転生アルバイト 転生者と神と日常と異世界と万能チートと理不尽 

@shirokeza

第1話 ツンデレ神様

 「私は神、クラウディエル=ワイズマンよ!ゆうと! あんたは日本での不慮の事故に  よって命を落として死んでしまったわ!」


 何か知らない女?が俺の前に立っているんだけど。


 いきなりなんだよ?


 不審者か?


 「だからあんたは今から数多の世界を救うのよ!これから魔術が存在する異世界転生及び転移その他諸々の準備をするから!」


 何?

 

 異世界転生? 魔術? 転移?


 馬鹿も休み休み言えよ。


 「おいちょっと」


 「質問は今は無し! べ、別に意地悪とかじゃないから! 勘違いしないでよね!?」


 なんて無茶苦茶なんだ。


 これは夢か何かか?


 俺は頬をつねる。

 

 ……現実かよ。


 いやおかしいぞ?


 確か俺は先ほどまで学校の帰り道を歩いていたはず。


 それなのになぜか今この謎の空間で見知らぬ自称神を名乗るツンデレ風の女に死んだとか転生しろとかあまりにも荒唐無稽な事を宣告されている。


 じゃあこれは夢じゃん。


 俺は馬鹿馬鹿しくなり頬をもう一度今度は本気でつねる


 ……現実か。


 じゃあこいつはなんなの?、


 痛いオタク?


 そういうのはノリは他でしてくれよ。


 ここでそれは寒いぞ?


 とりあえず何か言っておくか。


 「嫌だ。」

  

 「なんでよ!?」


 「いやなぜとか言われても。いきなりあんたから死んだんで異世界行けとか言われても理解が追い付かない。」 


 「追い付く必要があるわけ? どうせ世の中そんな事ばかりなのに? それに関して何かある? ないわね? ならさっそく異世界に」


 いやそんな世の中の真実を突いた風の返しとごり押しされてそうですねって理解できるほど俺の頭は柔軟ではない。


 「いや世の中はそうでも俺は納得できないよ。」


 「ならどうしろと?」


 「何か証拠を見せてほしい。本当に魔術とやらがあるのかどうか。」


 見せられないんだろ?


 どうせこんなのは頭のおかしい女の戯言とか茶番に決まってる。


 嘘だとわかった瞬間通報してやるよ。


 「はい。私弱いからこんなのしかできないけど」


 目の前の女は小さな火の玉を手から出した。


 なるほど、これは本物だな。


 


 




 「わかった。ならどうして俺がその異世界転生をしなければならないのかの最低限の説明を頼む。」


 異世界転生の知識はアニメ視聴とかで一応あるので、俺は本当に死んだのかとか本当にお前は神様なのとかなんでツンデレとか細かい理由はこの際どうでもいい。

  

 魔術を見せられた以上ここは一応信用する。


 だからまずは簡単な理由を説明してくれるのであればこいつの言い分を聞いてやらん事こともない。


 かなり無理矢理なのはわかっているがこういう事に一々つっこんでいたら話が進まないと思うし。


 「さっき全部言ったわよね?」


 あれが?

  

 ふざけすぎだろ。


 「ちゃんと説明しろ。世界を救ってほしいのはわかるけど知りたいのはなぜ俺がという理由のほうよ。」


 俺がそれに選ばれた簡単な解説が欲しいのよ。


 自分の中でアニメの知識あるんだしその辺はなんとなくで良くないか?と言う考えも浮かんだが、そこに関しては必ず理由があると思われるのでしっかりと聞いておきたい。


 「どうしてよ? さっきの説明でわからないわけ!?」


 「いや目的だけ話されても納得ができないのよ。俺が選ばれた理由を知りたい。」


 「はあ……あんたは死者達の中でも飛び抜けて異世界適性という物が高いから選ばれたの! これで良い!?」


 最初からそう言ってくれよ。


 「あんたは俺に異世界適性とやらが高いから転生して数多の世界を救って欲しいと。そういう事でいいんだな?」


 「そうよ!」


 正直異世界適性ってなんだよとか色々言いたいけどそこを突き詰めたらめんどくさい事になりそうだからいいや。







 「じゃあ早速あんたには不相応だろうけど転生特典としてチート能力を一つ……」


 はい来ました転生者のあるあるとして皆さんご存じのチート能力。


 転生者が異世界に行くにあたりそいつが向こうの世界に置いていかれないように神様が転生者に授けてくれる特別な力。


 その能力は様々で空を飛べるとか、知識を増やすとか、炎を出すなど数多く存在するやつ。


 でこういうのは大体転生者一人につきチート能力は一個なのでそこは慎重に考えなければならない。


 神様は世界を救えと言って来たのでここは戦闘に特化したものを選ばないと後々に影響してくるだろうな。


 よしならここは……


 「なら俺は「だけ与えようと思ったんだけど昨今は世界に仇なす敵が強すぎる為、ゆうとにはチート能力を全て差し上げるわ! か、勘違いしないでよね!? これは別に心配だからとかじゃなくてあんたに押し付けるだけなんだから!」


 え?

  

 「全て能力ってどういう事? というか敵が強すぎるって何?」


 「そのままの意味よ! それくらい解りなさいよ!」


 またそれかよ。


 しっかり説明してくれって。


 ツンデレは勢いでなんとかなるというのは理解しているけど重要な所でそういうのは駄目だからな。


 「はあ……とりあえず俺に与えられる能力は万能の魔術という事でいいんだな?」

 

 とりあえずわかるところは省く。


 細かく一つ一つ聞いていったら謎が増え続けて首が回らなくなるというのがオチだろうし。


 「そうよ! 全く……ご飯が瞬時に温められたり、扉を手を使わずに開けられたりとか聞いたらそのくらい一回で解るでしょ?」


 それを何の助けなく一人で出来るのはすごいけど例えがショボいよ。


 まあとにかく万能という事で相違ないと。


 「オーケー。で? その敵が強すぎるというのは? 簡単に分かりやすく説明を頼む。」


 こう言わないとそのままの意味だとか言われてまた質問するとかいういたちごっこになりかねないし。


 「それもしないと駄目なの!? 仕方ないわね……とりあえずこっちの調査で簡単にわかっている事だけになるけどいい? 文句は言わせないわよ?」


 「構わない。」


 「じゃあ簡単に言うわよ? えーとある世界では謎の勢力が魔王と勇者を滅ぼしたり」


 あるあるだな。


 「ある世界では神に匹敵する剣の達人達が謎の勢力にあっさりと破れたり」


 普通だな。


 「またある世界では神の力を持つ存在が出現したりとかね!」


 もうそういうは余裕だって。 


 「他にもあるけどとりあえず今はこれだけね。どれも他の転生者は救済に失敗。ちゃんと聞いてた? もう二度は言わないわよ?」


 聞いたよ。


 全くどれもこれもありきたりすぎてつまらな…… 

 

 え?


 ハードじゃない?

  

 何か思ってたのと違うんだけど。


 「……ちなみにだけどさ? この件を神様が何とかしようとかないの?」 


 アニメとかで神には守るべき秩序とかがあるとか見た事あるけどこいつら相手にそんな事は言ってられないでしょ?


 「そんな事を聞いてどうするわけ?」


 「いやどうなのかなって気になったのよ。」


 何か下界の様子見ながら笑っているイメージがあるんだけど。

 

 流石に偏見か?


 「ったく仕方ないわね! 負けたわよ! 完膚なきまでにね!」


 「え。」


 これもしかして俺が思っている以上に状況は最悪なのか?


 だってチート能力の元の神様が負けているんだよ?


 ここで俺がしゃしゃり出る意味あるの?


 「じゃあどうするんだよ? そんな相手に人間である俺がチート能力持ってても敵うわけ……」


 「勝てるわよ!」


 「何で?」


 「あんたに与えるのは文字通り全ての能力だから!! 私達の神々の力なんて比較にならないから!」


 そんなものを不用意に人間に与えたら今度は俺がとかいう考えはないのか?


 ……まあその辺もいいや。


 「そうなのか?」


 「そうよ!! 他の転生者はこれと適合しないからこの方法を使えないんだけど、適性の高いあんたならこの力を上手く扱う事ができるから!」


 何で俺にそんな力があるのかとか聞くのも面倒な感じだよな。


 「ここまで聞いておいて今さら弱音なんて吐くんじゃないわよ!」 


 「弱音吐く吐かない以前にまだちゃんと行くとは行ってな……」


 「ごちゃごちゃうるさい! 黙って異世界に行く! 能力付与! 転移!」


 瞬間俺の体が光輝く。


 おいこれもしかしてこのまま異世界にいくんじゃねーの?


 てかチート能力付与とか言ったぞこいつ?


 「おいふざけんな。勝手に決めるなよ。」


 「男何だからこういう時くらいどっしり構えなさいよ!」


 そういう事言うんだ?


 そっちがそう言うならこちらも酷いことを言うぞ?


 「何がどっしり構えろだ。お前は見てるだけなのに。」


 アニメとかだと神様はここでチート能力渡してこのまま傍観者に徹するのが基本だし。


 もうこのまま出番終了ってやつ。


 「なっ!?」


 神の顔が真っ赤であった。


 どうやら効いているようだな。


 もうこの際だ。


 どうせ行くことは曲げられないのならここは諦めてその世界の救済とやらに参加する覚悟を一応決めてやるよ。


 代わりに今ここで色々溜まりに溜まった不満をぶちまけてやる。


 「悔しかったら異世界の旅にちょっとでもついてきてみろ。」


 神の表情に青筋が出ていた。


 女の子にこんな事を言うのは気が引けるが仕方ない。


 ムカついたから。


 「へえ……? じゃあちょっと違うかもだけどもし仮にあんたの旅に私がサポートという形で声だけ同行するという事になったらどうするわけ?」


 何か妙な事を言ってきたがどうせ例え話だろうな。


 「そうだな……仮にもしできたならお前からの罵倒でも何でも受け入れてやるよ? まあ出来たらの話だけどな?」


 多分もう二度と顔を合わせることはないだろうから適当に言って大丈夫だろうよ。

 

 「言ったわね? その言葉忘れ」


 瞬間俺はその場から移動した。

 


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