第5話 最期の瞬間

スタジアムの熱狂的な歓声が耳をつんざく中、若葉源蔵はチームメイトたちと勝利の喜びを分かち合っていた。日本代表はワールドカップ決勝戦で栄光を掴み、世界中のサッカーファンが彼らの勇姿を見守っていた。


源蔵は笑顔でトロフィーを掲げ、歓声に包まれる中でその瞬間を楽しんでいた。しかし、その歓喜の中で、不穏な気配が彼を襲った。


突然、観客席の一角から銃声が響き渡った。


「バンッ!」


その瞬間、源蔵の体に激痛が走った。彼は胸を押さえ、信じられない思いで自分の体を見下ろした。そこには血が滲み出し、彼のユニフォームを赤く染めていた。


「源蔵!」坂本光が叫び、すぐに彼の元に駆け寄った。


源蔵はよろけながらも立ち続けようとしたが、力が抜けてその場に倒れ込んだ。周囲の喧騒が次第に遠のき、彼の視界はぼやけ始めた。


「誰か、救急車を!早く!」監督が叫び、周囲の人々が急いで対応を始めた。


源蔵の意識は朦朧とし、痛みと共に過去の記憶が次々と蘇った。彼の頭には、幼い頃からのサッカーへの情熱と、数々の試合での勝利と敗北が浮かんだ。


「皆…ありがとう…」


源蔵は微かに笑みを浮かべ、最後の力を振り絞って言葉を紡いだ。「俺たちの夢を…叶えられた…日本を…誇りに思う…」


その言葉を最後に、若葉源蔵の意識は途切れた。彼の体は力なく地面に倒れ込み、その生命の灯火が消えた。


若葉源蔵の目は重たく、目を開けるのに力を要した。彼が見たのは、見知らぬ天井と、耳に入ってくる静かな自然の音だった。周囲の景色は中世ヨーロッパ風の建物や、草木に囲まれた美しい風景だった。


「ここは…どこだ…?」


源蔵はゆっくりと起き上がり、自分の体を確認した。驚くべきことに、彼の腹部には撃たれた拳銃が埋め込まれており、その力が彼の生命力と結びついていた。さらに、背中には大きな翼が生えていた。


「一体…何が…」


源蔵は驚きと混乱の中で立ち上がり、周囲を見渡した。彼の目には、この新しい世界の広大な風景が広がっていた。彼は自分が異世界に転生したことを理解し、新たな人生を歩むことを決意した。


「ここで何ができるか…試してみるか…」

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