双子と運命の恋の話 オメガバース軸

三途ノ川 黒

1,双子の愛―姉のバース変更―



 楠木匠海には、仲のいい同じαの姉がいた。

 名前は華澄。

 勝気で、かっこいい自慢の姉ちゃんだった。


 見た目も麗しく、男Ωでもフラフラとついていきそうな女αだった。


 のだが、十二歳になった誕生日の少し後から彼女に異変が置き始めた。

 いや、異変はずっとあったのだ。


 彼女は、女性器が段々発達していくのに比例して、男性器が後退していったのだ。

 そして、女αは比較的軽いとされる月の物が来た途端、量は異常に多く、生理痛も異常に酷くて、何もかもが普通ではなくて、療養兼検査入院になった。


 それでも、両親は顔を見せず、ラインで「ああ、そう。お大事にね」だけで、匠海は憤怒した。


「あんな奴ら、もう知らねぇ」


「あたしは、あんたがいたらいいよ……。あんたは、いなくなんないで」


 普段、泣く、なんてしない華澄が、珍しく切れ長の瞳に涙を溜めている。

 匠海はそれがたまらなく嫌で、華澄をぎゅっと、抱きしめた。

 すると、ふわり、と鼻腔を擽る甘い香りが、大好きな双子の姉からして、一瞬、訳が分からなかったが、その正体は、主治医の診察で分かった。


「楠木さん、貴方、バースが変わっていますね」


「「え??」」


「検査の結果、貴方はΩだと分かりました」


 青天の霹靂とも言おうか。

 双子は雷に打たれたようだった。


 匠海は、ああ、あれはΩの香りだったのかと、性分化後初めて確信した。

 そして、危機を感じた。


 匠海は、華澄を愛しているのだ。


 今までは、お互いαだからと、気持ちを抑えることができたが、華澄がΩだと意識すると、どうにもいかない。

 でも、距離を置こうにも、華澄に傍にいてほしいと言われてしまったし、匠海は覚悟を決めるしかなかった。


 病室が、α専用病棟から、Ω専用病棟に変わる。

 華澄は終始無言だった。


「華澄」


「……匠海、あたし、Ωになったらいいのにって思ってたの」


「え?」


「でも、なんで匠海は弟なんだろう」


 ふわっと、柔らかいものが匠海の唇に触れる。


「か、かかかかかすみ?!」


「大好きよ、私の運命の人」


「え?!」


 華澄は分かったらしい。

 あの抱擁で、実の双子の弟が、『運命』だと。



 二年後。


「華澄、マジでヤんの?」


「早くしろ、童貞」


「ぐぬぅ……」


 華澄には逆らえない匠海。

 今日は、噎せ返る華澄のヒートの香りに必死に耐えている匠海だが、両親が長期間不在とはいえ実の姉と番うのはどうかと、理性が働く。


 そう、華澄が、匠海に項を噛んでくれと乞うたのだ。


「他のだれかなんて嫌。あんたがいいの」


「俺でいいの? 弟だぞ」


「双子は永遠に一緒じゃなきゃ行けない決まりがあるんだよ」


「ねーよ」


「……あんたは嫌なの」


 匠海は、ぐ、っと押し黙る。

 ずっと幼い頃から華澄を好いているのだ、こんなチャンスはない。


「後悔しないか?」


「しつこい」


「うわぁ!」


 グズグズしている弟に痺れを切らして、華澄は自身が来ていたルームウェアの上着を脱ぎ、下着も脱ぎ始め、匠海はわたわたしだす。


 Ωになる前は真っ平だった華澄の胸は、Ω特有の豊満な体つきになっていて、匠海は上手く姉を見れない。


「ねぇ、触ってよ……」


「……華澄、」


「ねぇ、匠海……」


 熱のこもった、瞳は、お互い様だった気がする。

 キスも、熱い肌も、荒い息も、痛みも、快楽も。

 初めてを全部、双子は共有した。


 そして。


「かすみ、噛むぞ?」


「ん、噛んで……」


 がぶり、と、華澄の項に匠海が咬み付く。


「あぁ……たくみ、すき」


「ん……、俺も好き」


 絶頂した二人は、生まれたままの姿で二人、眠りにつくのだった。



―END―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

双子と運命の恋の話 オメガバース軸 三途ノ川 黒 @jakou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ