緑の月

菫野

緑の月

のぼりゆく緑の月がひとりでにメロンソーダに浮かぶゆふぐれ


あの列車はとほき地球へ帰るらし向日葵畑さわさわ鳴きぬ


   Dorothea Tanning "Eine Kleine Nachtmusik" 1943

逆立ちて髪は聴きをり少女らのアイネ・クライネ・ナハトムジーク


しましまの灯台がある島々にわたしをひとりずつ置いてゆく


青い本書棚にさして三角の海を作りぬ とほき海鳴り


天頂に鯨のやうな雲が来て緑の月をかくしてしまふ


四角くも丸くもなくてたましひはさまよつてゐる言葉の縁で


ふり向いたときに存在しはじめた小壜 夜空と対峙してゐる


こんなにもひとりでゐてもたれもたれも身ぬちに光る宇宙の原子アトム


はてしなくひろごる夜をひとすみに区切る灯りよ そつとおやすみ

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緑の月 菫野 @ayagonmail

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