第19話 ユーリとサーラの実力

 まあ、第2試合、第3試合は可もなく不可もなく…。ユーリの言う通り、皆強そうに見えるが勝てないほどの相手はいない。

 でも、とても対人戦の参考になる。あ、あの動きを真似できたら剣技だけで魔法を打ち返すことができるな!とかね。


 そして第4試合。会場が再びざわつく。


「あれは親衛隊のサーラ・ノーマンだぞ!」

「確かにサーラ隊長だ。ミッダー副長が出場すると聞いていたが…」

「サーラ隊長はどうやらラブリーエンジェルスと揉めて面子を潰されたらしい。ラブリーエンジェルスを叩きのめすと息巻いているそうだ。」

「ひえー、おっかねー。あの姉ちゃん達無事にすむかね…」


 ひえー、ユーリ。目!つけられちゃったみたいですよーー。

 サーラさんの相方は副長のミットフィルさん。すらっと背が高く爽やかなでイケメン!かっこいいなあ。私と同じで魔術士だそうだ。

 サーラさんは死神が持っているような大きな鎌を持っていた。あんなに細い腕であんなに大きな鎌をよく振り回せるな。


『それでは一回戦第4試合を開始する。お互い礼!それでは始め!』


 サーラさん達の対戦相手は猫型の獣人が二人。試合開始の合図とともに短刀を握ってサーラさんに迫る。速い。

 ミットフィルさんが光矢を連射して獣人を牽制するが動きが速すぎて捉えきれていない。光矢を避けつつ二人の獣人がサーラさんに肉薄する。


「あ!」


 思わず声が出てしまった。

 サーラさんがおもむろに大鎌を振るった。何回振ったのか?私にはわからなかった。見えなかった。サーラさんの振った大鎌から衝撃波が放たれる。


「げふ!」


 衝撃波をまともに受けた二人の獣人は吹き飛ばされた。そこへミットフィルさんが空気の塊を放ち、追撃する。二人はなすすべなく場外へ吹き飛んだ。サーラさん達の勝ち。


「ふふん!そこのデーモン!ギタギタにしてやるから首を洗って待ってなさい!!」


 サーラさんは大鎌でユーリを指すと苦々しい声で言った。


「デーモン?デーモンって何だ?」


 ユーリはキョロキョロしながら気の抜けた返事をした。いやいや、貴女の事ですよ。ユーリ。それにしても…。ひぇー、すごく怖い。生き残れるのか?私!




 

 2回戦第1試合。舞台の上の対戦相手を私は観察していた。私達の相手は特殊作戦室の若手のホープだった。(…私も若手のホープだったんだよ…)

 ミギとダルリ。二人とも副班長だ。剣技に優れており、魔法も侮り難い。


「ナルミ。お弁当、楽しみだね。」


 な、なんて緊張感のない…


「ユーリ、お弁当は決勝が終わってからにしましょう。カガリさんが祝杯用にワインも準備してくれてますので。」

「うん、わかったよ。」

「あの二人、結構強いですよ。」

「うん、結構…ね。ナルミの方が断然強いよ。よし、ぶちのめしてやるか!」


 私達は舞台に上がった。


「ナルミさん、久しぶりです。送別もできずにすみませんでした。」


 二人で小声で謝ってくれた。


「アダルマン室長が来てますので、小声で申し訳ありません。」


 私は小さく頷いた。


「二人ともありがとうございます。良い試合にしましょうね。」


『それでは二回戦第1試合を開始する。お互い礼!それでは始め!』


 試合開始の合図とともに私は光矢を連射して二人を牽制した。やはり二人とも隙がない。私の放った光矢は二人が左手に持つ盾にことごとく弾かれた。

 うまく盾に魔力を乗せている。やるな、二人とも!


「ナルミさん、いただき!」


 ミギが私の間合いに入り、剣を振るった。それを私は左手に持った刀で受け流した。ミギが僅かにバランスを崩す。すかさず私はクロスガンを構え直し、光矢を放つ。


「くう、やるなあ。」


 ミギはバランスを崩しながらも盾で光矢を弾き、一旦私の間合いから外れた。

 うーん、良い盾を持っているなあ。と思ったら、ユーリが走りこんできた。刀に魔力が乗っている。


「な!なんじゃあああ、あの魔力量は!!」


 私は驚いた。普通じゃない量の魔力をユーリは刀に乗せていた。


「はい、お疲れ様!!」


 ユーリはそう言うとミギの左手の盾を両断した。そのまま、ダルリに駆け寄るとダルリの盾をも両断した。


「な、なんてデタラメな!!」

「ナルミ!狙撃!!」


 私はユーリの声で我に帰ると泥弾を打った。泥弾は二人に当たる寸前にアメーバ状に広がり、二人を拘束した。


「く、動けない…」

「まっ、まいった。」


 私は本当に驚いていた。今までも驚いてばかりだったが、これには心底驚いた。それはミギもダルリも同じだったようで。


「ナルミさん、あちらの方はいったいどなたですか?この盾を切り飛ばすなんて信じられない…」

「私もです…。信じられない…」


 声が聞こえたのだろう。ユーリがにやにやしながら近づいて来た。


「ふふふ、私の名前?私はラブリーエンジェルスのエンジェル1号だよ。」


 キュピン!ユーリは顔の横でピースサインを決めるとすごく気持ち悪い笑顔で答えた。もーう、ユーリ。勘弁して…。と思ったら。


「か、可憐だ…」

「なんという美しさなんだ…」


 おーい、二人とも。お前らの目は節穴か!いや、そりゃあ、ユーリは美人だけどさ!


「俺、すっごく応援します!決勝、頑張ってください。」


 見えない尻尾をブンブン振りながら、ミギとダルリはユーリに敬礼した。


「あ、ナルミさんも頑張って。エンジェル1号様、それでは失礼します!」


 何なんだよ!私はおまけか!ふん、アダルマンに怒られちまえ!!


「ナルミ、やっぱりナルミは強いね。剣筋がとても良いよ。だけどやっぱり射撃がすごいね。私の知る限り、No. 1だよ!さすが!私の相棒だ!」


 ユーリがとても嬉しそうにニカッと笑いながら言った。

 あれ?あれあれ?私、機嫌が悪かったはずなのにニマニマしてしまっていた。ユーリってもしかして精神操作魔法の達人なのでは??


「へへへ、ありがとうございます。決勝も頑張りましょうね!!」


 私はユーリの腕に自分の腕を絡ませると上機嫌で舞台を降りた。


▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️


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