第91話 徘徊

「これって、精神的な監禁だよなぁ」


 うさぎダンジョンの後はやっぱり施設に連れてこられた。

 男女で別の棟に分かれているので、他のメンバーに会うこともない。


 特に出入りを禁止されているわけじゃ無いけど、女性専用棟とか書かれたら行きづらいよね。


 ネットは見るのは許可されたけど相変わらず書き込みは出来ない。

 一応、外出は自由なんだけど、申請出さないとダメなんだよなぁ。


 特に門番がいるわけじゃないから、無許可で出歩いても何も言われないけどね。


 とりあえず、する事が無いと寝るくらいしか無い。


 ー20時ー


 職員もみんな帰って、電気も消されて雰囲気だけで言うなら深夜みたいになってる。


「コロ」

 うちの新戦力コロを装備する。


 前回の戦いで一気にレベルアップして、いくつか面白い能力を獲得してる。

 そのほとんどが装備中スキルなんだよね。


「光学迷彩発動」

 その中のスキルを一つ発動する。

 その名の通り、俺の姿が消すことの出来る効果だ。


 俺自身に隠密行動のスキルないから、分かる人にはバレるんだろうけど、ここから抜け出すくらいなら充分に役にたつ。


「さてっと、情報収集から考えないとなぁ」


「まいど!」

「うわぁ!びっくりした!びっくりした!びっくりした!」

 いきなり後ろから恵ちゃんに声かけられた。


「お兄さん何しようとしてるん?」

「うーん、探索者狩り?」


「あかんやん」

「とりあえず、お行儀の悪い探索者の情報って手に入らないかな」


「ウチもついて行って良いならなんとかなると思うで」

「うーん、しょうがないかぁ」


「しょうがないって、こんな可愛い子つかまえて失礼やな」

 言葉と裏腹に恵ちゃんはニコニコしながら腕にしがみついてきた。


 恵ちゃんの強めのスキンシップに慣れてきてる自分がいるな。


「とりあえず、お行儀の悪い探索者のいるダンジョンにいきたいんだよね、なんとかなる?」

「なんとかなると思うねんけど、どのくらいの悪さなん?」


「うーん、殺されてもしょうがないよねってくらいかな」

「そこまでの奴はそんなにおらんから、すぐ見つけられると思う」


「じゃあ、お願いしようかな」

「任しときぃ」


「…事情聞いたり反対したりしないんだね」

「お兄さんがこうやって動くには理由があるって思うてるから。

 ウチは信用も信頼もマックスでしてるんやで」


「それはちょっと嬉しいなぁ」

「ちょっとなんて言わんで、いっぱい嬉しいがってぇ」


 ーとあるダンジョン内ー


「ハズレかぁ」

 お行儀の悪い探索者をしばらく観察していた俺は、そう独りごちた。


「ハズレなん?」

「うん、今日はハズレっぽいね」


「明日もダンジョン巡りするん?」

「うん、そのつもり」


「じゃあ、明日もデートやな」

「そんな良いもんじゃないけどね」


 今回俺が、マークしている探索者は、ほぼ犯罪者かモロ犯罪者な奴らばかりだ。

 そういう奴が何か行動する時は人目がつかない場所になる。


 それに最適な場所が管理が杜撰なダンジョンで、時間が一般的な探索者が居なくなる夜となる。


 それでも、毎日犯罪やそれに近いことをしているわけもなく、ほとんんどは普通にダンジョン探索しているだけの方が多い。


 なので、正確な情報が無いと素行不良の探索者と普通の探索者の見極めは難しい。



 そうすると、どういう事が起こるかというと…。


 こうなる。


「健二!待て!やめろ!ストップだ!」

 俺が全力で健二を止めた。


「あ、兄貴ぃ、助かったぁ」

 相手は芋掘りダンジョンの無能戦士…じゃなかった、魔法戦士のたかしだ。


 ここは協会が管理し切れずに放置されているダンジョン。

 通称、廃棄ダンジョンのひとつだ。


「こいつは性格も悪いし、素行も悪い、口も悪いし、見た目も悪いが殺すほどじゃ無いぞ」

「ひどい言われよう」

「うるさい、命助けてやっただけでもありがたいと思え!」


 とにかく、今にもたかしを殺そうする健二をなだめる。


「多分、コイツと間違えたんやと思うで」

 そう言って、恵ちゃんがスマホの画像を見せてくれる。


 そこには、たかしと似ても似つかない男が写っていたが、パーソナルデータのところに魔法戦士とある。


 装備もなんとなく見た目が似てる。


「健二、探索者狩りは今日でやめろ、お前はこっち側にきちゃダメだ」

「…」

 口をかたく結んで頷かない健二がそこに居た。


【後書き】

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