【完結】現実世界でのいじめから逃れるために自殺した少女が、異世界の見習い魔女の黒猫として転生!魔法の力と友情を手に、再び現実世界で立ち向かう冒険が今、始まる!

湊 マチ

第1話 転生の瞬間

目の前が真っ暗になった。そのとき、私はすべてが終わったと思った。学校でのいじめ、孤独な日々、誰にも救われない絶望…。それらが一気に押し寄せ、私はあの屋上から身を投げ出した。


でも、次に目を開けたとき、そこには全く別の世界が広がっていた。美しい花々が咲き誇り、澄んだ空気が鼻をくすぐる。私は驚きと共に体を起こそうとしたが、何かがおかしい。視界が低く、体が軽い。


「ここは…どこ?私、どうなったの?」


目の前に水たまりがあり、私はその中に映る自分の姿を見た。そこに映っていたのは、真っ黒な毛並みの小さな猫だった。


「えっ、猫!?どうして私が猫に…?」


混乱していると、遠くから声が聞こえてきた。誰かが近づいてくる。ふと見ると、可愛らしい少女がこちらに駆け寄ってきた。彼女は見習い魔女のような服を着ていて、大きな帽子が特徴的だった。


「あらまあ!こんなところに可愛い黒猫がいるなんて!」

少女は私を見つけて目を輝かせた。

「あなた、迷子?それとも、魔法使いの使い魔になりたいの?」


「え、ええっと…」

私はどう反応していいか分からず、ただ彼女の足元に擦り寄ってしまった。


「あなた、すごく可愛いわね!名前は…そうだ、ミッドナイトってどうかしら?」

彼女はにっこりと微笑んだ。まるで私の混乱なんて気にしないかのように。


「ミッドナイト…?ええ、まあ、悪くないかも…」


「よし、決まりね!これから一緒に頑張ろうね、ミッドナイト!」

彼女は私を抱き上げ、優しく撫でてくれた。その温かさに、私は少しだけ安心した。もしかすると、この世界で新しい人生を歩むことができるかもしれない。


「ねえ、あなたってどこから来たの?どうしてここにいるの?」

彼女は興味津々に聞いてくる。


「えっと、ちょっと説明しにくいんだけど…」

私は言葉に詰まりながらも、何とか答えようとした。しかし、猫の姿でうまく伝える方法が見つからない。


「まあいいわ!とにかく、あたしの家に行こう!魔法の練習をしなきゃね!」


彼女は楽しそうに笑いながら、私を腕に抱えたまま歩き出した。新しい世界での冒険が、今始まろうとしていた。


「そうだ、あたしの名前はフリーレン。これからよろしくね、ミッドナイト!」

彼女は元気よく自己紹介をし、私を撫でながら歩き続けた。


「よろしく…フリーレン。私も頑張ってみるよ…」


新しい世界に来てから数日が経った。フリーレンの家は、まるでおとぎ話のような可愛らしいコテージだった。小さな庭には色とりどりの花が咲き誇り、部屋の中には魔法の道具が散らばっている。窓からは柔らかな陽光が差し込み、家全体を温かく包んでいた。


「ミッドナイト、今日は飛行の魔法を練習するよ!」

フリーレンは元気いっぱいに私に話しかける。彼女の明るさは、私の心を少しずつ和らげてくれた。


「飛行の魔法か…。うまくできるのかな?」

私は彼女の隣で身を丸めながら、少し不安な気持ちを口にする。


「大丈夫!あたしがついてるから、絶対うまくいくよ!」

フリーレンは私を撫でながら、自信満々に言った。彼女の手の温かさが伝わり、少しだけ心が軽くなる。


彼女は魔法の杖を手に取り、庭の真ん中に立つ。

「見ててね、ミッドナイト。まずは基本から…」

そう言うと、彼女は杖を振りかざし、呪文を唱え始めた。


「フワフワ…ウィング!」

突然、フリーレンの体が宙に浮き上がった。しかし、彼女の顔には少し焦りの表情が浮かんでいる。


「あれれ?ちょっと高すぎたかも!」

彼女はバランスを崩し、ふらふらと空中を漂っている。私は思わずその様子に見入ってしまった。


「フリーレン、大丈夫?」

私は彼女に声をかけるが、当然のことながら猫の姿では言葉が通じない。


「うわっ、やっぱり難しいな…!」

フリーレンは何とか着地しようと努力するが、そのまま庭の花壇に突っ込んでしまった。


「イテテ…ごめんね、花さんたち…。でも、次は絶対うまくやるから!」

彼女は泥だらけになりながらも、笑顔を浮かべて立ち上がる。


「フリーレン、気をつけてよ…。でも、そのポジティブな姿勢は見習わないとね」

私は彼女の頑張る姿を見て、自分ももっと前向きにならなければと思った。


「よし、次はもう一度挑戦だ!ミッドナイトも見ててくれるよね?」

フリーレンは私に笑いかけ、再び杖を握り直す。


「もちろん、ずっと見てるよ。あなたの頑張りを支えるためにここにいるんだから」


私たちの新しい日々は、こうして毎日が冒険の連続だった。フリーレンと一緒に過ごすことで、私は少しずつ心の傷を癒し、新しい自分を見つけていくのだった。


その日の午後、フリーレンはまた新しい魔法を試してみることにした。今回は変身の魔法だという。


「さて、次は変身の魔法を試してみるよ!」

フリーレンは笑顔で言うと、魔法の本を開き、呪文を読み上げた。


「リリカル…トランスフォーム!」

杖を振りかざした瞬間、光が彼女を包み込んだ。


「ポン!」

しかし、次の瞬間、フリーレンの姿が消え、代わりに小さなヒヨコが現れた。


「ピヨピヨ!」

フリーレン(ヒヨコ)は慌てた様子でピョンピョン跳ね回る。


「フリーレン、大丈夫?!」

私は驚きながらも、彼女に駆け寄った。


「ピヨ…ピヨピヨ!(助けて、ミッドナイト!)」

フリーレンは必死に鳴いていたが、その声は私にはヒヨコの鳴き声にしか聞こえない。


「どうしよう…魔法の本を探さないと!」

私は急いで魔法の本を探し始めた。しばらくして、本を見つけた私は呪文を逆に唱えるページを見つけ出した。


「えーと、逆呪文は…これだ!」

「リリカル…デトランスフォーム!」

私は必死に呪文を唱えた。


「ポン!」

光が再びフリーレンを包み込み、元の姿に戻った。


「ふぅ、助かった…ありがとう、ミッドナイト!」

フリーレンは笑顔で私に感謝の言葉をかけた。


「本当にドジなんだから、フリーレン。でも、そのおかげで毎日が楽しいよ」

私は彼女のドジっぷりに呆れながらも、心の底から楽しいと感じていた。


こうして私たちの日々は続いていく。フリーレンのドジっ子ぶりと私のサポートが、毎日を彩っていくのだった。彼女の努力とポジティブな姿勢に触れながら、私も新しい自分を見つけていく。


夜になり、私たちは一日の疲れを癒すためにリビングでリラックスしていた。フリーレンはソファに座り、私はその足元に丸まっていた。


「ねえ、ミッドナイト。今日もたくさん練習したけど、楽しかったね!」

フリーレンは私を見下ろして微笑んだ。


「うん、フリーレンと一緒だと、どんなことも楽しいよ」

私は心の中で答えながら、彼女の手が私の背中を撫でる感触に安心感を覚えていた。


「明日はどんな魔法を練習しようかな?ミッドナイト、何かリクエストある?」

フリーレンは楽しそうに問いかける。


「そうだな、もっと面白い魔法を見せてくれると嬉しいかな…」


こうして私たちの新しい日々は続いていく。フリーレンと共に過ごすことで、私は少しずつ心の傷を癒し、新しい自分を見つけていくのだった。彼女の明るさと努力が、私に新しい希望を与えてくれていた。


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