今日の夢明日の夢

れい

廻る世界

回転する世界で頑張って目を開いて言葉を綴る。きっとこれが最後だから、私の最後を残しておかないといけないから。そんな使命に駆られてペンを取る。

綴る文字はどれも正常な視界ではないこともあり、酷く曲がって、回転した文字になった。

『あなたの幸せを願う ユリ』

本当はもっと書きたかったけれど、時間切れみたいだ。踊り出す文字に私は頼む。「どうかこの手紙を無事に、彼女まで」

紙は私の言葉に呼応してくるくるっと纏まり彼女の元に向かった。

これで私も思い残すことなく空へ旅立てる。

この、青く広い空に。

楽しみだ


世界は上から見るとこんな形だったのね

私は今までこの小さな世界で生きて。

そのことを痛感している。

窮屈で、息もできない

すべてのものが回り出せば、

今までの全てがひっくり返る。

広かった世界は私たちの土台、大地に。

大きかった町はどんどん小さくなるばかり。


手紙とともに旅立つ私の、人生で1番美しい最後の記憶。世界一美しい記憶。

どうか私の満足したこの世が続きますように。

祈りを込めて手を握る。

その手から零れる光で世界が満たされていく。

こうやって死者は死を連れて、輝きを放って死んでいく。過去慕ってくれたたくさんの人たちを思い浮かべながら、大変幸せだったなあと私は目を、閉じた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る