世界は転がる玉

ほのかな

単話

むかしむかしに読んだとあるサイトの漫画。主人公たちの生活を描いた本編。ではなくて違う世界線を描いた話。本編では友達もおらず自傷行為のようなことを繰り返していた孤独な生徒が、1つの出会いとともに世界が広がっていくような話だった。そして世界線が違うその話は、そういった出会いや関わりがなかったらどうなっただろうかという話。感動も温もりもなく、ただ主人公が、「あってもなくてもどうでもいい3年間だったな」と終わるだけの話だ。そして最後には作者の言葉で「こういう可能性があってもそうならなかったのは、世界は少しずつ自分の望む方向に動いてくれてるからだと思います」と書かれている。それはとても優しさを感じる言葉だが、私には到底そう思えない言葉だった。世界なんて自称の連続でしかない。右から転がってきた玉が別の玉にぶつかり、ぶつかった方はその時の力と力の向きの従って転がっていく。ただそれを永遠に繰り返しているだけ。転がる途中に可哀想な人がいるから避けようとか、向こうに酷い悪人がいるからあっちをわざわざ通ろうとかそんなこといちいち考えちゃくれない。なる時はなり、ならない時にはならない。そうとしか思えない。だから私はあの優しい言葉を慰めとしか感じられなかった。それともそれを目にするのが違う時だったら何か変わったのだろうか。もしかしたらそんな世界線で人間らしく生きている自分もいたのかもしれない。でもそれはならなかった。私の世界は微かな望みも叶わない世界でしかなかった。転がる玉に何度も引き潰されて、慣れた今では怒りすら芽生えない。変わる可能性すら見えない私の世界。どんなに望んだって、事象という玉は向きも速度も変えちゃくれない。ただ私達は巻き込まれるだけ。

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世界は転がる玉 ほのかな @honohonokana

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