第21話 さあ、決勝戦!決着だ
『それではこれより武闘大会の決勝をとり行う。選手、前へ!』
ユーリさんと私。サーラさんとミットフィルさん。それぞれが舞台にあがる。
「ユーリーーー。思い知らせてやるわ。」
「おおー怖い。クラッシャーデビルは迫力があるね。」
「また言ったわね!許さないんだから!」
はあー。あ!ミットフィルさんと目があった。私達は苦笑を浮かべながら頷きあった。ミットフィルさんとは話が合いそうだな…
『それでは。双方、準備は良いか?それでは始め!』
開始の合図とともにサーラさんが大鎌を構えてユーリに走り寄る。そして大鎌の一撃!うげっ!なんちゅう攻撃だ…。衝撃が私の髪を揺らした。
しかし、ユーリは身体をスッと動かすとほとんど動かずにその攻撃をかわした。そして体勢を崩す事なく刀をカウンターでサーラさんに振り下ろす。サーラさんは振り下ろしていた大鎌をこれまた信じられない軌道で振り上げ、ユーリの一撃を防いだ。
サーラさん、すっごいパワーだ!そこからは乱打。ひたすらに乱打。お互いの攻撃は、
「当たらない…」
ユーリはサーラさんの攻撃を全てかわしている。サーラさんはその長い間合いを活かしてユーリの攻撃を大鎌で弾いていた。
お互いの攻撃の余波が石畳を砕く。衝撃波、光刃、魔法、剣戟。
「か、怪獣だ。怪獣同士の戦いだ…」
またしてもミットフィルさんと目があった。
「あの…、あの戦いにはついていけないのでナルミさんと私で決着をつけるのは如何でしょうか?」
「は、はい。それが良いかと思います。」
「ではお互い射撃が得意のようですから、『早撃ち』でどうでしょうか?」
お互いに15mほど離れて魔法を撃ちあう早撃ち。先に魔法が当たった方が負け…
「そうしましょう。」
「では。」
私達はお互いに向き合って15m離れた。
「行きますよ!」
お互いに間合いを測る。緊張の一瞬。魔法を放ったのはほぼ同時だった。
「さ、さすがです。」
ミットフィルさんの魔法は私の右腕を掠めた。私の魔法はミットフィルさんの胸に命中していた。
「私の負けです。まいった。」
私はミットフィルさんに歩みよると固く握手を交わした。
「いえ、私の運が良かっただけです。」
私はそう答えると怪獣達を返り見た。
「まあ、試合結果はあの二人のどちらが勝つか?によると思いますが…」
ミットフィルさんも大きく頷いた。
◇
「くっ、相変わらず避けるのだけは上手いわね!」
「そう言うサーラも相変わらずの馬鹿力だな!さすが脳みそも筋肉でできているだけの事はある!」
「きーー、何ですって!」
サーラさんの大きく振りかぶって上段から放たれた一撃は凄まじい衝撃波をともなってユーリを襲う。
「ちっ!」
ユーリは小さく舌打ちすると刀に魔力を込めて振り抜き、衝撃波を相殺した。
「はん!10歳までおねしょしていたとは思えない剣技ね!」
「な、な、何言ってるのーー!」
ユーリはそう言うと私の方を振り返った。
「ち、違うの!ナルミ!これは…、そう!汗!汗をかいたの!」
「はん!あんなに黄色い汗があるものですか!」
「きーー、何よ何よ。3分も馬車に乗ると乗り物酔いで吐くくせに!!このゲロゲロ女!!」
「あ、だから隊長、馬車に乗らないんだ…」
ミットフィルさんがボソッとつぶやいた。
「な、な、内緒にしてたのに!!ユーリ!覚悟なさい!」
サーラさんは超絶に多量の魔力を大鎌に込めた。
「何おーー、覚悟するのはサーラだ!」
ユーリも超絶に多量の魔力を刀に込めた。そして二人同時に武器を振り抜き、光刃を放った。光刃はぶつかり合い、辺りに魔力を撒き散らした。
「こ、これはいかん!」
私とミットフィルさんは急いで舞台から飛び降りた。その直後に魔力の暴走が石舞台を破壊する。
「ひえーー。」
私は必死に魔力を放ってレジストした。な、なんとか生きてる??
『場外!』
なんと、私は場外で失格になってしまった。ミットフィルさんが呆然とこちらを見ている。ミットフィルさんも無事みたいだ。
「へへへ、失格になっちゃいました…」
「あ、当たり前です!失格にならなかったら貴女は死んでます!」
そ、そうだ!怪獣達はどうなった?
ユーリとサーラさんは睨み合いながら鍔迫り合いをしていた。
「相変わらずしぶといわね!」
「あんたこそ!!」
だが力では敵わないのでユーリはすぐに距離を取った。
「へへへ、うちにはカガリというすごく優秀な魔法士がいるの。物事を見抜く力も的確!」
「それがどうしたの?」
「カガリがいうには私の方がちょっとだけ身体が丈夫らしいよ!」
ユーリはそう言うとニタっと邪悪な顔で笑った。あ!悪い顔!絶対にろくでもない事を考えている顔だ!
「な、何をしようとしてるの?や、やめて、ストップーー!」
ユーリは魔力を込めると刀を頭上に掲げた。そして、
『バリバリバリ』
ものすごい音とともに雷を石舞台に落とした。
「ひえーー。」
ユーリとサーラさんは雷の直撃をモロに受けた。だ、大丈夫か??
「ユーリ!」
石舞台にはユーリが立っていた。サーラさんは白目で気を失って倒れていた。
「ふははは、私の方が身体が丈夫だったな!!」
『勝者!エンジェル1号!!』
勝ち名乗りを聞くとユーリはそのまま倒れてしまった。ちょっとちょっと大丈夫、ユーリ??
すぐにカガリさんが駆け寄ってきてヒーリングを施した。サーラさんも親衛隊の魔法士にヒーリングされたようだ。
良かった…ユーリもサーラさんもムクっと起き上がった。
「…アグリーデーモンズ…次は負けないから…」
サーラさんは親衛隊の人に支えられながら武闘大会会場を後にした。うーん、私は何もしてないですが…
ざわざわ
「あれはミシマ分室のユーリか?」
「いや、どうなんだろう?」
「でも確かにサーラ隊長は試合中にユーリと呼んでいたぞ。」
「サーラ隊長と渡り合えるなんてユーリしかいないだろう…」
ざわざわざわ
「皆んな!!私はラブリーエンジェルスのエンジェル1号!こっちはエンジェル2号だよ!今日は応援ありがとう!皆んなに会えて楽しかったよー。また、どこかでお会いしましょうにゃん!」
「うおーー、1号ちゃん!応援しちゃうよー。」
「今日の試合!すごかったよ!」
「1号ちゃん!かわいい!!」
はいはい…。お疲れ様でした…
◇
そして、私は賞品の魔刀をもらってホクホクだった。シャンデリア?あー、シャンデリアね。ちゃんとオードリー侯爵家へ引き渡せました。見た目はなんの変哲もないシャンデリア。全然豪華じゃない。だけど魔力を通すと、
『ゴオオオーー』
凄まじい勢いで直下に炎を吹き出す。『業火なシャンデリア』だそうだ。オードリー侯爵家では牛の丸焼きを作る時に使うそうだ…。
込める魔力量によって火加減の調整も思いのままなんだって。貴族様の考えることはよくわからないね…。
「カガリ、このサンドイッチ美味しいね。」
ユーリは上機嫌にもしゃもしゃとサンドイッチを食べていた。
「ユーリ様、ワインもご用意してございます。」
カガリさんもそんなユーリを見つめてご機嫌だった。
「アカネ…、決勝戦…。どう思った?」
「そんなのわからないよ…。すごすぎて圧倒されちゃった…」
そうだよね。私も圧倒された。
「ユーリの動きって不思議じゃない?」
空間認識魔法を無意識に使いこなすアカネなら何かに気づいてないか…?
「うーん。確かにユーリちゃんって先の事が見えているんじゃないかって思う事があるよ…」
そうなのだ。あの日、アカネが起こしに来た時も室長が来ている事がわかっていたみたいだったし、そもそもユーリの剣技だって剣筋を予測しているとしか思えない。
「ユーリ、貴女はいったい何者なの…」
▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️
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