伝説のうさぎ使いって何!?

山親爺大将

第1話 伝説の始まり

 ダンジョンというものが現実世界に現れてもう50年以上経った。


 現れた当初は混乱も起こったが、時の総理大臣中田角栄が日本改造論を打ち出し、ダンジョンを国有地として掌握し国の支援のもと、一般国民でも探索者資格さえ取ればダンジョンに挑めるようにした。


 さらに国策としてダンジョンでの拾得物の有効利用を研究して、世界初の魔石発電の開発に成功。


 日本はダンジョン資源大国で、なおかつダンジョン技術立国としての国際的地位を確立。


 未曾有の好景気により、高度成長期時代を迎えた。


 それから50数年、バブル崩壊での不景気なども経験しながらもダンジョン資源の活用で乗り越え、ますます探索者は日本の屋台骨を支える職業のひとつとなっていった。


 そんな時代に生まれた俺、神成俊輔(かんなりしゅんすけ)は16歳を迎えた。


 初期の探索者は成人しないとなれなかったが、年齢が高くなるほど成り手が少なくなる事を危惧した政府は、結婚できる年齢の18歳に有資格年齢を引き下げた。


 それにある女性議員が女性は16歳で結婚できるので、女性は16歳にまで下げろとかみついた。


 その後なんやかやあって、結局男女共に16歳で資格を得れるようになった。


「よっしゃ!探索者の資格取りにいこう!」

 休みの日を利用して資格を取ろうと家を出た。


 国の方針なので国公立の高校では在学中の探索者の資格修得は許可されている。

 私立は初期の頃は不許可だったらしいけど、許可した私立に生徒が殺到した事であっという間に許可されるようになった。

 いまや、不許可の高校って都市伝説並みに見当たらない。


 資格の修得も簡単だ。

 最寄りのダンジョンに行き、そこの職員さんから30分程度の講義を受けてそのままダンジョン1階にある黒い石板に触るだけだ。


 全てのダンジョンの共通として、1階はモンスターが出ない。


 なので、ダンジョン管理協会もダンジョン内の1階に設置されている。


 俺んちから1番近いダンジョンは廃校になった元小学校の飼育小屋のみがダンジョンになったSランクダンジョン。

 通称ウサギ小屋である。

 ちなみにSランクとは特殊という意味でSなだけであって、難易度や報酬などには一切関係ない。


 単純にAからGランクに分けるのが難しいというだけである。


 Aより上はA A(ダブル A)、 A A A(トリプル A)になっている。


 ダンジョンにある黒い石板に触れるとクラスというものが自分に与えられる。

 完全にランダムで何が与えられるかわからないけど、一部のクラス以外ならクラスチェンジで変えられるのであまり気にしなくても大丈夫。


 クラスチェンジ出来ない職業は勇者、聖女、精霊使いなどの大当たりクラスがほとんどである。


 唯一俺がなりたくないクラスチェンジ出来ない職業はテイマーだ。

 人気自体は高いのだけど、一般的には確定エンジョイ勢と言われている。


 なぜなら、テイムしたモンスターもパーティ数にカウントされてしまうため、人数制限による経験値の減少がすぐ起こってしまう。


 テイム出来るモンスターは自分が攻撃して屈服させた相手になるので、当然自分より弱い。


 即戦力にならないので数を揃えて物量作戦か時間をかけて育成するしかない。


 そんなんだから当然、他の人とパーティ組む時も敬遠されやすい。


 どうせならガチで攻略して、プロの探索者になりたい。


 テイマーで生活出来てる探索者って、『モフモフですぅ』とか『モンスターに〇〇して△△してみた」的な事を配信してる。

 配信者って呼ばれてる人ばかりだ。


 俺はああいうのにはなりたくない。


 しばらく歩いているとS級ダンジョン『俊足の野原』

 通称ウサギ小屋に到着した。


 外見は本当にウサギ小屋である。

 元は小学校の飼育小屋なんだから当然と言えば当然なんだけど。


 小屋の入り口にはちゃんと『俊足の野原ダンジョン』という看板が立っている。


 めっちゃくちゃ小さい看板だけど。


 周りには人の気配が全くない。


 それもそのはず、おそらく日本で最も人気のないダンジョンがこのウサギ小屋だからだ。

 このダンジョンはウサギ小屋と言われるだけあって、ラビット系(バニー系)のモンスターしか出ない。


 ダンジョンが出来始めた頃はゴブリが最弱と言われていたらしい、それが時代と共にダンジョンもあちこちで見つかり、スライムの方が弱いぞ!ってなったらしいんだけど、今はぶっちぎりでラビットが最弱モンスターとして君臨している。


 ここの序盤に出てくるホーンレスラビットなんて、ただのウサギと見分けつかないし。


 もちろん強いラビット系モンスターだっているのだけど、とにかくドロップ品がしょぼい。

 まず魔石が他のモンスターに比べて小さい。

 落とすドロップアイテムが肉か足か耳、稀に歯、どれも高額にならないものばかり。

 極め付けに経験値が低い、同じ程度のランクのモンスターの半分程度だ。


 そりゃあ、誰も来ないよね。


 俺みたいに新規で探索者になろうとしてる人でも縁起が悪いって言ってこないし。


 宝くじの売り場と同じ現象がクラス獲得でもあって。


 このダンジョンで勇者でました!

 とか

 あの有名探索者〇〇はこのダンジョンでクラス獲得しました!

 みたいな所に皆んな行く。


 こんなのランダムなんだからどこでクラス獲得しても一緒だと思うんだけどねぇ。


 なので俺は気にしないでウサギ小屋でクラス獲得することにした。


 完全に見た目ウサギ小屋な入り口をくぐると、そこには全く違う世界が広がっていた。


 直径で20mくらいで円形の白い壁に囲まれた野原と入り口近くのプレハブ小屋、その横には地下鉄の改札みたいなゲートとその先の壁には次の階に降りのであろう出入口。


 俺はそのプレハブに入っていく。

「こんにちわー、探索者になりたいんですがー」


 長机をカウンター代わりにしているプレハブ内の奥で、口開けてイビキをしながら寝てる茶髪のお姉さんに声をかけた。


 かなり長い髪を一本にまとめてポニーテール状にしてある。


 身長は160cmくらいで出るとこは出て、引っ込んでるとこは引っ込んでる、なかなかスタイルの良いタイプのスポーツインストラクターっぽい外見だ。


「すいませ〜ん」

 全然も起きないのでもう一回声をかける。


「ンガッ!何?」


「探索者になりたいんですけどー」


「あぁ、新人さんね。

 よくこんな所に来たわね?

 まぁ良いわ、これ読んでそこの石板触って」


「あれ?講習は良いんですか?」


「講習で教える事は全部テキストに載ってるから、読めば良いわよ。

 誰かに講習受けたか?って聞かれた時は受けましたって言ってくれればそれでOK!

 どうせ、誰も見てないんだし」

 このお姉さん適当すぎる。


「あ、はい」


「あー、そうそう、私はここの担当で講習の教官の浅井香賀里(あさいかがり)よろしくね」


「よろしくお願いします」


「じゃあ、そこの石板触ってこっちの機械でクラス確認するから、サクッと終わらせよ」


「あ、はい」

 完全にお姉さんのペースだが、コミュ障で友達もまともにいない、彼女いない歴が年齢と同じな俺にあらがうすべなどなかった。


 石板に触れると身体から光が溢れる。


「はい、じゃあこっち来てこの機械の上に手を置いて」

 お姉さんが小さいコピー機能付きのプリンターみたいな機械を長机の上に出していた。


 言われるままにコピー機(仮)の上部のガラス部分に手を置く。


 手がスキャンされると、下の方から1枚の紙が出てきた。


 神成俊輔 レベル1

 クラス: ラビットマスター

 強さ 6 物理的攻撃力

 器用 10 命中率

 素早さ11 回避率、移動速度

 知性 10 魔法的攻撃力

 耐久力8 HP基準値

 賢さ 7 MP基準値

 HP 8

 MP 7

 スキル ラビットテイム


 ???

 ラビットマスター?

 聞いた事無いクラスだぞ?

 聞いたことないけど、猛烈に嫌な予感がしてきた…。


「ギャハハハハ!伝説のうさぎ使いじゃない!

 すっご〜い!本当にあったんだこのクラス!」


「伝説のうさぎ使い?」


「そうよ、ダンジョンが現れてから、たった1度しか確認されていない、伝説のクラスよ!」

「え!俺って特別な男になれた!?」


「そうよ!特別よ!ただし、そのクラスってダンジョン史上最弱のクラスって意味で伝説残したんだけどね!」

 我慢しきれないようで、ちょいちょいお姉さんから笑いが漏れる。


 …

 …

 …

 …さい、じゃく、だと!


 目の前が真っ暗になった。

 くっそー他人事だと思って笑いやがって!


 …ウサギ小屋でうさぎ使い

 あーこんな事なら別にダンジョンでクラス獲れば良かった!


 なんでこんなダンジョン選んじゃったんだろ!


 少し前の俺をぶん殴ってやりたい!


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

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 よろしくお願いします。

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