第2話【悲報】異物混入しすぎ問題
とりあえず、話をうやむやにしたまま食事会に持ち込んだ。
先ほど喧嘩をふっかけてきた高校生三人組には豪勢な食事。
そして僕の前には豪華とは言い難い粗末な食事が並んでいる。
どうやら嫌われてしまったようだな。
ペロリ。
これは青酸カリ!
なんてことはなく……
ポーン!
【状態異常:神経毒 Ⅰを検知しました】
解析中………10%……
「おっさん、顔色悪くしてどうした?」
「こんなに美味しい食事を食べたことなくて感動してるんじゃない?」
「かもな。これスッゲーうめぇもん!」
高校生達は出された食事を絶賛していた。
どうやら僕の方にだけ仕掛けがしてありそうだった。
しかし解析が100%になって仕舞えばこちらのもの。
スープの続きを堪能して、そのまま完食。
笑顔をみんなにアピールした。
「いやぁ神の味がしたので、黙ってしまったよ。僕のがこれほどとなると、君たちのもすごそうだね」
見た目からしてコンビニ弁当か、高級レストランかぐらいの差がある。
「おじさんのも美味しかったんだ。ちょっとちょーだい」
「おやめください!」
「ん、どうしたの急に?」
グループの女子が僕のコロッケに手を出そうとして、ライム姫が突然声を荒げた。
女子高生が突然の大声にびっくりしてコロッケを落としてしまったぞ?
これはスープ以外にも色々仕込んでるな?
「食事中に立ち上がるのはマナー違反ですので、少し声を荒げてしまいましたわ。欲しいのでしたら一言こちらにお声掛けください。すぐにご用意させますから」
「そういうことなら。おじさんごめんね?」
「いいさ。そっちのも美味しそうだが僕の疲れ切った胃には脂がキツそうだ。先ほどはおじさんと言われてムッとしたが、こういうところは若い子達には負けるのかもしれないな」
「脂がきついとかおっさんはこれだからww」
「この肉、かぶりつくだけで肉汁たっぷり!」
「これが味わえないのは確かに可哀想かも」
向こうは本当に悪気がないので、先ほど女子が落としたコロッケを一口齧る。
うん、こっちはすでに耐性を持ってる麻痺毒Ⅰだった。
「いや、これはうまいな。僕の疲れた胃袋にも優しい味わいだ。姫様、もしよかったらん僕もおかわりいいですか?」
「ええ、いくらでも」
姫はニコリとしてるのに、その周りが正気か? という表情になっている。
そしていただいたおかわりは……パワーアップしていた。
ポーン!
【状態異常:麻痺毒Ⅱを検知しました】
解析中………10%……50%……
麻痺毒Ⅰこそあれど、これはまた違った感覚だ。
Ⅰが手足の痺れならば、こちらは脳から肺、腸まで臓器が痺れる感覚だった。
しかし僕は構わず食べ続けた。
明らかにダメージは蓄積するが、その分解析の進行が進むので、毒を喰らわば皿までの精神である。
「あれ、味変えました? 先ほどどのさっぱり感より、少し肉汁が多くなってますね。ですがこの付け合わせのソースがいい感じにジャンク感を醸し出してます。王宮料理だからこういうジャンクな品は楽しめないと思っていましたが、お見それしました。いやぁ、感服しました。異世界でこれほどのものを食べられるとは思ってなかったので。皆さんにお分けできないのが残念ですよ」
「ね、ねぇ、姫様。あのコロッケあたしも食べたいんだけど。まだ?」
「今ご用意させてますので」
「おじさんの方が後から追加したのに、あたしの分が遅いのはどういうこと?」
「素材から選び直してますので!」
女子高生の食欲が姫を追い詰めてら。
僕はその間にもコロッケを美味しく食べ勧めている。
「おんなじのでいいよ? なんだったらやっぱりおじさんのからもらって……」
「それは絶対におやめください!」
「さっきからどうしたの? お姫様変だよ?」
「それは多分、僕だからこそ美味しくいただけてるけど、君たち若い世代には少しだけ苦味のようなものを感じるかもしれないな。この中にセロリやピーマン、パクチーが得意な者は?」
「俺、ピーマンダメ。あれが食えるやつはどうかしてる」
「俺は逆にセロリだな。口の中にずっと残る青臭さが苦手だ」
「あたしパクチーダメ、それが入ってるのかー。じゃあお姫様はそれを抜いて作り直してくれたんだねー、納得」
「そういうこと。僕は全部好きだから、気にならなかったけど、お城はそういうところも配慮してくれてるのさ」
「逆に食べられるおじさんすごいね」
「ははは、食うのに困って、なんでも食べてきたからね。それに、食べ慣れたらそこまで苦でもないよ。このコロッケは肉の臭み消しにそれらを使ってるんだろう。ソースにはほんのりセロリやピーマンの苦味がある。これを味わえるのは僕くらいだろうね」
見事に高校生達を言いくるめられたことにより、お姫様はほっとしてたみたい。
そして女子高生の前に遅れてやってきたコロッケは、あまりにも僕のと比べて見栄えが違っていた。
パクチー抜きというレベルじゃない。
一目でこれはジャンクじゃないというのが見てとれた。
女子高生はなんか違う、これじゃない感を顔に出して他の高校生を見やる。
「味、は美味しいよ? けどこれはコロッケじゃないよね?」
「どうしても
姫様の言い分であると、まるで僕のコロッケはその手間は一切してないように思える。
先ほど追加した神経毒のスープを受け取り損ねてウェイターに少し引っ掛けたら、室内にいた騎士が全員武器を取るほどの緊張感に包まれたもんね。
「ごめんて。ちょっと引っ掛けたくらいでなにさ。確かにスープを取り損ねた僕も悪かったけどさ。これは本当に美味しいからみんなにも食べて欲しいんだよね」
味は本当に美味しいのだ。
やたらと毒素が強いだけで。
毒って美味いんだよね。
これは以前やってたゲームの受け売りでしかないんだけど。
「おっさん、めっちゃうまそうに食うんだよなぁ、他にジャンク売ってる場所ないの?」
「それでしたら城下町のレストランを誘致して作らせますが」
「おっさんの奴が直接食えたら問題ないんだよな」
「食えなくもないんだけど、お姫様が嫌がってるからなぁ」
「どうしてあたし達が食べたらダメなんだろうね?」
そりゃ毒があるからだ、なんて言える訳ないよな。
じゃあどうして僕がそんな毒物食って平気なのかとの説明もあるからな。
「今は食事をさせてもらえるだけありがたく思わなきゃだな」
「それもそうだね」
と、食事会がほとんど終わって個室に案内された後、僕の部屋に向けて刺客が放たれた。
哀れ僕は命を落とし、ベッドに赤い血を滴らせるのだった。
★★★
翌朝、血まみれのベッドにて起き上がる。
いやぁ、状態異常10個獲得で残機が増えてなかったら危なかったぜ。
今の僕は二人目のムーン=ライト
以前までの僕は不出来だったけど、次からはうまいことやれる、と思おうか。
ステータスを開くと、やっぱり名前の横に2の数字。
そして新しい耐性を獲得していた。
致死毒Ⅲ
どうも僕は新手の毒物でやられたそうだ。
複数の刺し傷から、出血での死亡と思ったが、凶器のナイフにその毒が塗られてたらしい。
僕に毒の耐性があると知って、それで死なない可能性も見越して滅多刺しにしたと。
「ふむ」
僕は何事もなかったように部屋を出て、高校生達に挨拶を交わした。
「おはよう、みんな」
「おっさん、どうした? めちゃくちゃ血まみれじゃんか」
「どうも昨日の食事が美味しすぎて吐血してしまったようだ。安心してくれ、こういうのは頻繁にある。どうも僕は臓物が弱いらしい」
「おいおい、年寄りなんだから無理すんなよな。昨日の料理になんか仕込まれてるのかと思ったぜ!」
「んなわきゃないだろ。って、お姫様。どうしました? 幽霊でも見るような顔で」
「あなた、どうして……」
「ああ、この血ですか? 実は僕、生まれつき体弱くて結構頻繁に吐血するんですよね。だから久しぶりのジャンクで腸がびっくりしてしまったんですね」
「まぁ、いいです! これから訓練を始めますので、訓練場までお越しください!」
いよいよか! 高校生達が皆やる気に満ちていた。
そして騎士達が妙に殺気だっていた。
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