異世界を旅人スキルで放浪する
梧桐
第1話
ずっと旅がしたかった。
多くの景色をその目に焼き付けたかった。
けれども、私には旅どころか、歩くことすらできない。
私____神谷妃菜(15)
春から高校生になる予定だが、一度も通っていない。
幼い頃から身体が弱く、人生の大半を病室で過ごしているため外の世界を知らない。
本やテレビで見た景色を自分の目で見るのが夢だ。
病気が治ったら海を見たい、この病院より遥かに大きな山を見てみたいと願っていた。
しかし、現実はそう上手くはいかない。いつ治るのか、お母さんやお医者さんに聞いても「きっと治るから、がんばろう」と返ってくる。それは何度も聞いた言葉だ、「きっと」っていつ?私はそのことばかりを考えていた。
私の病室からコンコンとノックが聞こえ、「ヒナちゃん、朝食ですよ」と女性が入ってきた。看護師の飯島春香さん、私が入院した時からずっと私の担当をしてくれている。仕事で忙しいお母さんよりも飯島さんと関わることの方が多い。
飯島さんは私の机に朝食を置くと病室を後にした。
私の一日はここから始まる。朝食を食べ、お医者さんの診察があり、昼食までの間は一人で本を読んだり、テレビを見る、昼食の後も夕飯の後も同じでたまに眠りにつくので、夜中はほとんど眠れない。
そんなある日のことだった。
「あっ......! くっ......痛い......」
心臓発作が起きた。私は胸をつかみ苦しんだ。
「ヒナちゃん、大丈夫!?、先生、せんせーい!」
駆け付けた飯島さんはお医者さんを呼んだ。
強烈な痛みで私の意識は現実からシャットアウトした。
私・・・ここで死ぬんだ・・・病室だけの人生だったな・・・旅行してみたかったな・・・
「あなたの願い・・・叶えて差し上げましょう」
突如聞こえてきたのは金髪で神々しい女性、本で読んだことある、こういうの女神様っていうんだっけ。「あなたは誰?」と尋ねてみたいが声が出せない、女神様は微笑みながら謎の光を出した。私の意識は真っ暗闇から眩い光の中へと誘われていく。
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