RE:仁志君【3部作2】

崔 梨遙(再)

1話完結:1300字

 仁志君とコンビを組んでナンパをするのも、これで何回目だろう? 困ったことに、仁志君は僕も楽しんでいると思っていたようだ。仁志君を立てて、仁志君を盛り上げるナンパ、おもしろいわけがない。しかも、仁志君は結果をだせない。僕は、立てるのも押すのも盛り上げるのもバカバカしくなっていた。


 だから決めた。“僕もナンパを楽しもう”と。


 部隊はまた名古屋。付き合い始めてからのことを考えたら、名古屋に住んでいる仁志君の家の近くの方がいいのだ。この時点で、ぼくは不満を持ち始めていた。僕が成功したときは、遠距離とまでは言わないが中距離恋愛になる。



 だが、その日の僕は張り切っていた。自分のためのナンパだ。モチベーションが違う。11時から始めたナンパ、1時には美人2人組をゲットしていた。お互い、ランチがまだだったので、ランチを楽しむことになった。店は、仁志君が調べていた。



 女性陣は164センチの万里子と、152センチの千里。万里子は髪を肩から上で揃えていた。千里はショートカットだった。どちらもスレンダー。どちらも美人だった。どちらがより一層美人か? これは好みによるだろう。僕は万里子がストライクゾーンのど真ん中だった。僕はその時、仁志君も万里子狙いだと思っていた。


 遅めのランチの後で、ちょっとカラオケ。ちょっとだけ飲んだ。それから夕食。夕食のレストランも、仁志君が調べていた。


 酒が入ると一気に盛り上がった。 というか、盛り上げていたのは僕なのだが、仁志君も邪魔にならない程度に会話に入ってくれた。


 そして、みんなで連絡先を交換した。その日は土曜日だったので、翌日の日曜日に早速デート出来るかもしれない。


 彼女達を見送って、僕と仁志君は同時にため息をついた。


「仁志君も、万里子さん狙いやろ?」

「ちゃうで、千里さん狙いや」

「そうやったんか、ほな、お互いに気を遣わずに攻めれるなぁ」

「良かった、崔君も千里さん狙いやと思ってた」

「ほな、明日、お互いにデートに誘おうや!」



 で、翌日。万里子と千里は三重に住んでいた。僕は万里子を大阪に呼んで水族館を楽しんだ。相手が自分の好みの相手だと、普段の力の2倍くらい出せるものだ。僕は、ずっと万里子を笑わせ続けた。


 そして夕食、コーヒータイム。


「これ、良かったら」


 僕はポケットから小箱を出した。


「シルバーのネックレス? キラキラしててかわいいなぁ」

「カットしてあるから、キラキラして見えるねん」

「うわぁ、ありがとう」

「同じデザインのゴールドもあったんやけど、ゴールドの方が良かった?」

「ううん、これがいい。気に入った」

「でも、着てる服によってつけ変えられた方がええと思うねん」

「そうかなぁ」

「だから、はい、これ」

「何、これ? うわぁ、同じデザインのゴールドや」

「トップが割と大きいし、アクセントにはなると思うで」

「2つともくれるの?」

「うん、受け取ってや、僕の想いとともに」

「想い?」

「うん、万里子さん、僕と付き合ってや」

「うん……ええよ」



 僕が内心でガッツポーズをとっていた時、仁志君は玉砕していた。







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