RE:仁志君【3部作3】

崔 梨遙(再)

1話完結:2000字

 少し経ってからだったか? また仁志君の要望で名古屋にナンパに繰り出した。片っ端から声をかけまくる仁志君。もう、相手を確認していない。女性というだけで声をかけていた。


 僕はずっと女性達を観察していた。好みのタイプの女性以外に声をかける気がなかった。珍しく、仁志君が女性を1人ゲットした。


「崔君、1人OKやってさ」

「ほな、2人でランチに行ってこいや」

「ええんか?」

「僕はええわ。1対1の方がええやろ?」

「ほな、行ってくるわ」


 その日、僕は本当に自分が魅力を感じる女性にしか声をかけるつもりは無かった。勿論、内面は知りたいが、外面から惹かれ、それから内面を知ってもいいだろう。


 夕方になって、仁志君が1人で戻って来た。


「あれ? もう終わり? 1人?」

「うん、ランチとデザートの後、“用事があるから”って去って行った」

「連絡先は?」

「教えてくれへんかった」

「まあ、それも経験や。何も収穫が無いよりも良かったやんか」

「まあ、そうやけど。盛り上がらんかったわぁ」

「それも経験や……あ!」


 そこで、僕が動いた。好みのビジュアル! OLだろうか? スーツ姿2人組だ。2人とも、155~156センチと思われる。1人は黒髪を肩の上で揃えている。1人は長い茶色い髪。黒髪の方が太っているわけではないが、茶髪の方が痩せている。黒髪は目つきがキツイ。茶髪は笑顔が絶えないタイプだろう。茶髪の方が話しかけやすいが、僕の狙いは黒髪だった。


 仁志君を放っておいて、僕が斬り込んだ。


「仕事帰り?」

「そうです-!」

「ほな、夕食を一緒にするくらいの時間はあるやろ?」

「うーん、時間はあるけど」

「なんでも好きな物を食べてええから」

「本当に?」

「俺達、寂しい男2人組やねん。男2人で飯を食っても楽しくないやんか、なあ、助けてや。お姉さん達美人と食事したいねん」

「うーん、どうしようかなぁ」

「ちょっと、浜内さん、やめときましょうよ」

「沢村、ちょっとくらいいいんじゃない?」

「ダメですよ」


 浜内が茶髪、止めている黒髪が沢村らしい。浜内の方が先輩のようだ。僕は、浜内を狙い撃ちにした。浜内が動けば、沢村もついてくるしかないだろう。


 ということで、浜内をおだて、褒め、気分良くさせた。そして!


「沢村、食事だけやんか、行こう!」


と言わせることが出来た。計算通り、諦めた様子の沢村もついてくる。


 高級居酒屋でも、浜内さんを立てることは忘れない。そして、沢村との会話を増やしていく。勿論、関西人らしく笑いも忘れない。僕は仁志君をいじり倒した。ちなみに、浜内は理香、沢村は未唯(みい)という名前だった。未唯は名古屋在住、理香は岐阜在住とのことだった。


 それから、自然な流れで僕は未唯とマン・ツー・マンで会話するように場の雰囲気を誘導した。未唯と話せるのが楽しい。パッと見た感じキツイ印象を受けるが、話してみると、思っていたよりも話しやすかった。未唯には彼氏がいた。だが、そこで僕は“彼氏と別れさせて、僕が未唯と付き合ってやる!”宣言をした。


 理香は、仁志君のつまらない話に付き合ってくれていた。理香は彼氏がいないらしい。仁志君は初めての彼女を作りたいのだから、OKしてくれやすそうな理香にアタックすればいいと思った。


 解散時、僕達はみんなで連絡先を交換した。


 女の子達を駅まで見送り、姿が見えなくなったところで仁志君が言った。


「俺、沢村さんがいい」

「意外やな、僕は付き合ってくれそうな浜内さんを狙うと思ってたわ」

「沢村さんがいい」

「沢村さん、彼氏いるねんで。まず別れさせなアカンのやで」

「沢村さんがいい」

「浜内さんにしとけって、多分、付き合ってくれるから」

「沢村さんがいい」

「そうか、ほな、仁志君も沢村さんの連絡先を知ってるんやからアタックすれば?」

「沢村さんがいい」

「言うとくけど、今回は譲らへんで」



 それから、僕は未唯と毎晩電話をして、2週間後に初デートすることになった。そこで、彼氏とは別れてもらうことになり、1ヶ月後、僕は未唯と真面目に付き合うことになった。



 仁志君は、未唯に1度だけ電話したらしい。だが、つまらないので未唯がスグに電話を切ったとのことだった。困った仁志君は理香と2回電話してデートに誘うことは出来たが、付き合うところまでには至らなかったらしい。未唯と真面目に付き合うことになったので、もうナンパは出来なくなった。仁志君がその後も1人でナンパを頑張ったのか? 僕は知らない。



 それにしても不思議だった。未唯は美人系で理香はカワイイ系。理香では満足できないのが不思議だった。仁志君がランチに行って来た女性と比べたら、(僕的には)理香の方が遙かにかわいかったと思う。仁志君が声をかけていた連中よりも、理香の方がかわいかったのだ。何故、もっと理香に積極的になれなかったのだろう?







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