれると言う事ですか?」


 その言葉に目に見えてユーリが慌て出す。


「いや、そうなんだけど違うから!えーと、えーと、そう!認めているけど、ナルミと付き合いたかったら私に勝つことだね!」


 ミットフィルさんの後に控えていたミューさんが真剣な表情で激しく頷いていた。


「でもこの間の話ではユーリさんに勝てなくてもユーリさんに認められたらナルミさんとの交際を認めてくれるということではなかったですか?」


 ユーリはとても苦々しい顔をしていた。


「そうなんだけど…、そう言ったけど…。ダメ!私に勝たないとナルミはあげないよ。」


 ミューさんまでそんなに真剣な顔で迫ってこないで…


「…今日のところはあきらめます。でもいつかナルミさんとの交際を認めてもらいます!」


 ミットフィルさんが力強く宣言する。あー、ミットフィルさん!私の顔はみるみる赤くなった。その時、思いっきり右のお尻をつねられた。


「痛い!!」


 後を振り返るとプンプンと機嫌の悪いユーリがいた。


「ミットフィル、サーラなら良いよ。」

「ユーリ、何でそうなるんですか!」


 だが私の抗議はユーリのジトっとした目に瞬殺され、もう何も言えなくなった。


「ユーリさん、わかりました。今のユーリさんはサーラ隊長よりもナルミさんとのパートナーシップが大事だと言う事ですね。」

「そうだよ。」


 ユーリは躊躇なく即答した。


「わかりました。それではこれで僕らは失礼します。祭り期間の警護はよろしくお願いします。」

「うん、わかった。私達は魔法士や隠密に特に警戒するよ。何かわかったら通信で知らせるよ。」

「はい、よろしくお願いします。ではナルミさん。失礼します。」


 ミットフィルさんの後をミューさんが従う。はあ、どっと疲れた…


▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️


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