街中で見付けた不思議な空間

天川裕司

街中で見付けた不思議な空間

タイトル:(仮)街中で見付けた不思議な空間…とある普通のビルなのに入って見ると「まさかの世界」…!


1行要約:

レトロクラシックな不思議な空間、そこには永遠のパラダイスが待ち受けていた。


▼登場人物

●青春洋一(せいしゅんよういち):35歳。普通のサラリーマン。不思議な世界に興味を持っている。また特にレトロな漫画や映画、歴史上の人物にも興味がある。

●谷崎(たにざき):ビルの元管理人。

●ナポレオンなどの歴史上の人物は、適当なキャラクターでOKです。


▼場所設定

●喫茶店:レトロな古めかしい喫茶店。

●変なビル:「故・集英社」と呼ばれる。もともと会社だったらしい。谷崎が管理している。

●アパート:青春洋一が住んでいる。少しボロい感じで。


NAは青春洋一でよろしくお願いいたします。


オープニング~


魔女子ちゃん:ぷちデビルくんってさ、何か趣味とかある?

ぷちデビルくん:ん?趣味か。まぁそーだな。「毎日ワイルドな生活をしてみたい」って事かな!

魔女子ちゃん:なるほどねー。その自分の趣味とか興味がさ、ずーっと満たされ続ける場所があったら幸せって思う?

ぷちデビルくん:そりゃそーだろ!

魔女子ちゃん:だよねー。今日のお話はね、そんな自分の隠れた趣味や好奇心をずっと満たしてくれる空間にたどり着いた、1人の青年のお話なんだ♪何気ない日常からふっとその世界に入っちゃったみたい…



メインシナリオ~

(メインシナリオのみ=4227字)


ト書き〈古ぼけた喫茶店で昔の雑誌を読んでいる〉


俺の名前は青春洋一(せいしゅんよういち)。

変な名前だと言われるが、本名だからしょうがない。

俺には懐古趣味がある。

憧れの歴史上の人物と1度一緒に暮らしてみたい、喋ってみたい…そんな事もよく思う。


ト書き〈仕事中の青春〉


仕事は普通のサラリーマン。


青春)「…はぁ、毎日が単調ではつまんないなぁ…。なんかもっと刺激的な事って無いかなぁ…」


仕事中でもこんな事ばかり考えている。


ト書き〈或る日、ビルの中に知った人が入って行くのを見掛ける青春〉


或る日の通勤途中、俺は信じられない光景を見た。なんと雑居ビルの中に、ナポレオンが入って行くのを目撃したのだ。


青春)「…え?いま入ってった人って、ナポレオンじゃないのか…?」


普通の人からは単純に「変」と思われるだろう。だが俺は真剣だ。

俺は毎日、家に帰って歴史上の人物と対面している。

昔から集めていた歴史資料、人物図鑑、雑誌…とにかく憧れの人と少しでも身近にいたかったのだ。

そういうのを毎日見ていれば、そこに写る歴史的偉人の特徴も隅々まで覚えてしまう。


青春)「…確か今、このビルに入ってったな…」


ト書き〈ビルの様子〉


先ほどナポレオンが入って行ったろうそのビルは、少し古ぼけた感じのビルだった。


青春)「ていうか…こんな所にこんなビルなんてあったかな…?」


俺は半信半疑でビルを眺める。


青春)「…まぁいいや。取り敢えずちょっと…」


そうしてビルの中に俺は入ってみる事にした。

通勤途中だが、もし自分の興味を満たしてくれるようなものを発見すれば「ずる休みしてもいい…」なんて考えていた。

しかしそこで驚くべき光景に出くわす…


ト書き〈ビルの玄関を入って一通路の廊下を突き当たりまで行く。突き当りに部屋がある〉


青春)「え…?なんだここ…使われてないの…?」


ビルの玄関から少し奥へ行くと突き当りに部屋がある。その部屋のドアを開けてみると、そこはガラーンとした廃屋だったのだ…。


青春)「…さっき入ってったナポレオンは、あのまま入ってビルのどっかから出て行ったのか?」


しかしおかしいビルの造りだ。

こんな部屋1個のビルってあるだろうか?

辺りを見回してみたが、他に部屋らしいものは1つも無い。

さらに驚いたのはエレベーター。


ト書き〈通路途中にあったエレベーターのボタンを押す〉


青春)「うおっ…!なんだこりゃ!」


エレベーターは作動する。

ボタンを押して上階へ上がってみようとしたのだが、「チン!」と言って到着したエレベーターのドアが開いて中を見ると、中は土の山!

ドアが開いた目の前には、土砂のような土の斜面がズンと居座っていたのだ。


青春)「なんだここ…。まったく変なトコだな。このビルは廃屋か…」


おそらく完全に廃屋のビル。

エレベーターの動力を切っておくのを忘れていたのか…。

何にせよ、ヘンなビル。


ト書き〈ビルから出て行く〉


青春)「なんだ、詰らないなぁ…。ナポレオンは目の錯覚だったのか…?」


少しだけ自信を失くしたが、長年培って来た確かな記憶…!「あれは間違いなくナポレオンだった」と豪語する自分が確かにいた。


ト書き〈翌日、同じビルを少し遠目から見る〉


翌日、俺はまた通勤路を歩く。昨日の変なビルがそろそろ見えて来る頃…


青春)「…ん?…あ!あれは!」


今度はかつての文豪・谷崎潤一郎と太宰治、芥川龍之介が、あのビルに入って行った。

俺は学生のころ文学青年だった事もあり、彼らの様子はすぐに分かった。特にずっと憧れていた太宰治を見掛けた事もあり、俺はすぐさまビルの玄関へ駆け寄った。


ト書き〈玄関前に来る〉


しかし、誰もいない…。

玄関外から続く突き当たりの部屋、その通路の途中にある左横手のエレベーター、昨日見たままだ…。そしてやはり人っ子1人おらずガラーンとしている…。


青春)「…一体何なんだ…。なんか…化かされてるような気分だな…」


訳が解らなかった。

少し遠目だが、本当についさっき見掛けたあの文豪達が確かに入って行ったビルなのに、それも間髪入れず玄関まで駆け寄って確認したのに、この一瞬でみんな消えている…。


ト書き〈そのビルの元管理人らしき男が来る〉


ビルの前で立っている俺に、1人の男が声を掛けてきた。


谷崎)「あなた、ここで何をしてるんですか?」


急に現れたので俺は少し泡食ったが、サッと姿勢を正して返事した。


青春)「あ、いえ、何のビルなんだろうと思いまして、少し中を覗いていただけです。済みません」


谷崎)「あなたお名前は?」


青春)「わ、私は青春と言います。青春洋一です。『青春』なんて変な名前なんで、いつもフルネームを言ってしまうんです。済みません…」


谷崎)「はは、そうですか。いや礼儀正しい人だ。私は谷崎って言います。私はね、このビルの元管理人をしてたんですよ。今じゃすっかりこのビルも廃屋になっちまいましたけどね」


なかなか陽気な人だ。

俺はついでに質問をした。

これまで見た「不思議な現象」についての質問だ。


青春)「…あの、ちょっと気になる事がありまして…」


谷崎)「はい?」


青春)「昨日からなんですけど、私このビルで不思議なモノを見たんです…。昨日はナポレオンに似た人がこのビルに入って行って、今日…ついさっきなんですけど、小説家の谷崎潤一郎と太宰治、それと芥川龍之介に似た人が…入って行ったんです…」


青春)「…私の見間違いなのかも知れませんが、これって一体何なんでしょう谷崎さん?お心当たりとか、ありますか…?」


我ながら変な質問をしている。だが谷崎さんはスラスラ答えてくれた。


谷崎)「あなたも見られましたか!いや実はね、このビルには昔から歴史上の有名人ばかりが集まって来るんですよ。集英社って漫画とか出版してる会社あるでしょう?あれにちなんでこのビルの名前は『故・集英社』ってんです」


青春)「…」


谷崎)「あなたが見られたモノは夢じゃありませんよ。見た通りの人達です。でもね、特定の日にこのビルに来ないと彼らに会う事は出来ないんです。金曜日。今週の金曜日にもう1度ここへいらして見なさい。きっと彼らに会えます」


そう言って谷崎さんは笑った。

俺はただしっかり聴いたつもりだが、話半分しか理解できなかった。

「特定の日」…「金曜日」…その日にもう1度ここへ来たらいい…。

これだけだ。


青春)「…あ、わかりました…。ではえっと、今週ですか?今週の金曜日に、もう1度ここへ来れば…いいんですね…?」


俺が理解したと分かると、谷崎さんはまたスタスタ歩いて行った。


ト書き〈金曜日、青春洋一のアパートにて〉


青春)「…どうする…?行ってみるか、やめとくか…。なんだかちょっと、怖い気もするしなぁ…」


俺は行くか行くまいか、迷っていた。

あのビルに入ってったのは、間違いなく「今はもう死んでいない人達」である。

いわゆる幽霊だ。

しかし、これまでに育てて来た俺の好奇心が「行け、行って見ろ…」としつこく呟く…。


青春)「…行って…みるか…」


昨日は行かないと決心していたが、やはりどんどん押し寄せる好奇心には勝てないでいた。

もし上手くすれば俺は、ずっと憧れていた歴史上の人物、谷崎潤一郎や太宰治、芥川龍之介、そして今をもって偉大とされているナポレオンにだって、会えるかも知れない…。

こんな不思議を通り越した神秘的な事、誰も経験した事は無いだろう。


ト書き〈故・集英社の前〉


時間を聞き忘れていたので、俺は夜の7時頃、ビル前に行った。

到着してすぐ、元管理人の谷崎さんがビルの中から現れた。

谷崎さんが現れた途端、ビル内の廊下に明かりが点いた。


青春)「あ、どうも…!済みません、時間を聞いてませんでしたのでちょっと遅くなりました…」


谷崎)「いーえ、構いませんとも。さ、中へ…」


ト書き〈ビルの中へ入って行く〉


俺は谷崎さんに誘われるまま、廊下奥の部屋まで行った。

ドアを開けるとそこには…


青春)「うわぁ…」


俺は驚いた。ついこの前は完全な廃屋だったのに、その部屋はいま御殿のように変わっている。

ソファにナポレオン、奥の椅子には谷崎潤一郎、その横の座卓には太宰治、その横の同じく座卓に芥川龍之介…、その他にも三島由紀夫や川端康成、徳川家康やコナンドイルなど、あらゆる歴史上の偉人がワイワイ騒いでいた。


青春)「…こ…ここは…」


谷崎)「昔で言う鹿鳴館のようなものでしょうか。ただ時空を超えて集う点が違いますが、彼らはこうして時々集まって、楽しい宴会を開いてるんです」


俺はしばらく絶句したが、それまでの退屈な日々を思い出し、こういうのも悪くない…出来れば自分もこの輪の中へ入ってみたい…そんなふうに思い始めた…。


谷崎)「…ところで青春さん。あなた、ここで永住するつもりはありませんか?もし永住するなら、あなたは心行くまで彼らと談話する事が出来るでしょう。それともまた、現実の世界へ戻られますか…?」


谷崎さんは俺の心をまるで見透すように訊いてきた。

俺の心は目前のこの神秘的な世界にかなり傾いている。


青春)「…あの、ここで永住って事は、もうこの部屋の住人になってしまうと元の世界へは戻れない…って事ですか?」


谷崎)「いえ、あなたの抜け殻が戻ります。いつまでも夢を追うあなたがここに住むわけです。もしここで永住されるなら、あなたは不死になれますよ。永遠にこの宴を楽しめるってわけです。前に特定の日って申し上げましたが、それ以外の日は別の場所で皆さん集ってられるのです。まぁ楽しいものです」


俺は猛烈に考えた。

このまま現実に返っても、また俺は「自分の興味・好奇心を満たしてくれる場所や空間」を探し回るだろう。

だったら、どうしても味わってみたい「満喫させてくれるこの世界」の中で、ずっと住んでみるのも悪くない。

それに「不死」…。やはりこの言葉に人間は弱いのか。

俺はその響きに第2の人生を賭けてみたい…そんな気持ち一色になってしまった…


青春)「…谷崎さん、僕、ここに住みます。どうかよろしくお願いします」


谷崎)「そうですか。では、参りましょう。…あなたはまた青春に還る事が出来るでしょう」


俺は谷崎さんと共に、その「無かった筈の部屋」に入って行った…。


ト書き〈街中を歩いている青春〉


俺は今日も出勤している。

しかし、この出勤している俺は抜け殻だ。

充実を追い、興味・好奇心が永遠に満たされ続ける本当の俺は、あの部屋の中にずっと住んでいる…。

これを幻想のストーリーと捉えるか、現実での事と捉えるか、それは人の心の自由となるだろう。



エンディング~


魔女子ちゃん:今回のテーマはね、実は主人公が2分割されたお話になってるの。つまり1人は「故・集英社」の部屋で永遠に趣味を楽しめる自分、もう1人は現実に返って生活する自分、ってわけ。

魔女子ちゃん:まぁ簡単に言えば、夢を追い掛ける自分と日常を送る自分とが、別個のものとして生活していく…って感じね。

ぷちデビルくん:ふぅん。つまり青春洋一は「自分を満足させてくれる空間」をしっかり持って、それをエネルギー源に日常生活していくって、そんな話か。

魔女子ちゃん:そうね。まぁこれは人の夢とか青春を極端に描いたストーリーだけど、こういう「もう1人の自分」を持ってる人って結構多いんじゃないかなぁ。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=fdeCUOt-KBc

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