episode.14

「あ、あの、ノワール、ごめんなさい。

私、ちっとも気付かなくて……」


胸を両腕で隠しながら、羞恥に涙が滲む。

何てはしたない事をしたのかしらと、ノワールの顔が見れないでいると、ノワールが顎を掴んで、私の顔を上向かせた。


「君にそんな酷い事をしたのは僕なのに、君が謝らないで……。

それに僕は夢心地の気分だったよ。

出来ればもう一度味わいたいくらいに……」


そう言ってその顔を恍惚に染めるノワールのゾクリとするほど妖艶な美しさに、私は思わず息を呑んだ。


胸がドキドキと早鐘を打つ。

肌がゾワゾワと粟立つ。


ノワールが私に向ける情欲に、考えるよりも先に身体が反応してしまう。



「テレーゼ………」


そう呟いて、ノワールは私に覆いかぶさり、その顔がゆっくりと近づいてきて、唇が優しく重なった。


私はピクリと唇を震わせ、慌ててノワールの肩を押しのけようとするも、微動だにもしない。


「あっ、駄目よ、ノワール……。

私まだ頭が混乱していて、貴方が男性なのは分かったのだけど、まだ心の整理がつかないの……」


私の言葉にノワールがピクッと身体を揺らし、顔を上げた。


「テレーゼ、君は、今まで女性の僕だから受け入れてくれていたの?」


不安そうにそう聞くノワールに、私はしどろもどろになって答えた。


「わ、分からないの……でも、きっとそんな事じゃ無いわ。

女性だからじゃない、ノワールだから、受け入れてきたんだと、そう思うの」


慎重に、自分の心を探るようにそう答える。

だって、ノワールが男性だと分かって安堵したのは、これからもずっと一緒に居られる希望があるのだと思ったから。


でも、今まで身体を晒せたのは、もしかしたら、女性同士だからとどこか気を許せていたからかも知れない。


現に今、ノワールが男性なのだと知った途端、いつもより胸が高鳴って落ち着かないし、裸を見られる事もいつもより恥ずかしい。


それに何だかソワソワして、落ち着かない。



「テレーゼ、愛してる。

僕のものになってよ、ね?」


甘えるように耳元で囁かれ、熱が顔に集まる。

私の心はとっくにノワールのものだけど、きっと心だけの事を言われているんじゃ無い。


そう考えた瞬間、また居ても立っても居られなくなって、私は再度微動だにしないノワールの肩を押した。


「お願い、気持ちの整理がつくまで、待って」


顔を真っ赤にして懇願するも、ノワールは少し思案した後、にっこり笑って首を振った。


「整理した結果、男の僕は受け入れられない、なんて答えになったら困るから、却下かな」


そう言って優然と微笑むノワールに、目の端に涙が滲む。


「そんな、お願っ、んんっ」


急にノワールの唇で口を塞がれて、懇願は中止させられる。


いつもの甘い口づけに、今日は何だか胸が騒つく。

ノワールはノワールなのに……。

どうしてこんなに落ち着かない気持ちになるのかしら?


強引に口内に分け入ってきた舌が、歯列をなぞり、上顎を這うと、僅かに開いた隙間から唾液が溢れて顎を伝う。

いつもより激しく舌が絡まり、水音が部屋に響いた。


その音さえ無性にいやらしく聴こえて、私は無意識に太腿を擦り合わせた。


その微かな動きにさえ、ノワールは俊敏に反応して、太腿にそっと触れて、優しく撫でる。


「……んっ、ふぁっ、んっ、あっ」


深い口づけを受けながら、撫でられている太腿にも敏感に反応して、私は身体をくねらせた。


「可愛いよ、テレーゼ……すごく」


ゆっくりと唇が離れていき、恍惚としたノワールの呟きに、私は耳まで赤くする。


ノワールの与える快感に貪欲に反応する自分が恥ずかしくて堪らない。


首すじから鎖骨に、ノワールの唇と舌が下りてきて、私はピクンと身体を震わせた。


ノワールの指がスルッと胸の頂に伸び、そこを指の腹で優しく撫でられると、ピクンと身体が跳ねた。


「ふふ、もう固くなってきた」


嬉しそうなノワールの声に、羞恥で耐えられなくなり、私は首を振った。


「いや……お願い、言わないで……」


真っ赤な顔で瞳を潤ませる私に、ノワールはゴクっと音を立てて喉を鳴らし、その瞳が獲物を狙う獣のように揺らめいた。



急にノワールを本当に男性なのだと理解した時、ノワールの唇が胸の先にチュッと吸い付いた。


「あっ、んっ、んんっ、あっ」


チュッチュッと吸いつかれて、身体のピクピクとした震えが止まらない。

舌先でツッとなぞられ、その心地よさに身体が疼く。


もっとして欲しいと言いそうになる口を手の甲で押さえて、私はただ身体を震わせていた。


ノワールはまるで私の考えを読んだかのように、そこを激しく舌で嬲り始めた。

もう片方も指で摘まれ弄られると、その刺激に思考が徐々に溶けてゆく。


羞恥心よりも貪欲に快楽を求めてしまいそうになり、私は身体をますますくねらせた。


「あっ、んっ、あっ」


だんだんと甘い声が当たり前のように唇から漏れる。

恥ずかしさよりも、もうノワールからの刺激の方が勝っていった。


「テレーゼ、そんな男を煽る甘い声は僕だけにしか聞かせちゃ駄目だよ」


そう耳元で囁いて、耳朶を甘噛みされ、私はビクッと身体を仰け反らせた。


指はまだ胸の先を摘んだり、指の腹で擦ったりしていて、その心地よさに身体の力が抜けてしまいそうだった。


「こっちも、沢山ほぐしておかないと、ね」


悪戯っぽいノワールの声にうっとりしていると、もう片方の手が下に降りてきて、その先にあるものにそっと触れた。

それだけで、身体がビクッと反応する。


「もうこれは要らないね」


ノワールはそう言うと素早く私の下着と寝着を脱がせた。


抵抗する隙もない程の素早い動きで、私はあっという間に纏う物の無い生まれたままの姿になってしまう。


ノワールの指がその先に触れる。

そこをゆっくり撫でられると恥ずかしい水音が鳴って、羞恥に耐え切れず私はノワールの首にしがみついた。

ノワールの指はその場所を優しく摩り、焦れるようなその動きに自然に腰が揺れた。


「んっ、あっ、んんっ、んっ」


強請るような甘い声が漏れて、ノワールが私の耳元でクスッと笑いを零した。


「可愛いね、テレーゼ……。

もっと欲しい?ここをこうされるのが好き?」


そう言ってノワールは指の動きを激しいものに変えてきた。


「あっ、あぁっ、んっ、あっ」


その指の動きに合わせるようにはしたない声を上げて、そこから与えられる快楽に夢中になっていった。


「ああ、凄い、こんなに溢れて……男の僕にも反応してくれてる。

ふふ、そのいやらしい表情が堪らないよ、テレーゼ」


ノワールが私の顔を覗き込み、うっとりと愉悦の表情を浮かべる。

私は顔を真っ赤に染めて、イヤイヤと首を振った。


「やっ、み、ないで……ノワール、あっ、お願い……は、恥ずかしい、の、あっ」


喘ぎながらの懇願に、ノワールは困ったように眉を下げた。


「そんなに甘くお願いされたら聞いてあげたくなるけど、君の恥ずかしがる顔がもっと見たいって言ったら怒らせちゃうかな?」


くすっと笑うノワールに、私は瞳を涙で潤ませ、イヤイヤと懇願を続ける。


「いやっ、見ないで…あっ、お願いよ…、あぁっ、ノワールッ」


激しくそこを擦られながらではうまく喋れない。

喘ぎ声の混ざったその願いに、ノワールはふふっと笑って頷いた。


「分かったよ、テレーゼ、見なければいいんだね?」


何だか悪戯っぽいその言い方に、背中がゾクッと震え、冷たい汗が流れる。

ノワールは私から身体を離し、優雅に微笑みながら、両方の腿裏を掴み、足を左右に開いた。


「……あっ、やっ、ダメっ」


私の静止など聞こえないように、股の間に身体を沈め、そこに顔を近付ける。

ノワールの指でトロトロに溶けたそこに、フッと息を吹きかけられて、私は身体をピクンと震わせた。


「ふふっ、気持ちいいの?テレーゼ」


「あっ、いやっ、やだっ、違っ」


恥ずかしさに咄嗟に否定してしまったけれど、ノワールは余裕の笑みを浮かべている。


「ふふ、嘘つきの悪い子には、もっと素直になってもらわないとね」


そう言ってノワールは私の足を自分の肩に掛けて、片手でお尻を持ち上げ、そこに舌を這わせた。


「ーーッ、やぁっ、だめっ、だめぇっ」


音を立てながら吸いつかれて、ゾクゾクと快感が背中を駆け上がり、霰もない嬌声を上げる。

ノワールの舌に合わせるように腰が勝手に揺れて、私は敷布を握り、凶暴な程のその快楽を何とか逃がそうとしたけれども、すぐにノワールの舌の動きに意識を持っていかれてしまう。


とめどなく溢れるものがポタポタと敷布を濡らしていった。


「あっ、んっ、んんっ、やっ、やだぁっ」


音を立て吸い上げられた瞬間、私は背中を反らせてガクガクと震えた。


「あっぅ、もっ、だ、ダメ、あっ、ダメぇっ」


ビクンビクンと腰が激しく揺れ、目の前がチカチカと光った。

そのままガクガクと震えていると、ノワールにまだ名残惜しそうにそこを吸い上げられてしまい、力の抜けた身体がビクビクと反応した。


「ふふ、思いっきり達したんだね、テレーゼ」


絶頂の余韻に浸っていると、音を立てノワールの指が中を掻き回し始めた。

初めての感覚に戸惑っていると、ノワールが何か呪文を唱えながら、私の下腹部に手を当てる。


そこがポゥっと光って、心地の良い暖かさが全身に広がっていった。


「これは破瓜の痛みを消す魔法だよ。

避妊効果も付与出来るけど、要らないよね?僕達には」


「はっ……えっ?」


にっこり大輪の花を背負って微笑むノワールに戸惑っていると、ノワールは素早く自分のトラウザーズを脱ぎ捨て、その下腹部にあるものしっかりと見てしまい、優雅で美しいノワールの女性的な顔と、それをつい交互に見比べてしまった。


「あっ……ノ、ノワール……わ、私、やっぱり……」


ズリズリと後ずさる私の腰を、ノワールがガッチリ掴んで、ズルズルッと引き寄せる。


「大丈夫だよ、テレーゼ。

痛みはないから、ね。

男の僕も受け入れてくれたら、嬉しいな」


その美しい顔を可愛らしくコテンと傾けて、おねだりするようなノワールに、私はプルプルと震えた。


ず、ずるいわ。

こんな、初めて見る可愛い仕草を、こんな時に使うだなんて。


ノワールのノアのような愛らしさに言葉も出ない私に、ノワールはふふっと笑って、それを私に押し当てた。


「んっ、ノワール、あの……んっ」


何か言おうとする私を黙らせるようにそれが更に中に侵入してくる。


「くっ、やっぱり、狭いね……」


ノワールの苦しそうな声にどうしたらいいのか分からなくなる。

それが音を立て私の中に少しづつ少しづつ入ってくる。


その初めての感触に戸惑いながらも、敷布を握りしめて、強烈な圧迫感を何とかやり過ごそうとした。


「ああっ、でも、これなら奥まで入りそうだな……。

テレーゼ、苦しい?痛みはないよね?」


そう聞かれて私は懸命にコクコク頷いた。

圧迫感による苦しさは感じるけれど、痛みは全く無い。


それよりも、ノワールが動く度にジワジワと気持ちよさが広がってゆく。

下腹部の奥がキュンと疼き出して、敏感にノワールの動きに反応していた。


「……テレーゼ、ふふ、気持ちよくなってきた?

さっきから僕のを締めつけてきて、おねだりされてる気分だよ」


うっとりと妖しく微笑むノワールに、私はフルフルと頭を振る。


だけど呼吸は上がって、瞳を潤ませ、快楽に頬を染めた状態では説得力がなかったのか、ノワールは愉悦の表情を浮かべ艶っぽく微笑んだ。


「僕のを奥まで捩じ込んだら、どんな顔をするのかな?

僕を男だと、この身体に教え込んであげなきゃね」


「あ……分かって……もう、分かってる、から、ノワール………えっ?あっ、あーーーーっ!」


一気にそれが奥まで侵入して、私は背中を仰け反らせた。


狂気的な質量が私の中に侵ってくる。

ハッハッと短い息を吐いて、苦しさを逃そうとするけれど、その存在感は無くなるはずもない。


「はっ……、ああ、奥まで捩じ込まれちゃったね……。

ふふ……どんな感じか教えて?テレーゼ」


ノワールの問いに、私は目を見開いた。


「……あっ、苦しくて……ノワールので、いっぱいで……もう、何も分からな……」


一生懸命に答えると、ノワールは楽しそうに笑った。


「苦しいのは、ごめんね。

でもすぐに気持ち良くしてあげるから、少しだけ我慢して……」


そう言ってノワールはゆらゆらと腰を揺らした。

2人の繋がった部分から水音が鳴る。


「んっ、んっ、はぁっ、んんっ」


その動きに全身の肌が粟立つ。

下腹部の奥が悦びに疼き出して脳が甘く揺れた。


「ふっ……もう、欲しそうだね、テレーゼ。

君の中が僕のを絡め取ってくるよ」


いやらしい表現に、私はカッっと赤くなって目尻に涙を滲ませた。


「あっ、言わないで、ノワール……いやっ」


羞恥に染まる私の顔をノワールは慈しむように見つめ、ゆっくりと身体を起こした。


「いや?本当に?ここはこんなに僕を欲しがっているのに。

ねぇ、テレーゼ、羞恥に染まる君もゾクゾクするほど色っぽいけど、情欲に喘ぐ君も見てみたいな。

ねっ、だから、もっと君を暴いてあげる。

君は全てを僕に委ねてくれればいいんだよ。

君の全てを僕に見せて……」


ノワールは私の腿裏を掴み、両足を左右に開くと、自分の腰を少し引いて、すぐに奥に差し込んだ。

水の弾ける音が響き、快感が背筋を上り詰める。


「あっ、ノワール、ま、まって、あっ」


そのまま激しい抽挿が始まり、私は高い嬌声を上げ続けた。


繋がった場所から水が飛び散る。

ノワールは私の最奥を激しく穿つ動きを一切止めず、激しさが増していった。


「あっ、ノワール、私っ、もうっ、おかしいの、身体が……もっ、もう、本当に、ダメ……っ」


身を捩らせノワールの首に抱きつくと、ノワールも苦しそうな声を上げた。


「くっ……僕も、もう…テレーゼ、君の中、凄い、はっ、ヤバッ、くっ」


狂ったようにノワールの腰を打ち付けられ、私は悲鳴のような嬌声を上げた。

その瞬間、絶頂に達して激しく痙攣すると、中にノワールの熱い刻印が放たれた。


目の前がチカチカと白み、涙が頬を伝う。

キツく抱きしめあった身体が溶け合うような感覚に、喩えようもないほどの幸福感に包まれた。


身体を重ね合わせたまま、お互いハーッハーッと深い呼吸を繰り返す。



「凄く、良かったよ……テレーゼ……」


恍惚としたノワールの呟きに、私も荒い息のまま答えた。


「……私も……き、気持ち、良かった……」


目の前の焦点が合わないまま、ボゥっとした頭で何も考えずにそう答えると、まだ繋がったままだったノワールのものがまた中で質量を増した。


「ああ、テレーゼ、嬉しいよ。

僕だけじゃなかったんだね。

今夜はもっと沢山2人で気持ちよくなろうね」


「……あっ、えっ?えっ?」


弾んだ声色のノワールの言っている事が分からず、呆然としていると、ノワールは私の足を高く持ち上げ、自分の肩に乗せると、腰をガッチリ掴んだ。

音を立てながら、質量の増したそれを更に奥に捩じ込まれる。


「あっ、だ、だめよ、ノワール、私、今達したばかりだから、そんなっ、だめっ」


激しい音を立て再び深く抽挿され、私は息も絶え絶えに懇願したが、ノワールは聞いてくれる気配もない。


先程達したばかりの身体がビクビクと痙攣して止まらなくなり、悲鳴のような嬌声を上げ続ける。


目の前が白み、ノワールの顔がボヤけて見えた。

過ぎた快楽に脳が全ての思考を停止したようだった。



私を穿ちながら、ノワールは大輪の花を咲かせるように、美しく微笑む。


「ふふ、僕、初恋を拗らせているって言ったよね?

こんな風にテレーゼと一つになって、もう自分を止められなくなったみたい。

でも良いよね?テレーゼも気持ちいいんでしょ?

もっと、いっぱい、いっぱいしてあげるから、ね」


可愛らしい仕草で小首を傾げるノワールは、だけどその凶暴な下半身の動きを一切止める事はなく、花のように微笑んだ………。




「やぁっ、ノワールッ、あっ、ノワールッ!」


哀願するように嬌声を上げ続ける私は、その後もノワールにひたすら貪られ、ずっと絶頂のままに喘ぎ続けた………。

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