第73話 試練の洞窟 1
試練の洞窟は浅草寺の中に現れたダンジョンだ。
そこのお堂がダンジョン化されてしまっている。
「ねぇ、あの2人ってどうなの?」
試練の洞窟への道中、恵ちゃんに聞いてみる。
「せやな、単純な脳筋でなんも考えとらんタイプやな、相手騙したり嵌めたり出来んタイプやから、裏考えんでええって部分は楽やで」
「ショートボブのアマゾネスの方は頭良さそうだけど?」
「見た目だけや、あっちも中身脳筋やで」
そんな話をしながら、お堂の中へと入っていく。
洞窟と言われるだけあって、中に入ると鍾乳洞のような風景が広がる。
「はっはぁ、おるわ!」
俺っ子アマゾネスが好戦的な表情で嗤う。
「あの人たちは、なんなんですか?」
「あなた達を勧誘しようと待ち構えて居る人たちですね」
ショートボブのアマゾネスが教えてくれた。
「何故あんなにいるんだろう?」
「私達が情報をリークしたからですね」
え…このアマゾネス、今さらっととんでも無いこと言わなかった?
「あのう、つかぬ事を伺いますが、何故そんな事を?」
「散発的に来られても処理が面倒なんで、ここに集めて1回で終わらそうって話になったんです。
これが噂になれば次から誰も来ないでしょうし」
「探索者同士の乱闘ってダメじゃ無かったでしたっけ?」
「あー、今回は俺ら、鎮圧許可証発行してもろてるからな!お前といる間は何しても大丈夫や」
俺っ子アマゾネスの方が自慢げに答える。
「何してもじゃありません、暴徒化する可能性がある者、こちらの勧告に応じない者に対して、不測な事態回避のための緊急措置が認められているだけです」
俺っ子アマゾネスの無茶苦茶な論理にショートボブアマゾネスから訂正が入った。
なるほど、脳筋だ。
面倒だからと言って、武力制圧する為に情報リークするとか、正気の沙汰じゃない。
鬼だこいつら。
俺鬼とニコ鬼って呼ぼう。
そうだそうしよう。
いや、訂正、心の中だけで呼ぼう。
なんか、今一瞬寒化がしたような気がするから。
「えーっと、この被害者的な人たちは、その緊急措置的な何かでこれからどうにかなるんですか?」
「まぁ、それはこいつらのこれからの行動しだいやな」
そういうとズカズカと集団の中に入っていく。
特に武器とか持ってないから、いきなり乱闘にならないと思うけど。
…
…
…
怒鳴り声が聞こえたかと思ったら、いきなり殴ったよ…。
…嘘でしょ。
あっという間に乱闘になった。
「こいつら皆んなお前らの勧誘に来てた奴らやな、帰れって言っても帰らんから、とりあえず動けなくしといた。
めんどうやから全員殺そうかなって思ったんやけど、流石にこの許可証じゃダメらしいからな」
数十人という探索者をあっという間に蹴散らして、そう言う鬼。
生まれて初めてリアルの死屍累々を見た。
「この人にマーダーライセンス渡したら、日本から探索者が消えるな」
心の底からの感想だ。
「なんやて!お前らの為にやってんだろうがぁ!」
しまったー!心の声が口に出てたぁ!
「すいません!すいません!ありがとうございます!」
直角90度で最敬礼で感謝の念を伝える。
実際俺がどう思ってるかは、この際心の棚にしまっておこう。
「分かればええんよ、分かれば」
「はい!いつも感謝の心を忘れずに!」
鬼の牙が俺に向かないように!
心の声が漏れないように!
「ほな、行くぞ」
「え!あれ放っておいて良いんですか?」
「ん?協会の奴らがなんとかするやろう、調子こきどもが!ダンジョンの奥で見かけたらシバいたる!」
あぁ、これはシバいて無いんだ。
じゃあシバいたら、今度こそ死ぬんじゃ無いだろうか?
おれ鬼がわざとに聞こえる方に大声でそう吠えると、探索者達が僅かに反応を示した。
これだけ言われてダンジョンの奥まで付いてくる奴は居ないだろう。
こっわ、こっわ、絶対あいつらこの辺のダンジョン入れなくなるわ。
この人に理屈通用しそうに無いし。
万が一見つかったら人生終わりって、ヤバすぎるもんな。
「バカどもが姉さん挑発したのね…いきなり手を出してくる事ないって思ってたんでしょうね」
「普通は探索者同士の乱闘は訓練所でするもんじゃ無いんですか?」
「うちがSランクじゃない理由知ってる?」
「いえ、知らないです」
「上がれるだけの実績詰んでも、姉さんの暴走で全部無かったことになるからよ。
あの人は許可証なくても挑発されたり、喧嘩売られたら、普通に手が出るわよ」
「それて注意とかしないんですか?」
「姉さんが手を出さなかったら私が出すからね」
とても良い笑顔でこう答えてくれた。
なるほど、中身同じだった。
決してこの人たちには逆らうまい、そう心に誓って試練の洞窟を降りて行った。
【後書き】
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