冒険者パーティを追放すると言われたので承諾したら襲われました

ACSO

第1話 追放されたら怒られたんですが

 数日間に渡るダンジョン探索から帰還した俺たち《不断の絆》は、行きつけの酒場で酒が入ったグラスを掲げた。


「みんなお疲れ様! 今回の探索は多くの苦難もあったが、誰も失わず、多くの成果を得ることができたよ。本当にありがとうっ!」


 高らかに言葉を紡ぐのはウチのリーダー、ユーリ。太陽のように輝く金髪を肩口まで伸ばした女剣士だ。パワー、スピード、気の利き方と、全てにおいて優秀な万能型である。

《不断の絆》の創設者にして、俺をこのパーティに引き入れた張本人なのだが、最近俺に対してキツい言葉をかけてくることが増えているのが悩みである。


「そうね、今回はたくさん金目のものが手に入ったから、金庫が潤うわよ〜!」


 黒に見える紫のローブをきた空色の髪の女性、ローラ。ウチの魔法使いである。

 風、土、水、火の属性を高レベルで使いこなす手だれであり、そのたわわなおっぱ……グラマラスな体型から熱烈な男のファンがいる。


「清貧を謳う教会の立場としてはなんとも言いずらいですが……今日くらいは見逃してあげますね」


 最後に、口を隠してはいるが笑顔を見せている、露出の少ない修道服をうちのヒーラー、アリス。

 シルバーの髪を長く伸ばしている女性だ。

 純朴そうな空気を出しつつも、その神聖さから不純な目的をもつ人を近寄らせないオーラをもつ。


「この調子だと、目標までもうすぐだな!」


 そして、俺、レイ。

 バフ・デバフ問わず付与魔法を扱う後衛。

 それ以外にも、雑用を一手に引き受けている。

 その理由は、アリスはともかく、男の俺が直接的な討をしないことが個人的に不公平に思い、そこ以外の部分でパーティの助けになろうと思ったため、志願したからだ。

 まあ、そんな話は置いておいて、今は祝いの席だ。


「ああ。早速乾杯--といきたいところだが、ひとつ報告がある」


 はて、何も聞かされていないが、ダンジョン探索に入る前から決まっていたことだろうか。

 俺が首をかしげるなか、ユーリの口から放たれたのは衝撃的な内容だった。


「レイ、君をこのパーティから追放する」


 しん、と辺りを静寂が包む。

 昼から集まっていることもあり、客があまりいないため余計に静かだった。


「……それは、本気か?」


 髪の色と同じ金の瞳を見つめると、ユーリは視線を逸らす。

 気まずいのか。そのくらいの決意なのだろう。

 だが、最近の彼女の態度から、なんとなく嫌われている雰囲気は感じていた。なので、思ったよりショックはなかった。

 それに、そもそも後衛でバフをかけ、誰にでもできる雑用をこなすだけの男だ。替えは効く。


「そうか。今まで世話になったな。戦利品の分配は終わってるから、せめて今回の分までは俺にも配分してほしいわ、金がないからな」


 あはは、と笑いかけてみると、ユーリは口を大きく開けあんぐりとし、ローラはもともと大きな目をさらに見開く。アリスはこちらを見ようとしない。


「あ、ああ……」


 と微かに漏らしたのは追放を宣言したユーリ。

 同意と受け取った俺は、自分の分前をカバンに入れて酒場を後にする。


「今日でこの酒場も最後になるかな」


 楽しかった思い出の場を、パーティの外から見るのは辛いし、なによりその記憶を綺麗なまま残しておきたい。

 どうせなら、他の街に移転するのもいいかもしれない。

 聖都と呼ばれるこの大きな街でなら、冒険者ギルドの別支店を利用すればみんなと遭遇することはなくなるかもしれないが、やはり思い出があるしな……。


 なんて考えながら酒屋の扉を閉めて数歩したときだった。

 閉めたばかりの扉が爆散し、何事かと振り返るとそこにはブチギレたユーリが--


 俺が覚えているのはそこまでだった。


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