かぶる幽霊

天川裕司

かぶる幽霊

タイトル:かぶる幽霊


都内の或るひとけのない公園で、

幽霊が出ると噂の公衆トイレがあった。


まぁよくある怪談の1つで、

トイレに入ってると上から視線を感じる。

ふと見上げてみればそこから恐ろしい顔をした女が

ずっと見ていた、みたいな。


俺は大学の妖怪研究会に入っていて、

みんなでいちどそれを見に行こうとなった。

でもただ見るのでは面白くないからと、

スポットライトなんかを用意しながら、

少し演出をしてみようみたいな感じにはなっていた。


でもそんな感じにすれば出ないんじゃないか?

なんて疑問もあったが、出た。


(トイレの上からずっと眺める女)


「ほんとに出た、やっぱり居たんだ」

するとその直後、便器の中から水が湧き上がり、

それが人の姿になって…


別の幽霊「私は昨日、あなたに助けていただいたトイレの流し用の水です。恩返しをするた……」


上から覗く幽霊「……」


流し用の水の幽霊「…なんであんたが出てきてんの?今私が出てるんだからあんた引っ込んでよ」


上から覗く幽霊「…いや、私の方が先でしょ?アンタが引っ込みなよ。どんだけ待ってたと思ってんの?ここで透明になって」


流し用の水の幽霊「ふざけんじゃないわよ。私の方がここで誰か来るまでずっと窮屈な便器の中で待ってたんだからね!」


上から覗く幽霊「アンタこそふざけんじゃないわよ!知名度から言っても私の方が上でしょ!アンタなんかマイナーなんだから居ても居なくても同じなの!とっとと引っ込みなさいよ!」(遮るように流し用の水の幽霊が怒鳴る)


流し用の水の幽霊「ちょっとなにこれ!普通かぶる!?こんなことって!」


「…こんなことってあるんだ」

我ら妖怪研究会の皆は、その後ずっと

延々文句の言い合いをしていた2人の幽霊を

見せつけられることになってしまった。


「にしてもめっちゃよくしゃべるなこの2人…」


結局、最後は2人とも「フン!」といった感じにそっぽを向きあい、


流し用の水の幽霊「今度はちゃんと出てくるからね!今日はあのバカのおかげで台無しになっちゃったけど!」


上から覗く幽霊「ふざけんじゃないわよ!アンタの方が台無しよ!ごめんね今度はちゃんと出るから!」


そんな感じのことを言って消え去った。

とりあえず隠し撮りをしていたのだが

2人の姿はやっぱり見えなかった。


だから証拠の品を用意する事はできなかったけど、

その時それなりの人数で見ていたのもあり、

証言者も居てくれたので、その話は大学中の噂になっていった。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=5LQp-lb-qDs

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かぶる幽霊 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ