第45話 エピローグ

 決闘が終わった直後、俺はデュークから執務室に呼び出された。

 汗を流してから執務室に向かった俺は、軽くノックをする。


「入れ」


 許可があったので扉を開け中に入ると、デュークは窓際に立ち外を眺めていた。


「来たか、ゼロス」


「はい、父上」


「さっそくだが、今回の件についてお前に伝えておきたいことがある」


 デュークは深く息を吐き、ゆっくりと話し始めた。


「お前には謝罪と、そして感謝を伝えねばならん」


「謝罪に感謝……ですか?」


 デュークからは聞き慣れない言葉に、俺は思わず驚きながら復唱する。

 するとデュークは小さく頷き、説明を始めた。


「ああ、そうだ。ここ数ヵ月……厳密にはディオンが【全の紋章】を習得して以降、振る舞いが乱暴になっているのは分かっていた。ただ、その行いが自身に何をもたらすのかを知ってもらうには、私が口から伝えるのではなく、どこかのタイミングで挫折を味わってもらうのが一番だと考えて放任していた」


 一呼吸置き、デュークは続ける。


「そして今日、ディオンはお前へ決闘を挑み、惨敗に終わるという挫折を得た。これはディオンにとって、他の何事にも超えられない程の屈辱となったはずだ。この経験を自身の成長に変えられるかどうか、後は本人次第となるだろう」


「……父上」


 デュークの話を聞き、俺は少なくない驚きを感じていた。

 基本的に放任主義な人物ではあったが、こういった考えを持っているとは思っていなかったからだ。

 俺やディオンに興味がないのではなく、そうするのが一番だと考えた上での行動だったのだろう。


「もっとも、その分ゼロスには余計なリスクを負わせることになった訳だが……重たい役目をお前に押し付けてしまい申し訳なかった。そして、ディオンに挫折を経験させてくれたことに対し感謝を伝えさせてほしい。ありがとう、ゼロス」


 そう言って、デュークは頭を下げた。

 俺は呆気に取られながら、デュークに向かって言う。


「いえ、父上が気になさる必要はありません。正直なところ、ディオンへの鬱憤を晴らせて気分がいいのも事実ですし……何より、今回の決闘は絶対に曲げることのできない自分自身の尊厳プライドのために受けました。ですので、誰かから感謝される謂れはありません」


「……もっともだ。では、この件についてはここまでとしよう」


 そう言って、デュークが顔を上げる。

 すると、その表情はまた厳しいものに戻っていた。


「ところでゼロス、一つ聞きたいことがある」


「何でしょうか?」



「決闘にて、お前は見事にディオンを倒してみせたわけだが――それだけの力を、お前はいったいどこで得た?」



 シィン、と。

 執務室いっぱいに緊張が走った。


「先の戦いぶりからして、今のお前には少なくとも50レベルに匹敵する力があるはずだ。しかしお前はまだ、紋章を授かってから一週間しか経っていない」


 デュークは腕を組み、続けた。


「才能に恵まれた長女のレーナですら、そこに至るまで数ヶ月を要しているのだ。それをたった一週間で……ましてやスキルを使えない【無の紋章】持ちが辿り着けるとは、とてもではないが考えられない」


「…………」


 俺は答えに窮した。

 どう答えるべきか、必死に頭を回転させる。


(前世の記憶があることはもちろん……【無の紋章】の本当の効果についても、今はまだ隠しておくべきだろうからな)


 しばらく考えた後、俺は慎重に言葉を選んだ。


「申し訳ありませんが、それはまだ言えません」


「……」


 沈黙したまま、じっとこちらを見つめ続けるデューク。

 そんな彼に向かって、俺は続ける。


「ですが、現時点で一つだけお伝えできることがあるとすれば――【無の紋章】は決して無能の証明などではなく、最強に至る可能性を秘めた紋章だということです」


 俺は真っすぐデュークの目を見て、力強く宣言した。



「この紋章で、俺は最強になります」



 デュークは目を見開き、一瞬呆気に取られたような表情を見せた。

 そして目を瞑り、しばらく何かを考え込んだ後、小さく頷いた。


「そうか。なら、これ以上は私から何も問うまい。シルフィード家の人間としてふさわしくあり続けろ」


「はい」


 俺は深々と頭を下げ、退室した。



 廊下に出ると、そこにはシュナが待っていた。

 彼女の姿を見た瞬間、緊張が解けていくのを感じる。


「あっ! お疲れ様、ゼロス」


 シュナが柔らかな笑顔を向けてくる。


「侯爵からの呼び出し、大丈夫だった?」


「ああ、なんとかな」


 俺は軽く笑いかけた。

 シュナと話すだけで、落ち着く気がするのは果たして勘違いだろうか。


(いや……きっと、気のせいなんかじゃないよな)


 決闘は終わり、シュナも正式に従者として雇うことが決まった。

 アカデミーの入学試験が迫っており、やることは目白押しだ。

 だが、彼女と一緒なら乗り越えていけるだろうという確信がある。


 俺は真剣な表情でシュナの目を見つめた。



「何はともあれ。改めてこれからもよろしくな、シュナ」


「うん! 一緒に頑張ろうね、ゼロス!」



 シュナは少し頬を赤らめ、はにかんだような笑顔を浮かべた。

 俺の最強までの道のりは、まだまだ始まったばかりだ。




『ゲーム世界の1000年後に転生した俺は、最強ギフト【無の紋章】と原作知識で無双する』 第一章 完



――――――――――――――――――――――――――――


これにて第一章完結となります。

物語としてはまだまだ序盤ではありますが、ここまで10万字を超えるストーリーを書き切ることができたのは皆様のおかげです。本当にありがとうございます!


それから第二章についてですが、数日ほどプロット作成の時間を頂いたのち、連載再開させていただく予定です。

第二章ではアカデミー試験やダンジョン攻略などイベントが目白押しで、第一章以上の速度でレベルアップ&スキル習得&無双をお届けできるかと思います!

まだまだ続くゼロスの物語を、どうぞよろしくお願いいたします!


それでは改めて。読者の皆様、ここまで本作をお読みいただきありがとうございます!

最後に一つだけ大切なお願いがありますので、こちらもご協力していただけると助かります!



【大切なお願い】


第一章が完結した今、皆様に大切なお願いがございます。

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ただ夢の1位まではたどり着いておらず、その可能性があるとすれば第一章完結のこのタイミングがラストチャンスだと思います!


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