第3話

 ジャングルを何も考えずに歩き回っていたマンモスは、そこにいる2つの人影を視界に入れる。

 マンモスは、とても好戦的な性格で、肉食獣でないにもかかわらず野生のモンスターなどを襲う傾向がある。


 その標的に、ララクとゼマもすぐになった。


「ブオォオオオオオオ!」


 ひと際声量のある鳴き声、いや雄たけびを上げながら、自慢の鼻を上下に躍動させる。

 そして肉の塊である大きな足を使って、2人へと突進を開始する。


「ゼマさんは、いったん下がってください。ボクが受け止めてきます!」


 ララクは短く指示をすると、姿勢を低くしてマンモスへ向かって走り出す。

 華奢な体の彼が走っても、大地が揺れ動くことはない

 が、マンモスが一歩前へ進むたびに、地震のような地響きが起こる。


 体格差は月とすっぽんのように、明確な差がある。


 だが、ララクは目の前の巨大モンスターに対抗できる自信があった。


「ブオオオォオオオ!!」


 マンモスはララクが攻撃の射程圏内に入ったことを確認すると、勢いよく長鼻を振り上げる。そして、ララクに向かってムチのようにしならせながら振り下ろした。


 鼻だけでララクよりも大きく、彼からすると鉄骨が頭上から落ちてくるようなものだった。


「……ふぅ! はぁ!」


 ララクはマンモスの前で急停止して足を止めた。そして腰に力を入れて両足を広げる。そして、上から振り下ろさせるマンモスの鼻に向かって、両腕をかかげた。


 長い鼻の側面を両手でがっしりと掴み、ララクは攻撃を受けとめてみせた。攻撃の衝撃が凄まじく、ララクの足が少し地面にめり込み、「ドゴオォン!」と強烈な音を鳴らしていた。


 それでも、ララクは押しつぶされることなく、腰を低くして耐え切っていた。


 一年以上前の彼ならば、あり得ない行動だ。

 けれど、あれから様々なパーティーを追放され、ついに100回というキリのいい数字を記録すると、彼には新たな能力が目覚めた。


 それが【追放エナジー】というスキルである。



【追放エナジー】


 獲得条件……パーティー契約を100回解除される。故意に自分から解除された場合はノーカウント(通算100回)。


 効果……パーティー契約を解除してきた相手、並びにそのパーティーメンバーのスキルを獲得できる。

 同じスキルがある場合、その数だけ効果が上昇する。



 これにより、ララクはいくつものスキルを得て、類まれなる力を得ることに成功した。


 名前  ララク・ストリーン

 種族  人間

 レベル 52


 アクションスキル 一覧

【ヒーリング(Ⅰ)】【エアスラッシュ(Ⅶ)】【フィジカルアップ(Ⅸ)】【スピードアップ(Ⅶ)】【スラッシュムーブ(Ⅱ)】【クイックカウンター(Ⅱ)】【挑発(Ⅴ)】【ディフェンスアップ(Ⅶ)】【カウンターブレイク(Ⅳ)】【ギガクエイク(Ⅳ)】【シールドアタック(Ⅳ)】【ウェイトアップ(Ⅳ)】【サーチング(Ⅵ)】【ウィンドブレイク(Ⅴ)】【スピントルネード(Ⅳ)】【空中浮遊(Ⅳ)】【嗅覚強化(Ⅱ)】【ウィンドカッター(Ⅵ)】【ウィンドスラッシュ(Ⅸ)】……NEXT


 パッシブスキル 一覧

【追放エナジー】【剣適性(Ⅹ)】【盾適性(Ⅸ)】【魔力上昇(Ⅹ)】【身体能力上昇(Ⅹ)】【防御力上昇(Ⅹ)】【俊敏性上昇(Ⅹ)】【体力上昇(Ⅶ)】……NEXT



 これが、現在ララクが使えるスキルのほんの一部である。


 単純に使えるスキルが増えただけでも強力なのだが、パッシブスキルというものがあるだけで彼の肉体は凄まじ進化を果たした。発動型のアクションスキルとは違い、パッシブは所持しているだけで効果を発揮する。

 なので、【身体能力上昇】や【防御力上昇】などでレベル以上の力を彼は持っている。

 さらに「適性」と書かれているスキルを持っていると、その前に記された武器などを練習せずとも自然と使いこなせるようになる。威力やキレも上昇している。


 彼が使えるスキルの中には、34回目の追放パーティー「プロクセミティ」の冒険者たちのスキルも含まれている。


 彼はこれらを使い、この巨大マンモスに対抗しようとしていた。

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