第11話 隠し事
「ちゃんとお話します。」
普段から、表情を顔に出さない彼の顔から、少し緊張を感じます。私はゴクリと唾を飲みました。私も少し緊張してきました。
「なんでしょうか」
私はできるだけ冷たく、素っ気なく返します。
彼はいつも通りの私に少し安堵した様子で続けます。
「実は僕には、人には言えない秘密があったんです。」
彼はそう言うと、口を私の耳ともに近づけました。
「実は僕人の心の声が聞こえるのです」
彼の口から発せられた言葉に、私は目を見開きました。
今までの努力が全部無駄になってしまったのでしょうか.....。いえ、今無駄になったというよりかは、元々無駄だった、という方が正しいですね。
だって、私が中身別人だって最初から分かっていたと言うことですよね?!
「でも条件があるんだ...です。」
「はい.....?」
なんかこの方、変な言葉を使われております。
「いえ、なんというか、クラウシア様に敬語無しというのは変な気がしまして」
やっぱりバレていたんですね!!!!
「えっと、触れている人の心の声しか聞こえないのです。貴族は他人と触れることなどほとんどないのでほとんど声は聞こえません。」
「あっ、でしたら、私の声もそんなに聞こえてはいらっしゃらなかったのです.....?」
「いえ、貴方は良く僕にくっついていたので、ほとんど全部聞こえてましたよ。」
スレンはにっこりと微笑みました。え、私、そんなにくっついてました?!?!は、恥ずかしすぎます.......。
「で、でも、どうして中身が別人と気づいていたのに、私をそのまま傍に置いていてくれたのですか?!」
「その話は...またいつかにしましょう」
「また隠し事ですか?!」
「楽しみが増えていいじゃないですか」
スレンはどこか楽しそうです。とにかく、私は今後、この人の前では仮面を被る必要はない。そのままの私で居ていいのだと思いました。
聖女のときも、聖女の仮面を被って生きていました。
こうして素の私で居られることがとても嬉しいです。
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