第26話 シュナの憧れ

 鉛の骸兵アンレッドソルジャー討伐後、俺は自身のステータスを確認する。



――――――――――――――――――――


 ゼロス・シルフィード

 性別:男性

 年齢:15歳

 紋章:【無の紋章】


 レベル:30

 HP:300/300 MP:55/150

 筋 力:50

 持久力:42

 速 度:50

 知 力:30

 幸 運:30

 ステータスポイント:6


 スキル:【パリィ】Lv.2、【スラッシュ】Lv.2、【マジック・アロー】Lv.1、【索敵】Lv.1


――――――――――――――――――――


「よし、パリィとスラッシュのスキルレベルも上がったな」


 システム音が鳴り響いていた通り、それぞれLv.2に上がっていた。

 スラッシュはこれにより、会心斬撃の威力が30%→33%上昇に進化している。


 『クレオン』ではスキルレベルに関して熟練度システムが採用されており、スキルを何度も使用することでLvが上がる仕様だった。

 ここまで中心に使用してきたこの二つが真っ先に上がるのも納得だ。


 俺は隣にいるシュナに視線を向ける。


「シュナの方はどうだ? レベルは上がったか?」


「うん、おかげで30まで上がったよ」


 差し出されたシュナのステータスを見る。



――――――――――――――――――――


 シュナ・トライメル

 性別:女性

 年齢:15歳

 紋章:【魔導の紋章】


 レベル:30

 HP:240/240 MP:62/210

 筋 力:33

 持久力:33

 速 度:38

 知 力:60

 幸 運:38

 ステータスポイント:6


 スキル:【マジック・ミサイル】Lv.1、【セイクリッド・エンチャント】Lv.1


――――――――――――――――――――



 レベルが30に達した他、最大MPも目標の200を突破していた。


「何だか、ゼロスの活躍にただ乗りしてるようで気は乗らないんだけど……」


「気にしないでくれ、俺がしたくてやってることだ」


 申し訳なさそうなシュナにそう告げた後、俺は一つ頷く。


(何はともあれ、これでひとまずボス討伐の準備は整ったな)


 このダンジョンに登場する雑魚敵のレベルからして、これ以上のレベルを目指すとなると効率が悪くなる。

 それに今の俺たちのステータスでも、ボスを討伐するには十分な数値だ。


 残る問題があるとすれば、シュナにボス挑戦の意志があるかどうか。

 元々、最後には彼女の意志を尊重する条件で臨時パーティーを組んだ以上、無理強いするつもりはない。


(さて、どう切り出したものか)


 俺がそんなことを考えていた直後だった。


「ねえ。そういえば、ゼロスは私にボス挑戦まで付いてきてほしくて、ここまでレベル上げを手伝ってくれたんだよね?」


 予想外なことに、彼女の方からその話題を振ってきた。


「そうだな。とはいえ元々の条件通り、シュナが気乗りしないようなら引き返すつもりだが……」


「……ゼロスとしては、今の私たちならボスにも勝てると思ってるんだよね?」


「ああ。ボス戦である以上、最低限のリスクはあるが……敵の戦闘スタイルは分かっているから十分に対処できるだろうし、仮にピンチになるとしたら前衛の俺だけだからそこは心配しなくていい」


「むっ」


 不安を取り除くように伝えたつもりなのだが、なぜかシュナは不満げに頬を膨らませた。

 それだけなく、ぐいっと身を乗り出してくる。


「何を言ってるの、ゼロス。私たちはパーティーなんだよ? そりゃ、ここまでおんぶに抱っこの私が言うのもどうかと思うけど……それでも、責任やリスクを君だけに押し付けるつもりはないよ。だから、私にできることがあれば全部言って。そして一緒に勝とうよ」


 そう言って、シュナはにこりと笑みを浮かべた。


「……それはつまり、一緒にボスへ挑戦してくれるってことか?」


「そう言ったつもりだけど……今さら、迷惑だからいらないなんて言わないよね?」


「当たり前だ。助かるよ、ありがとうシュナ」


「うん!」


 シュナからの力強い申し出もあり、こうして俺たちはボスへ挑むこととなった。



 ――ただ、今のままだと残存MPが心もとない。

 そこで俺たちは安全区域セーフティエリアに移動し、少しだけ休養を取ることにした。


 安全区域セーフティエリアとは一部のダンジョン内に存在する、魔物が出現しないエリア。

 ボス部屋の近くにあることが多く、ここでなら十分に英気を養うことができる。 


「………………」


「………………」


 その後、しばらく無言の時間が続く。

 そんな中ふと、シュナが何かを思いついたように口を開いた。


「MPが回復するまでもう少しかかりそうだし、せっかくだからお互いのことでも少し話さない?」


「お互いのことって、例えば?」


「何でもいいんだけどね。それこそ好きな食べ物かとか……あとは、どうして冒険者をやっているのかとかね」


 好きな食べ物に比べ、後者はかなり踏み込んだ話題に思えるが……


 そんな感想を抱く俺の前で、シュナは続ける。


「って言いながら、実は私がゼロスに話したいだけなんだけどね。よかったら少し聞いてくれるかな?」


「ああ、もちろん」


 こくりと頷いて返す。

 するとシュナは一呼吸置いた後、ゆっくりと切り出した。



「実は私が冒険者になりたいと思ったのは、に憧れたからなんだ」


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