第3話 ゲームの世界も、楽じゃない… ②

赤いフードの女は、鋭い眼光で妖樹を睨みつける。


妖樹は、ぱっくりと口を開け首と両腕をニョキニョキ彼女に向かって伸ばしてくる。


彼女は、ショットガンを連射しながら、彗星のようなスピードで間合いをとる。



彼女の眼光は赤く光り、妖樹の口を目かげて突っ込む。



ーえっ…!?



ヒカリが瞠目し固まっていると、妖樹は赤い炎に包まれ一瞬デチリジリになり、消失した。



メラメラ燃え上がる炎の奥の方から、その少女はショットガンを携え闊歩してくる。


彼女は、赤いずきんに、ゴスロリのドレスを身に付けている。


その姿は、おとぎ話に出てくる赤ずきんを彷彿とするが、彼女はパイプを咥えており、堂々としたドスの効いた風格をしている。


「あ、ありがとうございます…」


「何してんだ?この辺りは、単独行動は危険だぞ。」


「そうなんですね…」



「お前、どこから来た?」


その言葉に、ヒカリはドキリとした。


自分は、異世界から転生してきた。

地球の日本と言えば、伝わるだろうかー?


電脳世界の住人に、分かるだろうかー。


とりあえず、日本とだけ言うことにした。


「に、日本です。」

「ニホン…?何処だ、そこは…」

ドスの効いた鋭い眼光が、コチラを見据えている。

パイプを咥えて、煙を吸っている。

ヒカリは益々緊張が走る。

そのドスの効いた雰囲気は、まるで、『 ャ』が付く人を彷彿とする。

「ええと、地球です。」

「地球…?」

「太陽系第三惑星です。」

「…そうか、まあいい。乗りな。」

少女は、ヒカリにヘルメットを被せると、バイクに跨りエンジンを吹かせた。

「しっかり、掴まってろよ。」

「はい…」



バイクは街中を爆走し、森の中をグングン走った。


木々の隙間から見える、空を悠々と羽ばたく巨大な翼竜や、ギリシャ神殿を彷彿とする巨大な建造物、シンデレラ城を彷彿とするメルヘンチックで豪勢な城など、ファイナルファンタジーさながらの光景に、ヒカリは瞠目し息を飲んだ。


ふと、このあたりに狼や熊が出るのか気になった。


日本の山奥には熊がよく出て、狼犬も有名である。

この世界の、生物事情はどうなっているのだろうー?


「あの…狼とか熊とかも出るのでしょうか…」


急に、バイクのスピードが緩まった。

「貴様、何て言った…!?」

彼女は、口調を強めた。

「…え、この辺りに、狼とか熊とかも出るのかと…」

「狼だと…?そういう言葉は、口が裂けても言うな!わたしは奴が大っ嫌いなんだ。全く…ロクでもないモノを思い出させやがって…」

「はあ…」


バイクは、森を出て丘の上の農村地帯を抜けると、赤い屋根のお洒落な建造物の前に止まった。


建物の中から、長身の女が出迎えてくれた。

「あら、赤ずきん、待ってたのよ。さ、中に入って…」

「ちょっと、ヤボ用出来てな…」

「この子、どうしたの…?」

「外国から来たみたいなんだ。旅人だ。」

「そうなの…?さあ、中に入って…」

「おう。」



ー赤ずきん…?


ヒカリは、訝しがりスマートフォンを取り出し、アプリに『 赤ずきん』と、検索してみる。


すると、彼女そっくりの女の画像とプロフィールが出てきた。



赤ずきん


エルドラ歴 789年、

6月12日生まれ 、

現在 22歳。


身長 168cm 体重49kg ~52kg

体脂肪率 10%~15%


バスト Cカップ

スリーサイズ 88、56、88

脚長でモデル体型。


性格 勝ち気で男勝り、高飛車、我儘。


主な武器 拳銃、猟銃、電動ノコギリ。


スキル 炎使い&武器使い。体内に魔王石を宿し、原子の熱を調整し炎を発生させることができる。錬金し、周りの物を硬化させたり金属から武器を生成し、自在に操る。


精霊石と、賢者の石を捜している。


好きなもの おばあちゃん、林檎、葡萄酒、ビール、おばあちゃんの焼いたアップルパイ、身体を鍛えること、武器の手入れ、読書、ドライブ、ツーリング、天体観測、プラネタリウム、物書き、絵画、図工、DYA。


嫌いなもの、狼、黒魔術、怠け者、卑屈な人間、おどおどした人、一貫性の無い人、群れるだけしか能のない人間、うるさい人、八方美人、女子力求めてくる人、中身のない退屈な話、


得意なもの、身体を動かすこと全般、武器を巧みに扱い、攻撃力と機動力が高いこと、魔力感知能力も高い。DYA。


苦手なもの、朝早く起きること、料理、女子会、女子トーク、


愛車 大型バイクマークX、ゼファー、赤いフェラーリ、


経歴 幼少の頃のトラウマを捨てるべく、自らの意思で軍隊に入団。軍歴10年のベテランであり、リーダー経験もある。


口が悪く、運転が荒い。


下の項目に、星10段階評価が成されてある。


統率力 ★★★★★★★★★★

頭脳 ★★★★★★★★★

精神力 ★★★★★★★★★★

体力 ★★★★★★★

機動力 ★★★★★★★★★★

戦闘能力 ★★★★★★★★★★

戦略 ★★★★★★★★★★

魔力 ★★★★★★★★

魔力感知能力 ★★★★★★★★★★

性格 ★

回復力 ★★★


経歴 齢12の頃、狼から得たトラウマにより、弱い自分に嫌気が差し最強を目指すべく、軍隊に入隊。

長きに渡り鍛錬を積み重ね、戦闘の才覚と魔力に目覚め、現在は師団長にまで上り詰め隊を纏める。今でも鍛錬を怠らず、悪を抹殺すべく、大陸と大陸を渡り歩いている。

悪を兎に角、憎んでいる。

祖母や大好きな仲間を護るため、平和の象徴、虹の塔を建立するのが本音だが、それをひた隠しにして、周りに尊大に振舞っている。



ーか、彼女が、赤ずきん…!?


「そろそろ、彼氏を見つけたら?赤ずきん。」

「はぁー、どの男も軟弱だし…」

「そうだ、今度合コンしない…祭りの催し物があるんだけど…」

「踊りは苦手なんだよ…」


赤ずきんと長身の女が雑談しているのを尻目に、ヒカリは彼女のプロフィールを眺め口を唸らせる。


彼女は、どれもスコアが高く、イメージしていた、か弱い赤ずきん像とは対称的で、ヒカリは瞠目した。



仲間になって貰おうかー?


否、性格が★1なのが気掛かりだ。

それに、彼女のプロフィールからして、内気でおどおどした自分は軽蔑することだろう。

それとも、経歴からしてただのツンデレなのだろうかー?




「何してる?」

「あ…いや…情報を調べていてですね…」

赤ずきんの鋭い視線が突き刺さり、ヒカリは全身に冷や汗が走るり慌てて、アプリを閉じる。赤ずきんのこのドスの効いた威圧する様変わりは、明らかにヤンキーか悪人だろう。

「ごめんなさいね。赤ずきん、悪い子じゃないのよ。誤解されやすくてね…さあ、椅子に座って…お茶を用意するから。」

長身の女は、苦笑いするとヒカリを居間へと案内し、台所で紅茶を沸かした。



赤ずきんは、両腕と脚を組み未だに怪訝そうな顔をコチラに向けている。


ヒカリは、眼を白黒させながら俯いた。


宇宙の深淵にいるかのような、奇妙な沈黙が流れた。

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