箱庭の中の✖️✖️

ほのかな

単話

やあ、皆さん。初めまして。ようこそ私の住処へ。何も無いがゆっくりしていってくださいね。いや、謙遜じゃなくて本当にお出しできるものは無いんです。私は食事ということをしませんからね。ごめんなさいね。ん?そこに置いてある箱は何かって?ここには私のペットである××が入っているのです。覗いてみますか?


「B国の民は我々の海上領域に侵入して漁を行っている!これは違法行為だ!」

「何を言っている!A国が言っている海上領域は正しいものではない!出鱈目だ!違法行為はA国の方だ!」


おやおや。今日も××達は元気ですねえ。意味もなく自分たちが勝手に決めた領域とやらのためにギャーギャー言いあっていますよ。無駄な時間ですねえ。ねえ、皆さんはどう思われます?おや?どうしたんですか?そんなに神妙な顔になって。皆さんには関係のない話なのですから、もっと肩の力を抜いてくださいよ。


「我々は出鱈目など言ってはいない!この領域は正式に手続きを踏んで認められたものだ!」

「違う!こちらには証拠がある!数十年前から保管されているこの資料が証拠だ!」

「そんなものいくつでもねつ造できる!」


はあー・・・不思議な事この上ないですねえ。どちらとも考えていることは自分が利益を得る事ばかり。お互いに似た物同士なのに、どうして仲良くできないのでしょうか?いやあ、不思議で不思議でしかたありません。え、争いを止めた方がいいんじゃないかって?ええー・・・面倒なんですが・・・どうしても止めてほしい?そこまで言うなら・・・うーん、どうしましょうか・・・この2つの国を××ごと握りつぶしてしまいましょうか?え、もっと穏便に?難しいですねえ・・・あっ、そうだ!ちょっと待っててくださいね。

ごそごそごそごそ・・・・

あ、ありました!これこれ。この液体を・・・この変かな?適当にだらだらーっと・・・

はい!これでもう争いは無くなりますよ。え、あの液体ですか?すっごく強力な毒です。

××達では浄化できない強力な毒ですよ。


「えー、B国の民の皆様。我々は間違っていました。正しい海上領域はそちらが主張しているものだと、歴史を調査した結果わかりました。これからはそちらが主張していた領域を正しいものとしていきます」

「何を言いますかA国の皆様。そちらは正式な手続きを踏んで認められたのですから、そちらがおっしゃる領域が正しいに決まっております。どうぞそちらが主張していた領域を正しいものとしてやっていきましょうぞ」


ほら、お互いに喧嘩を止めて譲り合うようになりましたよ。え、なんでこうなったかですか?さっきの毒を問題になっている海とやらの領域に流し込んだんですよ。自分の領域が汚染されたら、自分達の力で何とかしなくてはなりませんからねえ。当然、A国もB国も浄化できない毒の面倒なんかみたくありません。結果お互いに問題の領域を押し付け合う形になったわけです。愉快ですねえ。さっきまでとは真逆の事を言ってますよ。いやあ、可笑しい可笑しい。


「おい!お前らの所から毒が流れ込んできてるぞ!さっさと何とかしろ!」

「スイマセン!」「スイマセン!」


あらあら、仲良く怒られてますよ。争いにならなくてよかったですねえ。ま、そもそもこんな矮小な生き物が領域だの土地の所有権だのを主張して、一体何になるというのでしょう。何を主張しようとも・・・私がこの箱をひっくり返すだけで、何もかも奪われてしまうというのに・・・・本当にバカな生き物ですねえ。何の根拠もないのに、自分達が何でもかんでも主権を握っていると思っている。本当にすべてを握っているのは私だというのに・・・そのことに気づきもしないし、気づこうとも思わない。傑作ですねえ。おやおや皆さん?怒っていらっしゃいますか?なぜです?この箱庭とあなた達人間には何の関係も無いじゃありませんか。××達がどんなに愚かでも。どんなに救いようがなくても。どんなにクズでも。人間とは関係ありません。だから何も気にしなくていいのですよ。おや、もうこんな時間ですか。すみませんがこれから用事があるので、今日はお開きにしていただけませんか?ああ、本当にすみませんね。ではまた、時間が空いたら遊びに来てください。ではでは~♪

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箱庭の中の✖️✖️ ほのかな @honohonokana

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