第8話 デート(2)
「わぁぁ…!!!」
私は目の前に置かれたアフタヌーンティーに目を輝かせました。とても美味しそうです!!!
見た目も可愛いですし、流石有名なだけあります!!
って!!だめです!!!私は冷たくしないといけないのです!!こんなに顔を輝かせてにこにこしてたらだめですよね!!!
私ははっとして周りを見渡すとすごいたくさんの視線を感じました。私達は公爵家次期当主にその婚約者。とても目立っております!その上私は「氷の令嬢」として街で有名なのでした!
「こ、コホン。とても、素敵ですね、」
そして真顔!!!目を伏せて口は真っ直ぐキープ!!!
よし!冷たく出来ましたでしょうか!!今更かもしれませんが、さっきの笑顔はなしですよ!!なし!!!
そう思いながら私はちらりと旦那様を見上げしまた。
「ふっ、」
その瞬間、周りがざわつきました。
旦那様が、笑ったのです。
「リトリシエは表情がころころ変わって、可愛いですね」
「あっ、ありがとうございます」
とてもうれし…え?この人今可愛いって言った?この方、冷たくて表情も全然変わらないって有名なのに、すごいにこにこで私の顔を見つめてきています。笑顔はもう本当に素敵で絵に書いたような美形です。
周りの女性たちは全員旦那様に釘付けのようです。旦那様、イケメンですものね。
ていうか、さっき、私の事可愛いって言いました?
―――――――――
美味しいスイーツを食べている間、ずっと旦那様がにこにこと見つめてきて、とても緊張しました。少し顔を上げれば、すぐに目が合うのです。恥ずかしいです…。
今はカフェを出て、ドレス店に来ています。
このお店はデザインが可愛いと、若い年代の女性に人気だそうです。私は既に作られたドレスから2着ほど選ぼうと思っています。
「彼女にはこのような色が良いかと」
「リトリシエ様は御髪がとても美しいですものね。どんな色でもお似合いだと思いますわ!!」
「このようなデザインはどうだろうか」
「こちらも良いかと思います!」
残念ながら私の思っていたようにはならないようです。今は旦那様とデザイナーさんが勝手にお話を進めておられます。しかも、既製品ではなく、私のために一からデザインされるようです。しかも7着くらい……。何がなんでも多すぎると思います!
その後は何度か私の意見も聞かれ、答えていると、注文がすべて終わったようです。
お店を出ると、日が落ちていました。そろそろ帰る時間でしょうか?
―――――――――
「少し寄り道してもいいですか?」
「は、はい!大丈夫です!!」
お買い物が終わり、馬車に乗り込むと外は夕日で真っ赤に染まっていました。
寄り道とはどこなのでしょうか?考えていると、馬車が止まりました。どうやら着いたようです。馬車から降りる時、旦那様はいつものようにエスコートしてくださいます。手が触れるだけなのですが、とても緊張してしまいます。旦那様の手に私の手を添え少し歩きました。
少し階段を上ると開けた場所に出ました。
「わぁ…きれい……」
とても景色が綺麗です。
「この場所は、僕がディオルド公爵領で1番気に入っている場所なのです。」
「そうだったのですね!!街並みが上から見渡せてとても綺麗ですし、奥に見えるあれは海ですか?!」
聖女をしていた時は外出も制限されていたので、海には行ったことがないのです!!遠目ですが、本物の海を見たのも初めてです!!
「ではまたいつか、海にも行きましょう」
旦那様はどこか少し、悲しそうな顔をしています。何かあったのでしょうか……。
―――――――――
「最近のリトリシエは別人のようですね」
帰りの馬車で旦那様が急に私の手を握り、少し微笑んで言いました。もしかして、中身別人なのバレているのでしょうか!!!公爵家次期当主の婚約者の中身が別人でしたなんて知られたら……想像したくもありません!!
「そ、そうでしょうか。私はいつも通りですわ」
「そうですか?なら良いのですが」
バレては居ないのですね!よかったです。
というか、最近の旦那様、何だか私に触れることが多い気がします。さっきも、美しい景色を見せてくださった時、ずっと私の手に触れてられてました。昔からこのような距離感だったのでしょうか。
「リトリシエ」
「はっ、はい」
急に名前を呼ばれると緊張します。しかもそんなに真っ直ぐ見つめられるととても正気では居られません!この方、自分の容姿がどれだけ優れているのかご存知ないのでしょうか。
「今日はありがとうございます。また、必ず時間を作るので、その時は海に行きましょう。」
う、海……!!!
「はい。旦那様。こちらこそ、本日はありがとうございました。」
こうして私と旦那様の初デートは無事に終わりました。
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