Day29 焦がす

 ぼんやりとして、焦がしてしまった。気がかりなことがあったのだから仕方がない。溜息をついてマッチを擦り直す。しっかりと燃やさなくては、焦がすのではなく。

「しっかりしろ」

 はっと声を振り返る。隣家の主が首を胸元に抱えてこちらを見ていた。慌てて火を踏み消す。

 アパートの扉が焦げている。

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