MAO

 お久しぶりです、MALIAマリアさん。

 正直、当分VRこっち側に戻ることはないと、思っていたのですが。

 それも、まさかこんな形で再会するとは思いませんでした。

 

 まず、近況報告をします。

 ボクは今、現実世界で普通に高校生をできています。

 友達がいて、部活に打ち込んで、尊敬できる先生にも出会えました。

 ボクは、建築士を本気で目指すことにしました。


 両親は……ボクが帰ってきたところで何も変わりませんでした。

 ボクを男の子にしたいのか、女の子にしたいのか。

 相変わらずそんなことで食い違ってるくせに、お互いのことを付き合いはじめのカレシ・カノジョみたいに愛してるんです。

 ボクだけを、無視して。

 だから、遥か遠くの愛知県に逃げました。

 母方の叔母に助けてって駆け込んだら、思いのほかあっさりと、ボクを保護してくれました。

 それまで実の姉妹にすら本性を悟らせなかった母親も大したものですが、ボクの扱われ方を知った時の叔母の怒り狂いようと言ったら、凄まじいものでしたよ。

 VR世界に逃げ込む前に、最初からこうしておくべきでした。

 

 でも、それは結果論。

 VR世界に逃げ込んで、皆と出会ったから、ボクはこの選択ができた。


 LUNAルナさんが親身になってくれたから、ボクは完全に折れず、今に繋がった。

 JUNジュンさんが発破をかけてくれたから、愛知に逃げる勇気が備わった。

 そして。

 MALIAマリアさんが、何も言わずにさりげなくボクを見守ってくれてたこと、ちゃんと伝わってます。

 あなたがいなかったら、あの頃のボクは皆の善意を素直に受け取れず、逆に潰れていたでしょう。

 

 一度くらい、こう呼びたかった。

 恥ずかしがらず、呼べばよかった。

 本当にありがとう、


 MALIAマリアねーちゃん。

 

 安らかに、眠ってください。

 どうかボクが建築士になれるよう、天国で見守っててください。

 あなたのニコニコ笑顔を思い浮かべれば、ボクはどんな苦しみも跳ね返せるんです。

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