09 七夕の日だね

あたしは、今日が七夕だと気づいた。

七夕の日で何かをしたことがあまりなさすぎて完全に忘れていた。


そして、今日は椎学七夕祭の日でもある。

椎学七夕祭とは、毎年、来場者が1万人超えており、とても有名な祭りだ。


あたしは学校に着き、教室に入ると、クラスメイト達が短冊に願い事を書いていた。

「りりあ!おはよ!」

中学からの友達、尾場瀬おばせあおが言った。

「おはよう〜あお!

願い事、何書くの?」

「宝くじがあたりますように、って書くつもり!

りりあはどうすんの?」

あおは、あたしに短冊とペンを渡してきた。

相変わらず、綺麗な手だ。

「まだ考え中」

「そっか〜

あ、9時から屋台準備やで」

「あ〜そんなのあったね。」


9時になり、校門付近で屋台準備を行う。

あたし達がする屋台は、クレープ屋さんだ。

あおがクレープ屋でバイトしており、作るのが慣れていて得意だからという理由でクレープに決定した。


屋台準備が終わり、開催時刻の直前になり、あたし達は屋台につく。

「もうそろそろやな〜

りりあ、人、呼んだ?」

「うん、一緒に屋台回るんだ」

あたしは、ことりさんを呼んだ。

ことりさんは、椎学七夕祭によく来ていて、

今年も行く予定だったらしい。

一緒に屋台回ろう、と言ってくれた。

「なるほどな〜」

あおがニヤニヤしながら言った。

「えっと、何?」

「りりあ、屋台は私達に任せて!」

「いや、でも」

「遠慮しないでよ〜私は応援してんだよ?」

「じゃあ…お願いします…」

「うん、早くその人の元に行ってきな!」


開催時刻になり、人がジャンジャン来た。

人々の勢いに驚き、ぼーっとしていると、後ろから誰かに話しかけられ、抱きつかれた。


「りりあちゃん〜!おはよ〜

今日も可愛いね〜!」

ことりさんがすごく元気な声で言った。

今日も可愛いだなんて、なんでそんなに平気で言えるのかな。

ただ、それだけなのに

なぜか、ドキドキする。体が熱い。

「ことりさん、おはよ…ございます」

「あ〜りりあちゃん、また敬語言ってる!

タメ語言うまで離さないよ」

「ことりさん、おはよう!」


あたしが大きな声で思いっきり言うと、

ことりさんは抱きつくのをやめ、耳元で囁く。

「ふふ、上出来だね」

な、なんなんだこの人は…

私をドキドキさせれば気が済むのだろう。

これが無自覚だったら、怖すぎる…

低い声のことりさんはかっこよかった。


「りりあちゃんって屋台何してるの?」

「あ〜クレープですね」

「なるほどね〜!

私、クレープ好きなんだよね。

特にチョコバナナ!」

「あたしも一緒です、チョコバナナ結構好きなんです」

「ほんと?嬉しいな」

ことりさんは喜んだ顔をした。

どんな表情も愛おしい。


急に、人が多くなり、ぎゅうぎゅうになる。

今年は、来場者が3万人ぐらい超えてそうだ。

『ことりさんと離れたくない』

なんて、ふと思ってしまい、ことりさんの手を握る。

「あ、ごめんなさ…」

「謝らないで、このままでいようよ」


ことりさんの手はあったかい。

あたしの手の冷たさと違って。


互いの手を絡め、手を繋ぐ。


今日は誰よりも幸せかもしれない。



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