ラナススイーレ様へ

 ヴィリディス神聖国何とか歴一二〇九年。法皇ライファセⅣ世げーかの御代にて十一年。セルクゲス陛下の御代にて二十三年。唯一神ヘリアンサスの慈悲はまぁ、いい感じです。


 ……何か手紙を書くときは、こういう前口上が必要らしいんですよ、この国。ですから今回、かなり頑張りました。数字に関してはきっちり勘定しましたし。


 スイーレ様も、随分のご活躍の話が神聖国にまで伝わって来てますよ。

 それなのに東の果てにトバされたと聞きましたから、どこかで話がねじ曲がっているのかもしれません。


 それに実際、この手紙がスイーレ様に届く頃にはまた別の噂が聞こえてくるのかもしれませんし、こだわるのはやめておきましょう。


 その点、スイーレ様が教えてくださった旧派と新派の争いは、実に面白いです。確実にこの二つの派閥はいがみ合っています。

 私ずっと何を争っているのか、わからなかったので助かりました。これは迂闊に理由を尋ねるのも危険な気がしていたので。


 ただ、この対立を動機にしてしまうと、あまり面白そうなものは書けないような気がします。もう二捻りぐらいは必要な……もう少し粘ってみます。


 それよりも新派の連中が今になって商売することは決して悪くない、とか言い出してまして、それがまったく愉快で。滑稽で。

 この辺りをつついた方が面白そうな気がします。


 ですから新派が頑張っている、このウルサウェイトにもう少し滞在するつもりです。もう少し、新派に踏み込みたいですね。


 ウルサウェイトにて。


                      ケーラッハ・テイワス

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