第1話 出会いの日

 4月、それは出会いの季節。されど、社会人10年目、ブラック企業で働き続けたことで疲れ切った、五百蔵いおろいこうにとっては何の関係もない話だった。


 人通りの少なくなった深夜、頭痛に耐えながらも家へと向かって歩く鋼の耳に男女がもめる声が届く。


 「やめてください!警察呼びますよ。」

 「なんだと!こっちが下手に出てりゃいい気になりやがって!」


 「はぁ、めんどくせぇ。」

 

おもわずため息をつくが、聞こえた以上は何もしないわけにはいかないと思い声のした方に向かって歩き出す。


 少し進んで道を曲がると男女がもめている現場に着いた。


 「おい、何してんだ。」

 

 そう言って、鋼が男の肩を掴むと、男は顔をこちらに向けながら


 「なんだよ!邪魔すんじゃ......」

 

 と言いかけたが、鋼の姿を見ると黙った。それどころか、顔を徐々に青くしていく。なぜなら、鋼は身長が185cmあるうえ強面だったからである。


 「どうした?質問に答えろよ。俺はさっさと家に帰りてぇんだよ。もしくはさっさと尻尾巻いて逃げろ。」


 鋼がそう言うと男は一目散に逃げて行った。それを見て鋼は、これで帰れると思い歩き出した。


-----鋼 side out


女(雪守ゆきもり千代女ちよめ) side-----


 「あ、行ってしまった。お礼言えてない。また会えるかしら。」


 鋼が無意識に発していた圧を受けて声をかけられなかった千代女は、お礼を言えなかったことを悔やみつつも、また会えることを願った。


-----千代女 side out


鋼 side-----


 もめ事を解決?してから20分後。家に帰り着いた鋼は


 「やっと家に着いた。早く寝ねぇと体がもたねぇ。」


 そう言うと、ベッドへ着替えもせずに倒れこんだ。

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