第43話 追及

「さてっと、色々聞きたいことがあるんだけど、とりあえず確認するけど、2人ともグルだよね?」


「グルって言われればそうね、同じ施設で育って実の姉妹と思うくらいには仲良いわよ」


「恵ちゃんがS級なのに俺と一緒に行動するのはお姉さんの指示ですか?」

 お姉さんが恵ちゃんをキッと睨んだ。

 恵ちゃんはあちゃーって顔してる。


「なんでバラしたの?ダメって言ったじゃない!」

「せやかて、認識阻害も認識誤認も効いてないなんて思わないやん、勇者かてそんな事出来んかったんやで」


「効いてないの!?」

 鳩が豆鉄砲を食ったようってこういうのを言うんだろうな。


「みたいですね。恵ちゃんだなって思って見てたら、戦乙女の人は恵比寿って言うから、あれーって思ってました」


「何故?」


「それはぜんっっっぜん分かりません」


「な、これじゃあ仕方がないと思わへん?バーサーカーどもも来とったし、緊急やってん」


「それじゃあ仕方がないわね」


「で、2人は何が目的なの?」


「協力者が欲しかったの、それも常識から外れたイレギュラーな存在の協力者が」


「でも、俺最弱のテイマーですよ


「私もそう思っていたわ、ボスをテイムして戻って来るまではね」


「あれってそんな凄い事なんですか?」


「50年間、絶対あり得ないって言われていたことを、常識で無いはずの事をあなたはやってのけたのよ。だから貴方には今までの常識では何も無いってなってるのに、明らかに他のダンジョンと異なっているダンジョンを紹介したの。貴方なら何か起きるかもって」


「恵ちゃんが俺のポーターになったのも仕組まれていたんですか?」


「元々はこっそり監視してってお願いしてたんだけど、俊くんがポーター欲しいって言うから、ちょうど良いなって思って」


「恵ちゃんの本当の職業はなんですか?」


「グリムリーパーね、世界でただ1人恵しか持ってないクラスよ」

 あ、恵は本名なんだ。


「で、俺を仲間にして何をさせたいんですか?」


「それ聞いたら、後戻り出来なくなるけど良いの?」


「…ちょっと、考えさせてください」


「うちはお兄さんと一緒に探索出来るだけでええんやで、お兄さん大好きやもん」


「お兄さんっていつも言うけど、俺より歳下ってあり得なく無いですか?」


「恵は14歳よ」


「え?あれ?探索者って16からしかなれないんじゃ?」


「その理由聞いても後戻り出来なくなると思うけど、聞いちゃう?聞いちゃう?」

 お姉さんがちょっと戯けてきた。


 目の前に近づいてきた顔がちょっとニヤついてる。

 なんかめっちゃ鼻摘みたくなった。


 コレくらいはしても文句言われる筋合いないな。


「いったーい!ちょっと!私が鼻の整形してたら大変な事になってたわよ!天然だから問題なかったけど!」


「すいません、なんか顔みてたらイラッとしたんで」


「あっそ!思いっきり摘まなくてもいいじゃ無い!」

「それで今後の事なんですが」

 とりあえず、無視して話進めよう。


「うち、一緒におったらダメなん?」

 いきなりガバって抱きついてきた。


「協力させるとか、そういうのが目的だとちょっとー」

 泣きそうな顔で下から見上げてくる恵ちゃん。


「なんでもするから、お兄さんが求めるならエッチな事だってするからぁ」

 半泣きで訴えかけてくる恵ちゃん。


「エッチな事は捕まるから勘弁して、むしろそれを理由で脅されそうだし、あれだよ決して恵ちゃんが魅力的じゃ無いとか、可愛く無いわけじゃないからね」

 こういうフォロー大事ってネットのエロ同人誌に載ってた。


「私としては協力して欲しいのは事実だけど、無理強いするつもりは無いわ。

 恵もこんなに人に執着するの初めてだから、そばに置いてあげて欲しいの」


「どうして恵ちゃんはそんなに俺に懐いてるの?」


「ウチが殺気撒き散らしたのに普通で居てくれて、そのまま一緒にいてくれた人初めてやねん」

「あぁ、それは俺に向けてないって分かってたのと、俺もちょっと壊れた感覚してるから」


「それでもや、それでもやねん!うちを受け入れてくれる人、初めてやねん」

 あれ、お姉さんが寂しい顔してる。


「私はね、怖がっちゃったの、この子の殺気で」


「うーん、よし!全部先送りして考えるの放棄しよう!

 考えても結論出ない事考えても無駄だから、とりあえず今まで通りで判断は全部先送りで」


「お兄さん大好き!」

 ずっと離れない恵ちゃんをよしよししながら、ハグされる事を喜んでいいのか悩んでしまう。

 今までは同い年だと思ってたからなぁ、コレ喜んだら通報案件じゃね?


 新たな悩みの種が出来てしまった。

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