イシブルイワクルイノカスル(Isibur Ivakur Inovkasur)

ださいやさい

雨に500円

雨が止まない。それは私の心でも同じ状態だと思う。

狂っているのは世界?それとも私?ナイトラス・オキサイドのボトルで人をぶん殴った結果から見たら。私だね。

「まだ殺人に慣れていないの?」

居合わせた女の子が私を哂う。

「不義から始まるものは、罪で終わらせなければならないんだ。さて、彼が着ている服を脱がしなさい。古着ショップのリサイクルボックスまで持ち運ぶんだ」

「魂だけじゃ満足できなかった?」

「切手並みの値段の魂で満足できる死神なんかいないわよ」

女の子が黒ナンバーの軽バンを発動して、私の傍に止めた。

「ボケた?濡れた頭の皮はアメーバに食べられてしまうわよ!若いのに認知症がかかったら情けないじゃない?」


女の子が手入れのない道を走って、タイヤをガタガタと響かせて数分経って、私たちが山の中ポツンんと1軒あるコンビニに立ち寄った。店に入ったら、コンビニの従業員服を着た妖狐がクリップボードを持ったまま倒れている光景を目撃した。

「かすみちゃん、しっかりして!」

女の子が床に伏せる妖狐の体をひっくり返すと、名札が清和きよかずの面が現れた。

朽網くたみさんが居合わせてくれてよかった。大丈夫だわ。これでも今月は28連勤を確保しているわ…ちょっと働き過ぎたくらい…あの日もこんな大雨だった…」

妖狐はこのコンビニのオーナー、正確に言ってはなくなった夫の店を引き継いだオーナーだ。半年ほど前、妖狐の夫である天狗協会の元専務が拳銃に撃たれて死亡、今まで犯人への逮捕に至っていない。可哀そうな女。大したもんだ。でも、仮に元専務が生きているとしても、バブルのころ、調子に乗ってこんな田舎でコンビニを建てたことを後悔するのだろう。バイトも集まらないし、24時間営業を本舗から強要されている。

「朽網さんと、あなたも、よかったらうちの店で働かない?死神より全然いい時給を出しているのに…」

目元のクマのひどい状態では、説得力がないよ。

「魂を換金するためにちょっと寄っただけだよ」

そう、それは私たちがこの店に立ち寄った理由だ。トレーディングポストとして。この地域に魂を換金できる店はここだけで、まさにブルーオーシャンだ、もっと死の世界に関するビジネスを絞ったら楽な生活を送れるのに。

「はいはい、たまに商品を買い上げて頂けたら嬉しいわ」

前言撤回。孤独死、病死、交通事故死などを合わせた結果は2306円。

最低時給595円から換算すれば4時間も満たない、それにもかかわらず2人で分け合わなければいけない。それがフリーランス死神の末路だ。

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