小さな幽霊、大きなおなか。
ビートルズキン
第1話 チャーハン
俺はしがないサラリーマンだ。
年はまだ若い方だと思う。
俺の背は高く無精ひげを生やし、営業の仕事を粛々とこなしていく。
俺は節約のために激安アパートに住んでいるのだが、これはいわゆる事故物件というやつで、住んだ最初はポルターガイストに悩まされた。
特に電気が途中で切れてしまうのは困ったものだ。
それもいつもいつもご飯の時にかぎってポルターガイストが起こってしまう。
そしてある日。
俺のちゃぶ台のようなテーブルの真正面にそれがいた。
それは女の子のようだった。
小さい女の子。
服装はボロボロな布一枚を被っているようだった。
だがよく見ると顔は見えないが、特に太っているとか痩せているとかそんな印象は受けない。
「うおッなんだ!」
「………………ごはん」
幽霊はそれだけ言うと黙る。
幽霊なのに飯を食うのかよという当然の疑問はよそに俺はなんとか正気を取り戻しご飯を用意する。
今日はチャーハンだ。
ごはんと卵、チャーシューとネギを用意する。
溶き卵を油を引いたフライパンの上にかけてご飯をいれてネギとチャーシューを入れてあおる。
塩コショウで味を調えて味の素を少々入れる。
卵とネギで中華風卵スープを作る。
俺はなぜか二人分作る。
「いただきます」俺は手を合わせると幽霊もそのまねをする。
「…………いただきます」
幽霊は大きな口をあけてもぐもぐと食べる。
なぜか減っていく皿のご飯をよそに俺もなんとか食事をする。
食べ終わると幽霊は消える。
「ごちそうさまをつぎからは言えよな、まったく」
その日はなぜかポルターガイストが何もなく普通に過ごすことができた。
そうして仕事終わりに幽霊にご飯を与える生活がなぜか幕を開けたのだった。
その幽霊は当然のことながら俺にしか見えず、声も俺にしか聞こえないらしい。
まぁ別に慣れてしまえばどうってことはない。
友人や彼女ができたことのない俺には素敵な隣人だろう。
はぁ、全く先が思いやられるなぁ。
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