願いを叶える悪魔

青年が寿命と引き換えに願いを叶える悪魔を召喚した。

悪魔が青年の願いを聞こうとすると、青年は思いとどまり悪魔に尋ねた。


「捧げる寿命の長さはどうやって決まるんだ?」


「ほう」


「叶った途端に寿命が尽きたら困るんでな。ちゃんと教えてもらうぞ」


「いいだろう、契約で嘘はつかん。聞かれたからには教えてやろう」


にやりと笑うと悪魔が説明を始めた。


「そもそも叶えられる願いとは、本来ならば願った本人がいずれ自力で達成できるものだ。努力を拒み、結果だけを欲しがる者から達成までにかかる年月を徴収するのが契約の正体だ」


「なるほどな。だがたとえ寿命がわずかでも、願いが叶っているなら残りの人生は快適そうだ」


「ああそうかもな。さあ、お前の願いを聞こう」


悪魔はにやけ顔で青年に言った。しかし青年は願いを言わずに悪魔に告げた。


「寿命が足りない場合や不老不死など叶えようがない場合、要は不相応な願いを叶えようとした奴は一体どうなるんだ?」


「それはもちろん残りの寿命すべていただく。身の丈に合わない願いなど持つべきじゃないってことだ」


「理解したよ。それじゃあそろそろ叶えてもらおうか」


「よし、お前は何を望む?」


「俺はこの歳まで彼女ができたことがないんでな。俺のことが大好きな女の子を出してくれ」


「わかった、それと同時に代償もいただくぞ」


悪魔が青年に向かって手をかざすと青年の身体が淡く光る。

次に悪魔は目を閉じ、怪しげな呪文を唱えた。しかしそこから何の反応もなく、悪魔は首をかしげる。


「恋人を欲しがってるやつの願いなら幾度か叶えてきたのだが……」


ふと悪魔が青年の方を見ると、青年は息絶えていた。

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