第5話

 ネクさんが悪いユーレイになってあばれた日から、一日がすぎた。

 その日もあたしは重い気持ちと、ほかのみんなはあんなふうにさせないって気持ちをひきずりながら学校を出てアパートに向かった。

 となりをあるくハルト君も口数が少ない。

 アパートにつくと、水谷さんがネクさんの部屋の前でしゃがみこんでいた。

「水谷さん、どうしたの?」

『あら、アヤナちゃん、ハルト君、こんにちは。いえ、昨日ね、このブレスレットが。』

 指さした先には、昨日あたしがネクさんの黒いけむりをあびてこわれたブレスレットの石がいくつかころがっていた。

 昨日は部屋のお清めに時間がかかり、廊下はまだ掃除していなかったんだった。

 水谷さんはその一個一個をマジマジとに見ている。

「ブレスレットが、どうかしたの?」

『二回目にネク君がけむりをはいたときは、ハルト君がアヤナちゃんをまもったわよね? でも一回目、さいしょにけむりをあびたとき、アヤナちゃんはどうやって助かったのかしら?』

「それは……わからないです」

『でしょ。それでね、わたしはあのときアヤナちゃんがつけていたブレスレットがこわれたのを見たの。もしかして、アヤナちゃんをまもるためにブレスレットがこわれたのかなって。』

 あたしはホウキとチリトリを持って来て、ころがっていた石をあつめた。

 廊下のまんなかにあつまったブレスレットのはへんには、こわれているものもあった。

『これ、てんねん石? パワーストーンかも。』

「ええっ、そうなの?」

『うん。パワーストーンの力が、アヤナちゃんをまもってくれたのかもしれないわ。』

 あたしがなんとなく、ざっか屋さんで買い集めたブレスレットのパーツ。

 その中に、悪いユーレイにきくパワーストーンがまじっていたなんて!

『きっとこれとこれ、それにこれね。』

 いくつかの石をゆびさす水谷さん。

 どれもいろんなざっか屋さんをまわって買ったものだ。

「そんなすごい力を持ってるものが、ざっか屋さんにおいてあるのかなぁ」

『ざっか屋さん自体、もののかちを見きわめていないのかもしれないわね。あと、アヤナちゃんの力が大きいんだと思う』

「えっ、あたしに力なんて何もないよ?」

『あのたつのおばあさんのお孫さんだもの、きっとすごい霊力を持っている。その霊力とパワーストーンの力がきょうめいして、おたがいを高めあっているんだと思うの』

 石をのぞき込んでいたハルト君も、うなずいていった。

「たしかに、最初のユーレイのこうげきは、オレがヤマギシを守るより先に行われていた。何かほかの力がヤマギシを守っていたという可能性はあるのかも」

 ネクさんに黒いけむりをかけられたとき、あたしの左手で何かがはじけたのはたしかだ。

「いわれてみればあのとき、ブレスレットが光っていたような――」

『でしょ!? きっとアヤナちゃんの力が石の力をよびさましたのよ!』

「だとしたらすごいことだけど、そんなことあり得るのかな?」

 うう、ハルト君の落ち着いた意見!

 だけど水谷さんは大きくうなずいていった。

『あり得るわ! ハルト君のお札もそう。人の力を通して物のこうかが大きくなるの。』

「ヤマギシ家の家系の霊力、ですか。なるほど……」

『もしもこの仮説が本当なら、力のある石を見つけることができたらアヤナちゃんにとってよりよいお守りをつくることができるわね。』

 よし、と声をだして水谷さんがふわりと立ち上がった。

『そうとなったら話ははやいわ! 力のある石を買いに行きましょう!』

「ええ、でもそういう石って高いんじゃ?」

『アヤナちゃんが今まで買ってきた店のどこかに、良い石を安くおく場所があるはず。そこをさがして買いこみましょう』

 そうか、あの日あたしを守ってくれた石は、今まで買ったどこかの店のものだ。

 悪いユーレイから身を守るブレスレットを自由に作れるとしたら――!

「石があれば、あたしも何か力になれるかも! あ、でも……どの店かわからない」

『そこで! 元占い師だったわたしの出番!』

 水谷さんがじまんげにむねをたた……けずにすりぬける。

『わたしが力のある石を見つけてあげる。アヤナちゃんは、それをつかってたくさんブレスレットを作って。みんなを悪いユーレイのえいきょうから守るの。』

 水谷さんが石を見つけてくれればたのもしい。

 あたしはハルト君や水谷さんをつれて、おばあちゃんに石の話をしてみた。

 するとおばあちゃんは「いいわよ、いってらっしゃい」とお小遣いまでくれた!

『ってことは、今から石を買いにお買い物にいくの!?』

 おばあちゃんとお兄ちゃんとお話していたアカリちゃんがいう。

『ええ、わたしがアヤナちゃんにとりついて、アヤナちゃんが買い物した駅前まで!』

『水谷さんだけずるーい! わたしもアヤナたちとお買い物する!』

 そういうと二人はすばやくあたしのせなかにピトッとくっついた。

 おばあちゃんとお兄ちゃんは苦笑して、止めてくれない。

「じゃあ、二人ともあたしからはなれないでね。ほかの見える人にあったら大変だし」

 はぁ、と大きなためいきをついて、ハルト君が言った。

「オレもいっしょに行くよ。そうすれば、もしも悪霊払いの人に出くわしても事情をせつめいできる。オレくらいしか、この役はこなせないだろうし」

「ハルト君も来てくれるの? やったぁ!」

 水谷さんやアカリちゃんとのお買いものは、楽しみだけど不安がいっぱいだった。

 ユーレイをつれて出かけてだいじょうぶかなってしんぱいになっちゃったり。

 でもハルト君がついてきてくれるなら、しんぱいないよね!

 こうして、あたしと水谷さんとアカリちゃん、それにハルト君で駅前に向かった。


 平日のお昼すぎ、駅前は人でいっぱいだった。

 久しぶりにアパートからはなれてにぎやかなところにきた水谷さんとアカリちゃんはとってもたのしそうにまわりを見まわしている。

『懐かしいなぁ。わたしが占い師してたころから変わってないわ、買い物したーい!』

『すごーい! 駅だー! わたし駅チカのアイス屋さん好きだったなー。』

『わかるー、あそことってもおいしいのよね。ねぇねぇ、ちょっとよってかない?』

 水谷さんとアカリちゃんがひさしぶりの駅前にもりあがる。

「でも、今の二人はアイスなんて食べられないよ!」

『人が食べてるのみるのがしあわせなの! じゃあ、さいしょはアイス屋さんよ!』

『水谷さんにさんせーい、いえーい! れっつごー!』

 これはちょっと、止められそうにないかも――。

 あたしのうしろでハルト君がため息をつく。

 元気いっぱいの二人を先頭に、あたしたちはアイス屋さんに向かった。

『わたし、ナッツチョコオーレが好きだったなー。』

『わたしはミックスいちごミルク! いっつも食べてたよ!』

 アイス屋さんのアイスをのぞき込んで、水谷さんとアカリちゃんが言う。

 そして、アイスを食べられない二人の代わりにあたしがそれを食べることになった。

 あたしは自分の好きなスカッシュメロンソーダ味もあわせて、みっつの味がたべれるトリプルを注文。

 ハルト君は、アイス屋さんのウインドウをじっと見てなやんでいた。

「ハルト君、あんまりアイス屋さんとかこないの?」

「あんまりというか、初めてきた。おおすぎて迷うな、これは……」

 むむむ、としんけんなかおでなやむハルト君がおかしくて、あたしはわらった。

「ハルト君、ここのお店はバニラがじまんでおいしいんだよ。もしもきまらなかったら、リッチバニラを食べてみたら?」

「ヤマギシがそういうなら、そうしよう」

 あたしとハルト君がアイスを買って席につく。

 その横にふんわりと浮かび上がる水谷さんとアカリちゃん。

 アイスをまぶしそうに見つめながら、二人はあたしにさいそくした。

『さあアヤナちゃん、わたしのためにも食べて食べて!』

『わたしのぶんもしっかり食べてね! いいなー!』

 なんて。

 両耳からせかされて食べる、あわただしいアイスタイム!

 あたしは二人にせっつかれて急いで3つのアイスを食べているあいだに、ハルト君はのんびりとリッチバニラを味わっているようだった。

「あわてて食べたから口の中つめたーい!」

「とにかく寄り道はおわったんだし、次は――」

 言いかけたハルト君をふわりとおいこすようにして、アカリちゃんがいった。

『わたし、洋服屋さんがみたいっ!』

『アヤナちゃんのファッションショーもいいわねー!』

 水谷さんもノリノリだ。ふぁ、ファッションショーなんて!

 恥ずかしくってぜったいムリ!

 ハルト君がはしゃぐ二人をみて、もういちど大きなため息をついた。

「まったく、いつになったらパワーストーンを見に行けるのやら……」

 水谷さんとアカリちゃんのリクエストを聞いて、ざっか屋さんに行く前に少しよりみち。

 いろいろな洋服屋さんがならぶコーナーにやってきた。

『みんなー、見て見てー! 着てみちゃった、なーんて』

 水谷さんが服屋さんのマネキンに体をかさねるようにしてポーズをとった。

 そうするとまるで水谷さんがその服を着ているみたいで、とってもキレイ!

「わー! 水谷さんとってもキレイ! ステキ!」

『水谷さんいいなー、わたしも!』

 アカリちゃんもつづいてマネキンさんにかさなってポーズ!

 こっちもカワイイ!

「アカリちゃんもにあってるー! 大人っぽい服似合うねー!」

『えへへ~、いいでしょー!』

『あ、わたし今度これ着てみたい!』

 水谷さんとアカリちゃんは思いきりファッションショーをたのしむ。

 そして、あたしのほうを向いた。

『さぁ、わたしたちが楽しんだところで、こんどはアヤナちゃんのばんよ。』

『アヤナはじっさいに着れるんだから、いろいろ着てみてね!』

「ええっ!? あたしもするのー!?」

 ファッションショーって、いろいろ着てみんなのまえでポーズとったり!?

 はずかしい!

 ぜったいできない!

 ただ、二人が服をえらぶのがとてもたのしそうで、あたしも服を見たい気持ちはある。

「ハルト君、ごめん……。ちょっとだけ、いい?」

 ハルト君、今日いちばんのため息。

 これはダメかなぁ、とおもいきや彼はうなずいた。

「水谷さんとアカリだけ好きにやって、ヤマギシにだけやるなとは言えんからな」

「ありがとう!」

 しぶしぶ、といった感じではあるけど、オーケーが出た!

 あたしたちはアカリちゃんが『ここにしよう!』というちょっと大人っぽい店に入った。

 いっしょにお店にはいったハルト君、いごこちわるそう。

 女の子の服屋さんだもんね。

 うーん、どれもカワイイけど、何がいいかなぁ……。

『当店のオススメは、こちらになっておりまーす!』

 水谷さんが服をみてお店の人のようにはしゃいでいる。

 アカリちゃんもそばにいくと、『あっ、これカワイイ!』とうなずいた。

 二人がえらんだのは、おちついたイメージの白いワンピース。

 きりかえしがちょっと高いいちにあって、着たときのラインがきれいになりそう。

 かたひももシンプルながらぎんいろでもようが入れてあってオシャレ!

 スカートもふんわりしすぎない大人っぽい感じ。

 すそにこっそりフリルがついている大人カワイイ!

 お値段も……ギリギリ予算内!

 どうしよっかなぁ……。

 なやんでいると、店員さんがやってきてきいてくれた。

「お客さま、よかったらごしちゃくなさいますか?」

「はっ、あ、えっと……」

「せっかくここまできたんだから、着させてもらえよヤマギシ」

 ハルト君にうながされ、あたしはうなずいてしちゃくしつに入った。

 ワンピースにきがえてしちゃくしつを出る。

 そこには水谷さんとアカリちゃん、ハルト君がまっていた。

『似合う! 似合うわアヤナちゃん! これできまりよ!』

『アヤナ大人の女の子になってる! とってもいいよー!』

 二人にぜっさんされて、ちらりとハルト君のほうをみる。

 ハルト君はてれくさそうにほほをかいた。

「ああ、その……ヤマギシに、にあってる」

 三人からごうかくがでたのなら、買うしかない!

 あたしは店員さんにうなずいて「コレにします」といった。

「それ、着ていったらどうだ?」

「え、えええ!? いいのかなっ!?」

 ハルト君の思わぬことばにあたしがとまどっていると、店員さんが「きていかれますか?」とやさしいえがおできいてくれた。

 あたしがうなずくと、ワンピースのタグを外してくれた。

 そしてさっききていた服をたたんで、ショップのバッグにしまってくれる。

 今日のシューズとあわせてみても、ワンピースはいい感じ!

 かがみを見ていると店員さんにえがおで「今日はデートですか?」ときかれてしまった!

 ででで、デート!?

 そっか! 店員さんには水谷さんとアカリちゃんがみえてないのだ!

 あたしとハルト君しかみえてなかったら、そう見える?

 どうなんだろう。

 クスクス笑ってる水谷さんとアカリちゃんをムシして、ハルト君がいった。

「ちがいます。たいせつな買い物をしに……」

「たいせつな買い物って、お二人のきねん日かなにかですか?」

「いや、ちが……。い、いくぞヤマギシ!」

 ちょっと顔を赤くして、ハルト君がさきにお店を出る。

 あたしはお会計をおえてバッグをうけとると、おれいをいってお店をでていった。

「ハルト君、すっかりよりみちしちゃってごめんね!」

『じゃあ、そろそろアヤナちゃんがふだんいっているざっか屋さんをまわりますか!』

「やっと……。やっとほんらいのもくてきにたどりつくのか……」


 ワンピースに着がえたあたしとみんなは、駅チカのざっか屋さんに向かった。

 あたしがいつもパーツを買っているお店は二か所あるので、ちかい方からまわる。

 オシャレなかんぱんのアクセサリー屋さんに入り、石そざいのコーナーへ向かう。

「あたしの買っているとこのひとつなんだけど……水谷さん、どう?」

『うーん……。アパートにおちていた石みたいに力をかんじるものはないわね。』

 ひととおり石に手をちかづけたりしていた水谷さんが首をふった。

『これと、これ。それにあそこのやつ。この三つはちょっと力をかんじるけど。』

「それじゃあねんのため、買っておこうかな」

『いいじゃーん! カワイイデザイン!』

 アカリちゃんは石を気に入ったみたいで、はしゃいでおススメしてくる。

 水谷さんもハルト君もうなずいたので、あたしはその石たちをレジにもっていった。

 おばあちゃんがお金をくれたから、予算もしんぱいない!

 石をうけとって、次のお店へ。

 こっちはいつもふきげんそうなおじさんのやっている、駅のはしっこのお店。

「もう一個がここなんだけど、どうかな?」

 石のコーナーにあんないすると、水谷さんが石にぐっと顔をちかづけた。

『この石、力をかんじるわ。こっちの石も。きっとあの日アヤナちゃんがつけていたブレスレットにつかったのはこのお店の石ね。』

 よかった、力のある石が見つかった!

 アカリちゃんはたいくつなのか、お店のなかをじゆうに見てまわっている。

 その間に、あたしと水谷さんとハルト君の三人で店の一角にある石コーナーでかいぎ。

「たしかにこの店の石、オレでもなにかかんじる。なんか、ねつというか」

『ハルト君の力に石がこたえているのよ、アヤナちゃんはどう?』

「あたしは、よくわからないけど」

 石をツンツンとしてみても、アクセサリー用の石にしかおもえない。

 二人みたいに、何かをかんじるということはできないでいた。

『たいせつなひとのためにアクセサリーをつくると思いながら、石にふれてみて。』

「たいせつなひとに、プレゼントするため……」

 おばあちゃん、お兄ちゃん、ハルト君に水谷さんにアカリちゃん。ゲンさん。

 それに――ネクさん。

 ネクさんに力のあるアクセサリーをわたせていたら、未来はちがったかもしれない。

 そう思ったとき、指先にじんわりねつがこもった。

 石が、それにこたえるようにあつい。

「あっ、この石、あたしの指にはんのうするみたいにあつくなった!」

『うん、やっぱりこのお店の石には力がある。とくに力がつよいのをさがしましょ。』

 三人でそんなにひろくない石コーナーを、一個一個石に手で触れてかくにんする。

 水谷さんは、さいごはあたしがさわってきめるのがいいと言った。

『ブレスレットを作るのはアヤナちゃんだからね。あいしょういいのえらばないと。』

 それから水谷さんはパワーストーンのせつめいをしてくれた。

 パワーストーンにはそれぞれこうかや意味があって、力をやどしている。

 ただ、そういうのはとっても高いから、あたしには買えないはずだって。

 でも、きっとパワーストーンのかけらが残っている石たちがあって、そのかけらがあたしの力にはんのうしているのだという。

『だから、力がすごいことと、アヤナちゃんがいいとおもうもの、これがだいじなの。』

 あたしがさがすいがいにも、水谷さんとハルト君がよい石を見つけてきてくれる。

 それにあたしはちょくせつふれてみて、あいしょうをかくにんする。

 そうして、自分に合う石をいくつもみつけていった。

「たくさんみつかったね」

『アヤナちゃん、これ!』

 水谷さんが大きな声でゆびさす先に、ひとつの黒い石があった。

『まよけでつかわれるパワーストーンがまじってると思うんだけど、スゴい力がある。』

「本当だ、オレでもわかる。この石はすごい」

 二人がさわっていた石をうけとってみる。すごいねつをかんじた。

 それでいてどこかやさしく、まもってくれるような――。

 まよけって、こんなにやさしいものなんだ。

 これでブレスレットをつくったら――そうかんがえたら、石がまたねつをはなつ。

「うん、これすごい。だいはっけんだね!」

『そうね。このへんで石さがしもおわりにしましょっか。』

 石コーナーをはなれかけた水谷さんが『あ。』といってあたしにといかける。

『アヤナちゃんは、ただ石をつないでくだけでもブレスレットとしてカワイイと思う?』

 水谷さんにきかれ、あたしはなやんだ。

 あたしはいっつもブレスレット作りに石いがいのいろんなパーツもつかうのだ。

 そうして自分がカワイイとおもえるかたちにしあげていく。

「あたしは、石いがいもビーズとかあったほうがカワイイと思うしお気に入りになる」

『じゃあ、しっかりそういうパーツも買っていきましょ、いちばんたいせつなのはアヤナちゃんの気もちがブレスレットのなかに入ることよ、お気に入りを作ってね!』

「ヤマギシのお気に入りをつくればつくるほど、こうかが高まるってことか」

 水谷さんとハルト君のことばにおされるように、あたしはえんりょなく買いたいパーツを買いあつめていった。

 お会計をするとき、レジのおじさんがちょっと目をおおきくひらいた。

「ほぉ、こりゃあいい目をしている。アンタ、石をえらぶさいのうがあるな」

「水谷さんと、ううん。ともだちのハルト君と二人でじかんをかけてえらびました!」

「それにしても、うちでもイイやつばかりえらばれてるな、アンタたいしたもんだ」

 いつもぶあいそうなおじさんにほめられて、あたしと水谷さんは思わずガッツポーズ!

 やっぱりこのお店の石に力があるのはまちがいなさそう。

 あとはあたししだい。

 あたしが良いものを作れれば、きっとこうかをはっきしてくれる。

 しはらいをすませてお店をでると、あたしは石たちをぎゅっとだきしめた。

「あたしにも、できることがあるんだ。みんな、力をかして。おねがいね」

 たいせつな人たちを守ることができる力――。

 人間と、ユーレイをたいせつにするために。

 あたしにもできることがあるんだ!

 ハルト君が、ちいさくうなずいた。水谷さんがほほえんでる。

「水谷さん、今日は本当にありがとう。これであたしにも、何かができそう!」

『アヤナちゃんがもっている力をはっきさせるお手伝いができたなら、こうえいよ。』

「そろそろ日がくれる、そのまえにアパートにもどろう」

『うん、アパートにかえろー!』

 夕方はおうまがときといってユーレイにはあまりよくない時間だとハルト君がいった。

 あたしたちはみんなでなかよく、おしゃべりをしながらアパートにむかった。

 そして、おばあちゃんとお兄ちゃんにえがおでむかえられた。

 ここが、あたしのいばしょ。

 なによりもたいせつに守っていくばしょ。

 もういちど石たちをぎゅっとして、あたしはお兄ちゃんたちにただいまと言った。 

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