第26話 魔法局探検記2

「ここじゃ!」


 ボンバール博士に案内されて魔法局の裏にある射撃場へと案内された。結構広いなあ。


「あそこに的がある。打ち抜けるか?」

 ボンバール博士は300mほど先の的を示したが…

「博士…。小さすぎて見えないです…」

「それもそうじゃな!カガリ!これで的を示してやれるか?」


 ボンバール博士はカガリさんにそう言うとマッパーを取り出した。


「魔力を通してあの的を見てみよ。どうじゃ?見えるか?」

「はい、見えます。」


 カガリさんが『当然』という顔で答えた。


「よし、それじゃあ次はマッパーに映像を流すのじゃ!」


 ボンバール博士はそう言うとマッパーをクロスライフルに取り付けた。すごい!マッパーに的の位置が示された。


「ナルミ!どうじゃ?狙えるか?」

「はい、狙えます!」


 私は躊躇なく答えた。


「よし。それじゃあ打ってみてくれ。」


 私は魔力を極力絞った。最小限の魔力量。マッパーを睨む。よし、行ける!私は光の矢をイメージしてクロスライフルのトリガーを引いた。


『パス』


 意外に小さな音を立てて光弾が発射された。その光は真っ直ぐに小さな小さな的へ飛んでいく。


「ナルミ!すごいね!命中だよ!」


 ユーリが興奮した声で叫んだ。ユーリ?あの的が見えるの??


「うおーー。」


 ボンバール博士とハッサンさんは一目散に的へ向かって走り出した。ああ、博士…歳なのに無理するから…。ボンバール博士は20mほど走って力尽きていた。


「博士!すごいですよ。的の真ん中を射抜いています!」


 未だに立ち上がれないボンバール博士にハッサンさんは的を持って来て見せてあげていた。


「素晴らしい!最高じゃ!今度はもっと威力を上げて打ってみてくれ!!」

「はあ、良いですが…大丈夫ですか?」

「博士、それはまずいのではないでしょうか…?」

「何を言っておるのじゃ!せっかくの機会じゃ!失敗して死んでも本望じゃ!」


 いやいや、ボンバール博士…、私は死にたくないです…


「はあ、感覚はわかりました。打ってみましょう。」


 ユーリは隣でニコニコしていた。大丈夫ですよね、ユーリ?

 私は半分くらいの魔力を込めてクロスガンを構えた。


「どこを狙いますか?」

「あの黒い壁じゃ!あれは魔鉱石という対魔力、対物理性を持つすっごく硬い壁じゃ!あれなら壊れん!打つのじゃ!」

「ちょっちょっと待った!ナルミ!もっと威力を落として!!」


 あ、もう遅い…。私はトリガーを引いてしまった。


『ドウ』


 クロスライフルから光の濁流が黒い壁に向かっていく。な、なんじゃ、あれはーー!


「ちっ」


 ユーリは皆んなの前に出ると刀を抜き、刀身へ魔力を込めて前方に構えた。

 光の濁流が壁を粉砕した。爆風!衝撃波!魔鉱石の破片!色々な破壊的波動が私達を襲う!


「ユーリ!」


 ユーリは刀に込めた魔力を光の壁としてクロスライフルが巻き起こした波動を相殺していた。


「くっ!ギリギリだ!」


 ひえー、ユーリがいなかったら死んでたんじゃないか?


「危なかった!サーラとの戦闘よりもハラハラした!ちょっと博士!ナルミが全力で打っていたら皆んな、死んでたよーー。」


 危なかった…。加減して良かった。いや、良くはないか…。しかし、すごいな。クロスライフル。


「えっへん!どうじゃ!すごかろう!!」

「いやいや、博士…。褒めてないし…」

「よし!次じゃーー。」


 え?まだあるの?ほら、アカネが不安そうな顔をしている。


「次はこれじゃー。」


 ボンバール博士が取り出したのは赤い宝石をネックレスにした魔道具。あれ?すごくかわいい。


「これはきちんと使うとあらゆる精神攻撃から防壁を張ることのできる魔道具『守りの赤石』じゃー。」

「へえ。これはすごいですね。」

「ナルミ!騙されちゃダメだよ。で?博士、使えなかったらどうなるの?」

「自分の魔力が逆流して精神崩壊する!」

「はい、却下!次!」


 博士は全然めげない。見た事のない魔道具を次々に持ってくる。大体は副作用が大きくて使えない…。


「さ、最後はこれじゃー。」


 あれ?ただの板?


「これはワシの自信作『ホバーボード』じゃ!この上に乗って魔力を込めると浮き上がり、高速で移動できるのだ!!」


 お、これは使えるのでは?早速ユーリが上に乗り、魔力を込めた。


「お、お。すごい。浮いたよ。」

「空を飛ぶ事はできん。じゃが移動速度は速く、自由自在じゃ。」


 ユーリはホバーボードの上でバランスを取るとゆっくりと移動し始めた。


「博士!これは良いよ。楽しい!!」


 ユーリは自在にホバーボードを操り、移動している。確かにあれは楽しそうだ。


「ユーリ!私も乗ってみたいです。」

「わかった!博士、これどうやって止めるの?」


 ユーリの問いにボンバール博士はある意味で想定内の答えをした。


「無理矢理じゃ!あらゆる手段を用いて止めるのじゃー。」

「げ!そんな事だろうと思った!」


 ユーリはホバーボードの先端を上に向けるとホバーボードを飛び降りた。ホバーボードは上方へ向きを変え、宙に舞い上がった。ユーリは華麗に着地すると宙に舞い上がったホバーボードをこれまた華麗に受け止めた。


「博士!これは良いよ。」


 むむ。私もあの方法なら止める事ができると思う。でもあの止め方だと乗り手を選ぶなあ。


「はい!次!私が乗ります!」


 私もホバーボードを乗りこなす事ができた。しかも魔力をうまくコントロールするとちゃんと止めることもできた。


「何であんなことができるのよー。」


 ユーリは不満そうだったが…。ちなみにカガリさんとアカネはホバーボードに乗ることができなかった。バランスを取って乗る事が難しいらしい。

 はあ、ボンバール博士の魔道具は尖っているなあ…




 

「次はいつ来るのじゃ?」

「うーん、結構使えそうな物をもらったから当分来ないよ。」

「ではやらん!返せ!」

「もらった物は返せませーん。」


 ユーリ…、子供か!!

 私はクロスライフルとホバーボード、ユーリもホバーボードをもらっていた。二人で一緒に背中のバッグにしまい込む。

 あれ?私はアカネがあのかわいい魔道具を首に下げているのに気がついた。


「アカネ、守りの赤石をもらったの?大丈夫?」

「うん、これ。すごく気になるの。かわいいでしょ?」


 アカネはちょっとだけ首を傾げて答えた。うん!かわいいぜ!許されるなら抱きついてハグハグしたい。でも…


「むやみに魔力を通しちゃダメよ。」

「うん。気をつけるよ。」

「ふふふ、アカネ!めっちゃかわいいぜ!」

「へへへ、ナルミちゃん。ユーリちゃんみたいな事を言うね。似てきた?」

「そうかな?似てる?」

「うん。似ているところもあるよ。」


 私はアカネの答えにほくそ笑んでいた。ユーリに似ているところもあるのか…。


▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️


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