世界創造

ネムキ

第0話

『人間族』

彼らは幸せのみを求めて暮らしている。数が少なく、小さな街を作って平和に過ごしている。その上、彼らは神に愛されていた。背中に《聖紋》と呼ばれる紋様があり、神から『ギフト』が与えられている。それは超人的で、在る者は死者すら蘇生させ、在る者は世界をも破壊できる力を持っていた。数こそ少ないが互いに助け合いながらその力を振るうことがないように願いながら、ひっそりと暮らしていた。だが、他種族、特に竜人族は世界1番の地位にいることを許さなかった。そして、この世から一人残らず人間族を殺し、滅ぼした…………と思っている。たった1人の人間を逃がしてしまっていたことに気が付かかずに。それこそが、他種族の最大のミスでもある。


『竜人族』

彼らはとにかく1番になりたかった。何に対しても。力でも、知力でも、全て1番でないと気が済まないようだ。だからこそ、神に愛され、巨大な力を持っていた人間族が邪魔だった。人間族さえいなければ自分達が1番になれると思っていたから。『スキル』も貴重なものが多く、自分達こそが世界を支配するべきだと思っていた。だが、人間族は強すぎた。彼らだけでは滅ぼせない。悔しいが、他の種族の手も借りようと、脅し、騙して仲間に加え、人間族を滅ぼした。そして、脅威であった各種族の王たちに、忠誠を誓わせた。もちろん、《契約》済みだ。これによって、事実上、竜人族は世界を支配した。


『魔人族』

彼らはとにかく臆病だった。魔力はどの種族よりも多く、魔法の威力も凄まじいものだった。だが、自分達に自信を持てずにいた。理由は、簡単。『スキル』が魔力に比べて攻撃性の無いものばかりだったから。もともとの性根が優しい魔人族。それが『スキル』に反映され、結果、他種族に侵略されないようにと臆病になったのだ。もちろん、『スキル』なしでの単純な魔法技術のみの闘いなら竜人族にも負けないだろう。だが、『スキル』が絡むと別だ。稀に攻撃性の高い『スキル』を持つ者が産まれるが、他の都から守るために魔力自体を封印することが暗黙の決まりとなっていた。


『森人族』

彼女らは自身の森であったことを把握する能力を神樹より授かっている。だから、神樹を護りに、崇めている。彼女らの『スキル』は護りに特化したものが多い。故に、神樹だけは命懸けで護ると自らに《制約》をかけている。争い事は嫌いで、静かに暮らしていたいと思っている。だが、竜人族から『人間族が神樹を破壊しようとしている』と聞き、激怒し、戦争に参加してしまった。これが運命の分岐点。もし、参加していなければ別の道もあっただろうに………しかし、彼女らは選択してしまった。誤った道を。後にそれを理解し、後悔しながら…………


『獣人族』

彼らはとにかく力が全て。強いヤツに従うのみ。そのため、竜人族からの提案には『力を持って従わせてみろ』と言い、そして負け、戦争に参加した。当時の獣王は『負けは負けだ。好きなようにするが良い』と潔く軍門に下ったようだ。良くも悪くも脳筋の集まりなのだ。そこから、何年かに1度竜王と獣王が闘い、今でも竜王が勝っていて、『強いヤツに従え』という教訓によって竜人族に支配されたままだ。だが、それすら不便に思っておらず、ただ自らの力をより強くすることしか考えていない。


『魚人族』

彼らは海を大切にしている。詳しく言えば海の中にある神殿、その奥に眠る《リヴァイアルト》と呼ばれる宝珠を大事にしている。海の中では流石の竜人でも魚人には勝てず、宝珠のことは魚人族以外誰も知らない……はずだった。だが、どこから仕入れてきたのか、竜人族は宝珠のことを知っていた。そして、『人間族が宝珠を狙っている。更なる力の底上げをするために』と魚人族をそそのかし、戦争に参加させた。水のある所では無類の強さを誇る魚人族。水は、生活に必要なものだから人間族の街の近くにも川があった。そこから奇襲をかけ、【人間族vs他種族】の戦争が始まった。


『吸血鬼族』

彼らは人間族を神と見据え、崇めている。理由は、より強き者の血が美味しいから。神にまで愛される人間族の血は吸血鬼族からしたら最大のご馳走。だからこそ、神と崇めていた。吸血鬼族は血を飲まずとも生きてはいける。だが、血を飲むことによってより力を得ることができる。ある日、竜人族によって戦争が起こった。だが、吸血鬼族は戦争には反対的だった。そもそも、自分達に戦争に参加する理由がないと断っていた。だがある日、吸血鬼族の力の源である《水血晶》が【真祖】の側近の手によって竜人族へと渡ってしまった。側近は竜人族に操られていたのだ。だが、【真祖】は自らを責め、傷つけ、悲しみに暮れた。それを表すかのように、吸血鬼族の都には常に分厚い雲がかかるようになった。それは、弱った吸血鬼族全体を守るものでもあった。そして、戦争から1000年ほどたったある日、【真祖】以外には感じ取れないであろう程の弱いものだったが、人間族の血の匂いがした。確かめるべく、【真祖】自ら旅へと出た。

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