雨のない虹

功琉偉つばさ @WGS所属

雨のない虹

 『虹を見たいなぁ…』


 ふと真夏のある日そう思った。


 虹は好き。


 でも雨は嫌い。


 この夏の暑い時期に雨なんかが降ったら湿度が高すぎで溺れてしまう。


 ただでさえジメジメジメジメしてるのに… 


 でも雨が降らないと虹は見えない…なんという残酷なことだろうか。 この世は何でも善と悪が一緒に住んでいる。表と裏も正義も悪も本質は同じ。

 

 そんなことを学校帰りの電車に乗りながら考えていた。部活帰り。疲れた頭と体でボーっとしながら窓の外を眺めていると、目に飛び込んできたのはとてもきれいな夕日だった。


 電車は西に向かっているので真っ赤に染まっていく空の下、僕は夕日に向かって進んでいった。


 よく見てみると窓の外の夕日は地面に近いところから赤、橙、桃、紫、黄、白、水、青、紺…とグラデーションになっていて、みたいだった。


 『これは良いものを見つけた。』


 と思った。なぜって雨が降ってなくても虹のように綺麗なものを見ることが出来ると見つけたから。


 夕日はまん丸になって輝いていて、本当の虹とはまた違った綺麗さがあった。


 本当に綺麗なものは特別なことをしなくても日常の足元に転がっていると改めて気づいた瞬間だった。


 虹は空気中の水滴によって太陽光が反射してあの色になるらしいけど、夕日の方は太陽光の光が大気を通過する距離の違いによって光の波長が変わって色が変わるらしい。

 

 仕組みは少し違うけどどちらも綺麗なことには違いない。

 

 光って…太陽って本当に生き物にとってとても綺麗で大切なものなんだなと思った。


 。普通の虹は見る回数が少なくて特別なものだけど… ん?


 あっ虹は自分で作れるね。うん。気づいてしまった。昼間に庭に水やりでもしてみたらその水滴で虹を見ることができるね。


 じゃあ自然の力でしか作れない雨のない虹…一日の終りにしか見えないもの。


 僕は見つけた。僕のもう一つの宝物。僕だけの景色。僕だけの夕日。


 『自分が見ている景色は自分だけのもの。』


 誰かがそう言ってたかもしれない。


 明日も雨よ降るな。夕日を見るために。僕の身体を守るために。


 さあ明日もを見れるかな。

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