第105話 談笑

「やっぱり、あのシーン熱いよな!」

「やっぱ、熱いっすよね!いやぁ思わず声出ちゃったっっすよ!」


 たかしがスーパーロボット系のアニメにハマった。

 今までは年代的にも話す相手もいなくて、こっそり隠れるように見ていたのだが、最近は同じアニメを見て、その話で二人で盛り上がる事も多くなった。


「うるせぇぞお前ら!」

 白銀に怒られた。


 毎回人数こそは違うけど、必ず経験値になる探索者がいる。

 お姉さんが、どんなパーティか調べてくれて、評判が悪い事を説明して、少しでも俺たちの罪悪感を減らすようにしてくれているが…。


 裏稼業で始末する奴らから比べると、殺されても仕方がないランクが低い。


 そこまでしなくてもって思うパーティも正直いる。


 そうなると、どうしても気持ちが落ちてしまうんだけど、こうやってアニメの話をしているとそれも少し紛れるんだよね。


「レベル上げは今日で終わりだ、1週間準備期間を設けて、その後は樹海ダンジョンだ」


 AAダンジョンのラスボスを倒した後にそう宣言された。


 ついに『樹海ダンジョン』にアタックすることになる。


 日本にある唯一のSSSダンジョン。


 その最大の特徴は方向感覚の喪失と異常なまでのランダム性だ。

 状態異常の一種と言われているが、樹海ダンジョンに入るとまず最初に出口が分からなくなる。

 1歩入っただけなんだから、そのまま一歩後ろに下がれば良いだけなのにそれが出来なくなる。


 紐か何かをダンジョンの外でだけかに持っていてもらって、中に入ればそれを辿って帰ることは出来るが、その方法では何階も下に降りる事は出来ない。


 加えて、ランダム性が異常に高い。

 入るたびに迷宮の形状が変わるのは当たり前で、モンスターも何がどのくらい出るかわからない。

 もれなく強いのだけは分かっているけど。


 解散後、最近は恒例になってるウサギ小屋へ向かう。

「1週間で何か出来る事ありますかねぇ」

「うーんレベル上げは?」


「正直、あんまり意味ないかなって思って」

「レベル差は埋まったんでしょ?」


「ウチはかなりレベル上がってるけど、あいつら全然レベル上がってないから差は埋まってはいるけど……」

「いるけど?」


「ウチがガンガン上がってるのに向こうは上がらないって事は、もうあの程度じゃ上がらないくらいレベルが高いって事だから……」

「確かにそうね」


「今更1週間レベル上げしても、かなり難しいかなって思って」

「君は何か考えがあるの?」


「考えっていうか俺のスキルで未覚醒のスキルがあって、それを覚醒出来ればちょっと可能性上がるかな思ってて」

「でも、未覚醒じゃどんなスキルなのか分からないんでしょ?」


「そうなんだけど、ノバがモイララビットってのになったんだけど、モイラって三姉妹女神の総称みたいなやつで、その逸話に出てくる物とスキル名が被っていて」

「なんて名前なの?」


「無常の果実」


「テュポーンを無力化したやつね」

 お姉さんも知ってた。


 かなりマイナーな内容だと思ってたけど、そうでも無いのかな?


「はい」

「確かに可能性に賭けるだけの価値はありそうね……一人、それを覚醒させる可能性のある人がいるわ」


「会いたい!」

「出来るかどうか分からないし、出来たとしても協力してくれるか分からないわよ」


「そう言われると、ちょっと怯んでしまう……。

 無難にレベル上げか、一か八かの覚醒か……」


「どうする?決めれないなら、コインの裏表で決める?」


「いえ、覚醒に賭けます」

「相変わらず即断即決なのね」


「考えても分からない事を考えても仕方がないので、自分がしたい方をします」


「分かったわ、じゃあ手配するから、明日会いに行ってちょうだい。

 他のメンバーはレベル上げの段取りするわね」


「お願いします!」

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