06 二人だけの空間
「ここがベッド?かわい~」
「ちょ、そんなに走るとコケるよ!りん!!」
「わっ」
「あっっ」
りんをベッドに押し倒してしまった。
早く離れないといけないのに、手が離れない。
離したいのに、離したくない。
「らん?」
「あ、ごめん…」
「このままでいーよ?」
「え?」
私が驚いたように言うと、りんは私を押し倒した。
「らんは下じゃないの?」
「んえ?」
りんは私の手をぎゅっと握りしめる。
手の温もりが心地良くて、癖になる。
心地良さに夢中になっている私に、彼女は言う。
「ねぇ、わたしのことすき〜?」
「すきっていうか、友達としてかな」
「友達としてじゃないでしょ?
恋愛的に好きなんでしょ」
彼女は私にキスを交わす、何回も。
深く、深く、キスを交わす。
「んっにゃこれ」
「らん、もう一度言うけど、
わたしのこと、すき?」
「すき」
「ふふ、深く愛してね」
私は彼女に圧倒されて、つい言ってしまった。
確かに、彼女のことが好きだ。
前に、彼女を見るときゅっとしたり、ドキッとしたのは好きだったからだったんだろう。
「このパスタおいしーね!」
彼女は笑う。
「カルボナーラ好きなの?」
「うん、お母さんが作ってくれた唯一の料理。
だから好き。」
「りんのお母さんってどんな人?」
「10歳の時、お父さんと私を置いて、
突然いなくなっちゃったからあんまり分からないんだけどね、少し怖くて優しかったんだ。」
「お母さんは好き?」
「好きでありたいよ」
「ありたいなら、好きじゃないとおもう」
「深いことはあんまりわからないんだよね〜
だから、ずっと分からないまま。
逆にさ、らんのお母さんはどんな人?」
「私のお母さんは、ずっと働いててあんまり関わったことがないから分かんない。」
「お父さんは?どーなの?」
「お父さんは、突然いなくなっちゃった。」
「じゃあ、私と一緒だね。」
「私達、一緒なこと多いね。」
私を見つめる彼女の瞳が誰よりも綺麗だ。
こんな出逢いがあるとは、中学生の頃の自分には思えなかっただろう。
ああ、早くに彼女と出逢えたらよかったのに。
「お風呂、一緒に入る?」
「え、いいの?」
「勿論!りんとなら全然良いよ」
「へー、私とならなんでもいいんだね。」
「うん、なにしても。」
「なにしても?」
私は彼女の背中を洗い流した。肌が白かった。
「シャワーって綺麗だよね」
「そう?」
「ん〜水が綺麗なのかな?」
「きっとそうだよ」
「らんの背中も洗い流してあげる」
「うん、そうして」
「私と違って、綺麗だね」
「なんで?」
「私と違うものは全て綺麗だよ」
「そう?」
「うん」
彼女は寂しそうに言う。今でも泣きそうな顔だ。
彼女が泣きそうな顔をするのは珍しかった。
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