第2話 

愛と一聖は横に並んで帰宅するほど仲が深まっていた。


「一聖ってめっちゃいい男だよね」


「そんなことねぇよ」


「女の子の理想だよ。だれだって付き合いたいって思うよ」


「愛もそう思ってるの?」


「うん」


「へ?」


一聖が度肝を抜かれたかのように気の抜けた声を出す。


愛は遅れて気づく。これって告白まがいの発言だよね。


「え、いや、あの、ちがくて」


愛は焦る。自分の中に隠しておこうと思っていた感情。それを伝えてしまったのだ。


「俺は愛の気持ち受け止めるし、引いたりしないよ」


その言葉に救われた。そして口を開く。


「好きです。うちと付き合ってくれませんか?」

 

シンプルな言葉。でもそれが一番伝わると思った。


「ありがとう。これからよろしくね」


笑顔で抱き合う。


「辛いことも楽しいことも、嬉しいことも苦しいことも、悲しいことも幸せなことも


全部半分こしよう。ふたりだけの「はじめて」一緒に埋めていこうね」


満面の笑みで一聖が言う。


「一聖かわいいね」


「かっこいいの間違えだろ」


「かっこいいしかわいいよ」


そう会話していくうちに日が沈み、世界が沈んでいく。


そこからは毎日が好きで溢れていた。


学校帰りに一聖の好きなアイスを一緒に食べたり、恋愛映画を一緒に見に行って二人


して頬を染めたり、夜一緒に星を見たり。


「これからもずっと一緒な」


「もちろん。約束しよう」


「愛してるよ」


「うちも愛してる。絶対に離さない」


「離されません」


この頃の二人はそんな日常が無惨にも引き裂かれるなんて思いもしなかった。


             「4月29日」















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