この混沌の中で革命を

@RIRU1754664

第1話



…16年前の昨日。


400年もの歴史を持つ王制、その全てを覆そうとするクーデタが起こった。


首班は共和制を理想とする急進派グループ、B団。


彼らは冷酷かつ徹底した態度を以て、王家の歴史に終止符を打った。


それが意味するところは、無論、皆殺しである。


国王ベルンハルト、王妃リーゼロッテ、そして生まれてまもない一人娘、ギーゼラ。


国王夫妻の兄弟姉妹、血縁者。


最後まで王家を守ろうとした兵士たちや使用人たち。


王城の地下室に隠れていた彼らの命は為すすべもなく、奪われた。


代わりにB団が共和国樹立を宣言。


それが深夜0時頃だった。




明くる日、ラジオ放送や号外新聞を通じ事態を知った市井の者たちは少なからず困惑した。


「国王一家が殺害ですって」


「まあなんてこと!!じゃあ生まれたばかりのお姫様もなの?」


「B団?なんかそんな団体あったっけ。で、どういうことだ?」


「え…だからそいつらが権力握るってことだろ」


「でも王家って別に圧制を敷いてた訳じゃないよねえ」


「そうだよ、議会もあったし民主的だった。…どうしてクーデタなんか?」


そう、彼らは本当に困惑しただけだった。


平和に慣れすぎた彼らは何も知らなかったのだから。




勿論、王党派の人間はいるわけで、彼らは熱心に反対した。


しかし彼らは市民階級上層部のほんのひとつまみであり、かつ王家を支持したところでその対象はもういない訳である。


よって彼らはその運動をやめた。


もしくはいつの間にかいなくなった。




全てが虚しく、あっけない最後だった。




B団が権力を振るい始めたのはすぐだった。


言論統制が行われ、民主主義の象徴とまでされた議会も閉鎖。


誰もクーデタについては話さなくなった。


労働組織の解体、数々の企業の国有化、至る所での思想教育…。


人々は従うしかなかった。


従わないものは、文字通り、


A共和国万歳、A共和国万歳…。


歓声が聞こえる。


彼らの目は全て虚ろ…


だった。それだけだった。
























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